ナタリー PowerPush - ハンバート ハンバート×又吉直樹
似たもの同士の「みじめだった」対談
歌がうまいことに気付かないまま過ごしてた可能性も
佐藤 自分の本をけっこう読み返すんですか?
又吉 そうですね。一応取ってあるし、ときどき読んで「変やな」って(笑)。
──そこが創作の始まりかもしれないですね。感性を磨く時期というか。
又吉 僕はずっと1人で書いてたから、だいぶ偏ってるんですけどね。友達と情報交換もしなかったし、テレビもぜんぜん観てなくて。有名な番組に出られるようになった頃に「この番組って、どんな感じ?」って人に聞いて、「え、知らんの?」って驚かれたり。
佐野 私たちもあんまりテレビを観ないんですよ。
佐藤 テレビはあるんだけど、アンテナがつながってなくて……。すいません。
又吉 いえいえ(笑)。
佐藤 (佐野は)CDもあんまり持ってないんですよ。バンドを始めたとき、10枚くらいしかCD待ってなくて。
又吉 え、ホントですか?
──あまり音楽を聴かないということですか?
佐藤 そうですね……。
又吉 じゃあ、どうして自分は歌がうまいってことに気付いたんですか? 人に指摘されて?
佐野 そうですね。カラオケとかで歌ったときに。
又吉 もしかしたら、気付かないまま過ごしてた可能性もあったかも……。佐藤さんはどうして音楽を始めたんですか?
佐藤 大学に入ってからバンドを始めたんですけど、最初は自分の曲を自分で歌いたいと思ってたんです。高校まではフォークというか、アングラな感じでやってたから、「そろそろモテそうな音楽をやりたい」と思って、華々しくホーン隊や女性コーラス隊を入れようと。
佐野 その華々しいバンドのイメージのって、モデルがあったの?
佐藤 ボブ・マーリーとかSly & The Family Stoneかな。
又吉 あーなるほど。
佐藤 90年代だったから、渋谷系のイメージもあって。で、(佐野を)よく知らないままなんとなく誘ったら、この人のほうが歌がうまかったんですよ。で、ボーカルが入れ替わってしまったという。
又吉 でも、お2人でバンドを始めたっていうのは宝くじに当たったようなもんですよね。
佐藤 そんな実感もないんですけどね(笑)。
好きになった子に必ずハンバート ハンバートのCDを渡します
──又吉さんはどうですか? 今の状況って、思い描いた通りになってます?
又吉 いや、予定とはだいぶ違いますね。
佐野 どんな予定だったんですか?
又吉 「20代前半でテレビに出て、有名になる」っていうのを子供のときから思い描いてました。芸人になるっていうのは決めてたんですけど、世に出るまでに10年くらいかかりましたし。
──予定よりも時間がかかった、と。
又吉 「カッコいい自分になれば、おのずと状況もよくなるはず」って考えてたんですけど、思い描いてた「カッコいい自分」を世の中が全然認めてくれなかったんですよ。つまり、最初の設定を間違えてたんです(笑)。自分がやりたいことをやってたから、それはそれでいいんですけど。
佐野 私たちもそんなことよく言ってたよね。
佐藤 うん。その話、よくわかります。
佐野 自分がいいと思ってるものを作れるようにがんばるじゃないですか。でも、ある程度できるようになったときに、それが受け入れられなかったら、何をしていいかわからなくなるっていう。
佐藤 本当にうまくできれば、世の中にも伝わるとは思うんだけどね。
又吉 でも、このアルバムはみんなに刺さると思いますけどね。
佐藤 そうですか? みじめな思いをしたことがない人もいると思うんですけど。
佐野 くじけてくれない人ね(笑)。
又吉 僕、いろんな人にハンバート ハンバートのCDをあげてるんですけど、みんな喜んでくれますよ。プレゼントに……。
佐藤 最適?
又吉 そうなんです。
佐野 すごい。「プレゼントに最適」って、CDにシールで貼っておきます(笑)。
又吉 好きになった子にも必ず渡しますね。「こういうのが好きなんや」ってわかってもらえるじゃないですか。
佐藤 それでうまくいったことあるんですか?
又吉 けっこううまくいってると思います(笑)。このあいだもね、下北沢で1杯だけ飲もうと思って、お店に入ったんですよ。で、このアルバムを聴きながら歌詞カードを見てたら、店にいた女の子が「私もハンバート ハンバート好きなんです」って話しかけてきて、さらにお店の人も会話に入ってきて……。僕がいるところでは、みんな好きですよ。
佐野 そういうニッチな場所にいるのかも(笑)。
収録曲
- ぼくのお日さま
- ぶらんぶらん
- 鬼が来た
- 何も考えない
- オーイ オイ
- 潮どき
- 小舟
- くもの糸
- ホンマツテントウ虫[サビ入り]
- まぶしい人
- ポンヌフのたまご
- 移民の歌
- 又吉直樹 DVD「又吉直樹、島へ行く。母の故郷~奄美・加計呂麻島へ ディレクターズカット 」2014年7月30日発売 / 2700円 / よしもとアール・アンド・シー / YRBN-90792
- 又吉直樹 DVD「又吉直樹、島へ行く。母の故郷~奄美・加計呂麻島へ ディレクターズカット 」2014年7月30日発売 / 2700円 / よしもとアール・アンド・シー / YRBN-90792
収録内容
3月にBSジャパンで放送されたスペシャル番組に未公開映像を追加したディレクターズカット版。又吉直樹が母の故郷である奄美・加計呂麻島へ。島が見せてくれた風景を、又吉ならではの言葉に変えながらの旅。東京から遠く離れたこの島で又吉は何を思うのか。
- 第1章. 僕が知らなかった島の日々
- 第2章. 島人よ なぜシマ唄をうたう
- 第3章. ぼくはケンムンに会えるのか
- 第4章. 母を育てた小さな集落(シマ)
ハンバート ハンバート「レコ発ツアー『歩いていくんだ、どこまでも』」
- 2014年6月7日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2014年6月8日(日)島根県 メテオプラザ
- 2014年6月16日(月)京都府 磔磔
- 2014年6月17日(火)兵庫県 チキンジョージ
- 2014年6月21日(土)宮城県 Rensa
- 2014年7月16日(水)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2014年7月19日(土)福岡県 イムズホール
- 2014年7月20日(日)大分県 湯布院アルテジオ
- 2014年9月12日(金)北海道 cube garden
- 2014年9月17日(水)愛知県 名古屋市芸術創造センター
- 2014年9月20日(土)大阪府 大阪城音楽堂
- 2014年10月3日(金)東京都 日比谷野外大音楽堂
ハンバート ハンバート
1998年に結成の佐藤良成(G, Violin, Vo)と佐野遊穂(Vo, Harmonica)による男女デュオ。2001年にアルバム「for hundreds of children」でCDデビュー。2005年のシングル「おなじ話」が各地のFM局でパワープレイに起用されたのをきっかけに、活動を全国に広げ年間 100本近いライブを行う。2007年にはテレビ、CM、映画などの楽曲を多く手がけ、幅広い層から注目される。2012年に夏はスカバンドとのコラボユニット「ハンバート ハンバート×COOL WISE MAN」を結成し同年として多くのフェスに出演するほか、ミニアルバム「ハンバート・ワイズマン!」をリリース。フォーク、カントリー、アイリッシュ、日本の童謡などの音楽をルーツとした懐かしく切ない楽曲と、繊細なツインボーカルで支持を集めている。2014年にはアメリカ・ナッシュビルでレコーディングを実施した、3年半ぶりの新作となるフルアルバム「むかしぼくはみじめだった」をリリースした。
又吉直樹(マタヨシナオキ / 写真左)
1980年生まれ大阪出身。吉本興業が運営する芸人養成所・NSCの東京校で、綾部祐二とともに2003年にお笑いコンビ・ピースを結成し、ボケを担当している。ピースは2010年にスタートしたフジテレビ系バラエティ番組「ピカルの定理」にレギュラー出演。同年「キングオブコント」で準優勝、「M-1グランプリ」で4位にランクインする。又吉は芸能界随一の読書家として知られ、テレビ出演などの傍ら書籍や雑誌コラムなどの執筆活動も行っている。近著に「東京百景」など。またファッションセンスにも定評があり、「よしもとオシャレ芸人ランキング」の男性芸人部門では2011年から3年連続1位を獲得し殿堂入りしている。