音楽ナタリー Power Push - 布袋寅泰
津田大介が聞く、35年間の“Emotions”
BOØWYのメンバーとの出会いは最大の出来事
──布袋さんの長いキャリアの中で、ターニングポイントというか「このときしか過ごせなかった特別な時間」というものがたくさんあったと思うんですけど、いくつか挙げていただくとしたらいつ頃になるでしょうか。
全部そうだけどね。まずは間違いなくBOØWY、あのバンドがなかったらスタートしていなかったので。ヒムロック(氷室京介)、まっちゃん(松井常松)、まこっちゃん(高橋まこと)、彼らとの出会いは僕の人生の中でも最大の出来事ですよね。
──先日の氷室さんの東京ドームでのラストライブ、最終日のトリプルアンコール、一番最後の曲が「B・BLUE」でしたね。氷室さん作曲の曲ではなく、この曲で締めくくられたとことが、僕にとって大きな感慨があったんですけど、布袋さんはいかがでしたか? 答えづらい質問かもしれませんが……。
うーん……彼の気持ちは誰にもわからないし、僕が言葉にすることで誤解されてしまうのももったいないけど、やっぱりうれしい気持ちはありますね。彼にとってもBOØWYという存在は最後まで大切なものだった、という意味ではうれしいですよ。
──BOØWYを経て、その後の活動での思い出はいかがでしょうか。
ソロ活動を始めて映画音楽を作ったり、世界を旅してデヴィッド・ボウイやThe Rolling Stonesと一緒にステージに立ったりね。夢の夢として語ったことはあったかもしれないけど、まさか実現するとは思いませんでしたから。そういう人たちと共演できた喜びもあれば、かたやThe Rolling Stonesの東京ドームライブのステージに呼んでもらった次の日には、ロンドンに1人で帰ってコツコツと曲作りをやっているようなギャップもありますし。ロンドンではいまだにライブハウスが埋まらない状況と、先日のように代々木(国立代々木競技場第一体育館)でひさしぶりの「GUITARHYTHM LIVE」をやって9000人を前に演奏している状況。そのどちらもが自分にとってリアリティがあるというのは、大きな意味を持つと思ってます。
──でもいちリスナー、いちファンからすると布袋さんはそれこそThe Rolling Stonesと共演するとか、「ロックンロールドリーム」をいろいろな形で成し遂げてきた人だと思うんですよ。それでもまだ貪欲に、50代になっても求める夢っていったいどんなものなんでしょう。
まだワールドツアーをやるっていう夢がありますからね。でもそれに向けての扉が開いた、開けられたっていう実感があるし、叶えるまでやるしかないし。あと、やっぱりギターが好きなんですよね。ギターを弾いてるときが一番自分らしい、ギターを持ったときに自分は完全になる、って思っているから。やり続ける理由よりも、やめる理由がないんですよ。(プロボクサーの)辰吉丈一郎が「自分はずっと現役のボクサーだ、なんで年齢という制限だけで俺の趣味を奪われなきゃいけないんだ」って言ってた、あの気持ちもわかるよね。「やれ」って言われてやってるわけじゃない、好きでやってるんだから。
誰かの代わりに夢を叶えるのはロックスターの役目
──35周年を迎えても、世界中のいろいろな人に音楽を届けて共感してもらうという夢がまだあると。
まあ、35周年で54歳って言うとすごく成熟したキャリアに思われるかもしれないけど、The Rolling Stonesとかボブ・ディランとか、彼らは60代や70代でまだまだ生き生きしてるしね。海外のインタビューで「僕ももう50過ぎてるんで……」とか言うと「そういうことは言わないほうがいいですよ」って指摘されるし(笑)。
──確かに日本のインタビュアーはそういう指摘はしないですよね(笑)。
そういう年齢的なことはまったく理由にならない。いかに楽しんでチャレンジしているかが重要なんですよね。叶えられた夢もあるけど叶えられていないことも多いし。でも、誰かの代わりに夢を叶えるのもロックスターの役目ですからね。誰かの代わりにホームランを打つのが松井秀喜の役目だったみたいに。僕も僕で、何かを背負っているならそれを叶えていきたいと思う。皆さんが思うような華やかなことばかりじゃなくて、なかなか人に伝わらないっていうもどかしさも多いけど。
──今日お話をお伺いしていてふと思ったんですが、布袋さんご自身は昔に比べて大人になったと思いますか?
昔はただ理由もなく走るだけだったけど、それが若さだろうしさ。今は大人になれたのかどうかわからないけど、まあ大人になってなかったらまずいでしょ(笑)。いろんなところでバカだったな、今の俺だったらこうするなっていうところもあるけど、それはあの頃は絶対できなかったことですからね。少しはリラックスして優しくなったと思うし、いろんなことが理解できるようになってきた。それが大人になったっていうことなのかな。
──まさにこのアルバムを作る過程で気付いた感じでしょうか。
そうですね。また60歳とか70歳になって自分のインタビューを読み返したら「何言ってんだ、この若造が」って思うかもしれないけど。でも、自分の作品にはそのときそのときの本音が詰まってるし、20代から50代までの長い間の自分が愛おしくて「よくやった」っていう気持ちも強いですね。
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- ベストアルバム「51 Emotions -the best for the future-」 2016年6月22日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD3枚組+DVD] 5400円 / TYCT-69103
- 通常盤 [CD3枚組] 3780円 / TYCT-60081~3
DISC 1 Beat
- バンビーナ
- 8 BEATのシルエット
- BEAT EMOTION
- サイバーシティーは眠らない
- POISON
- STILL ALIVE
- DIVING WITH MY CAR
- NOCTURNE No.9
- スリル
- CAPTAIN ROCK
- CHANGE YOURSELF!
- 風の銀河へ
- CIRCUS
- Don't Give Up!
- RUSSIAN ROULETTE
- IDENTITY
- 嵐が丘
DISC 2 Heart
- LONELY★WILD
- さらば青春の光
- YOU
- ラストシーン
- PROMISE
- SURRENDER
- NOBODY IS PERFECT
- Come Rain Come Shine
- DANCING WITH THE MOONLIGHT
- 命は燃やしつくすためのもの
- BORN TO BE FREE
- ESCAPE
- GLORIOUS DAYS
- FLY INTO YOUR DREAM
- DEAR MY LOVE
DISC 3 Dream
- Battle Without Honor or Humanity
- STARMAN
- テレグラム・サム
- C'MON EVERYBODY
- ミッション:インポッシブルのテーマ
- IMMIGRANT SONG
- MATERIALS
- How the Cookie Crumbles(Feat.Iggy Pop)
- BACK STREETS OF TOKYO
- TRICK ATTACK -Theme of Lupin The Third-
- HOWLING
- MIRROR BALL
- Departure
- VELVET KISS
- BE MY BABY(Live from Budokan 2011.02.01)
- BAD FEELING(Live from London at Roundhouse 2012.12.18)
- NO.NEW YORK(Live from Takasaki clubFleez 2016.03.05)
- Dreamin'(Live from Guitarhythm Live 2016.04.07)
- GUITAR LOVES YOU
初回限定盤付属DVD
【BEAT 1】~すべてはライブハウスから~
- IMAGE DOWN(高崎clubFLEEZ)
- BAD FEELING(高崎clubFLEEZ)
- New Chemical(名古屋E.L.L.)
- SPHINX(名古屋E.L.L.)
- HOWLING(京都磔磔)
- やるだけやっちまえ!(京都磔磔)
- バンビーナ(京都磔磔)
- RUSSIAN ROULETTE(京都磔磔)
- DANCE CRAZE(高崎clubFLEEZ)
初回限定盤付属DVD
ミュージックビデオ
- 8 BEATのシルエット
布袋寅泰(ホテイトモヤス)
1962年2月生まれ。1982年にBOØWYのギタリストとしてアルバム「MORAL」でデビュー。1988年のバンド解散を機にソロアーティストとしてのキャリアをスタートさせる。また同時に他アーティストへの楽曲提供、映画やCMへの出演などさまざまなシーンで活躍。海外での活動にも積極的で、映画「キル・ビル」に提供した「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」は各国で高い評価を得ている。2006年のアルバム「SOUL SESSIONS」では国内外の豪華アーティストとの共演を果たし、翌2007年1月には日本武道館でChar、ブライアン・セッツァーとともにスペシャルライブも行っている。50歳を迎えた2012年夏にはロンドンに移住。日本とイギリスの2カ国を拠点に、これまで以上にワールドワイドな活動を行っている。2016年にはアーティスト活動35周年を記念したアニバーサリープロジェクト「8 BEATのシルエット」を始動し、その第1弾として3月に全国ライブハウスツアーを開催。6月22日にベストアルバム「51 Emotions -the best for the future-」をリリースし、7月3日には地元・群馬県高崎市でフリーライブを行う。