ラテンをもっとやったら面白い
伊賀 じゃあ最後に僕のDISC 1のお気に入りの1曲を。僕はね、最後の「El Negro Zumbon(Anna)」。この曲大好きです。
高田 いいですね。
伊賀 細野さん、昔はちょっとジャズとかロックンロールとか、そういうところからの曲が多かったんですけど、最近ラテンの曲をレパートリーに入れてきているじゃないですか。僕、けっこうそれが好きで。自分のことで言えばベースラインも工夫し甲斐があって面白いんですよ。裏から入ってくるラインが好きで、それによってノリがポンポン弾ける。だからラテン音楽をもっとやったら面白いなって思っているんです。どうですか? 皆さんは。
伊藤 この曲、俺と漣さんはほぼ細野さんと一緒に歌っています。
高田 大地くんも僕も普段歌いながら演奏しているから、楽器を録音するときに歌わずに演奏するのが逆に難しくて。けっこう手こずったんだよね。
伊藤 そうでしたね。
伊賀 なるほど。もう一緒になっているからね、演奏と歌が。
高田 そうなの。だから歌がないと急に自分がどこのパートを弾いているかわかんなくなっちゃったりするんだよね。
伊藤 そうでしたね。
高田 コードが単純だから余計にそうなのかもしれないけど。
伊賀 歌と一緒に録ればよかったですね。全員で。
高田 次はそうやって録りましょうか(笑)。
伊賀 ライブアルバム(笑)。
「omni Sight Seeing」の頃の感じ
伊賀 では続いてDISC 2「Essay」から。まずは漣くんのお気に入りの1曲を挙げてください。
高田 「Retort ~Vu Jà Dé ver.~」ですね。正直言うとDISC 2はどれもすごく興味深くて、ライナーノーツの内容以上に細野さんに聞きたいことが本当にたくさんあるんですけど。「Retort」はあの間奏のとこがすごいなと思って。そのへんを聴いていただけたらと思います。
伊賀 本当に間奏がすごいですね。
高田 音の変わり方がすごく不思議……ある意味ちょっと映画的って言うか、映像っぽい感じがして。僕、もともと細野さんの「omni Sight Seeing」って……。
伊賀 そっちが最初ですよね(「Retort」は1989年発表のアルバム「omni Sight Seeing」に収録されたインスト曲で、「Vu Jà Dé」には“Vu Jà Déバージョン”として、歌を乗せたものが収録されている)。
高田 そう。あれ、すっごい好きなアルバムで。今回のアルバムの中にああいう世界観の曲があると思ってなかったから、びっくりして。「Essay」のほうは全体的になんとなくあの頃の感じに似てるような気がしています。それはヨーロピアンな曲調とか、こういう独特な音像とか、内生的な感じとか。
細野さんはこういうイメージだったんだな
伊賀 続いて大地くんのDISC 2のお気に入りの1曲を挙げてください。
伊藤 自分はですね、「Neko Boogie ~Vu Jà Dé ver.~」。
伊賀 「Neko Boogie ~Vu Jà Dé ver.~」! いいねえ。
伊藤 この曲は一時ライブでもけっこうやっていたんですよ。
伊賀 やったね。
伊藤 いつもやっているブギのレパートリーの中でも、演奏のテンション的にはちょっとライトと言うか。それが演奏していてすごい楽しくって。この録音、自分だけ細野さんのスタジオに行った記憶があります。できあがりもすごく気に入っているので、聴いてみてください。
伊賀 どうですか? 漣くん。
高田 細野さんも書いていたけど、ライブでやっている曲で僕らのバンドでやってるバージョンと、逆に細野さんがほぼ1人で演奏して、ドラムのみ大地くんが入って、それを細野さんがスタジオで組み上げるものって全然違う。その違いを僕らはわかるから、「細野さんはこういうイメージだったんだな」っていうことを改めて知れて面白いですよね。
伊賀 確かにね。
高田 だから欲を言えば、DISC 1の曲もバンドでやったバージョンのほかに、細野さんが1人で作ったバージョンも聴いてみたいですよね。
伊賀 確かに。違いがすごく際立って出そうだもん。はー、いいこと言うなあ(笑)。
「洲崎パラダイス」の不思議
伊賀 では最後に僕のDISC 2のお気に入りの1曲を言います。僕は1曲目「洲崎パラダイス」。この曲大好きです。この曲は5、6年ぐらい前に細野さんが「『洲崎パラダイス赤信号』って映画がある」っておっしゃって。
高田 言ってたね。
伊賀 それで観たんですよ、映画を。あれ、昭和30年代かな? 30年か40年ぐらいの東京の古い街とか、そのときの東京の人々とか、そういうのがいっぱい出てきて。洲崎パラダイスに住む人たちの人間模様とかを観ていたので、細野さんが「『洲崎パラダイス』って曲ができた」って演奏をしたときに、その映像が浮かんで感動したんですね。この曲やるときはいつもその印象がよみがえってくる。
高田 レコーディングしてるときの感じも面白かったよね。ベースもリズムは明るいのに、曲は暗い。
伊賀 あー、そうそうそう。そうだね。
高田 だから録音していてもやっぱり不思議な気分。リズムだけ聴くとすごく陽気じゃない、リズムパターンが。
伊賀 うん。音頭っぽい感じって言うか。
高田 ドンカカカッカ、ドンカカカッカみたいな。だけど曲調が強烈に暗くて。
伊賀 そうそうそう(笑)。あの雰囲気がそのまま録れてるよね。わかる。好きです、この曲。大地くんはこの曲について、いいですか?
伊藤 伊賀さんが細野さんに映画を薦めてもらってすぐ観て感想を伝えていたのを俺よく覚えています。録音は最後の最後でね。
高田 最後のほう。
伊賀 最近ですよね。
伊藤 アレンジもそのときにスタジオで固めて。でもその前、何年か前に演奏しようとしたこともあったんでしたっけ?
伊賀 やったか。
高田 ライブでやろうと……その時期だったかな。ひょっとしたらピアノのハタヤテツヤくんとかもいたかもしれないけど、リハーサルをした。
伊藤 しましたよね。
伊賀 でもそれでライブではやらなかった……そっか。浅草公演(参照:細野晴臣、初夏ツアー浅草公演で大喝采「引退後初ライブです」)でもやってないか。
高田 タイトルも違ったしね。
伊賀 ああ、そうだ。
伊藤 きっとやりますよね、今後のライブでは。楽しみですね。
高田 楽しみです。
伊賀 放送日的にはもうツアーも終盤を迎えています。実際はまだリハが始まったばかりです。まあ楽しみですね。
- 高田漣(タカダレン)
- 1973年生まれのシンガーソングライター、ギタリスト。日本を代表するフォークシンガーの高田渡を父に持つ。スティールギターをはじめとする弦楽器奏者として、さまざまなアーティストとオールラウンドなセッションを繰り広げている。2002年に1stソロアルバム「LULLABY」をリリース。2008年には高橋幸宏、高野寛、原田知世らとpupaを結成し、アルバム「floating pupa」を発表した。2015年4月には父である高田渡の没後10年を機にトリビュートアルバム「コーヒーブルース~高田渡を歌う~」を、2017年10月にアルバム「ナイトライダーズ・ブルース」をリリース。
- 伊賀航(イガワタル)
- 1968年生まれ、宮城県出身のベーシスト。1996年に上京後、ソウルバンド・benzoに加入し、1998年にシングル「抱きしめたい」とアルバム「benzoの場合」をリリースする。2011年にバンドが活動休止して以降はサポートミュージシャンとして活躍。細野晴臣、星野源、曽我部恵一、Caravan、おおはた雄一、イノトモらと共演している。また長久保寛之(G)、北山ゆう子(Dr)らと結成したバンド・lakeのメンバーとしても活動中。
- 伊藤大地(イトウダイチ)
- 1980年生まれ、東京都出身のドラマー。高校入学と同時にドラムを始め、卒業後はバンドを掛け持ちしながら活動を展開する。2000年にSAKEROCKを結成し、2002年にはKilling Floorに加入。2004年には野村卓史とグッドラックヘイワを結成する。現在は細野晴臣、星野源、安藤裕子、地球三兄弟、真心ブラザーズ、Salyu、坂本美雨らのライブサポートを務めるほか、シンガーソングライターのハシケンとのユニット・ハシケンmeets伊藤大地、奥田民生と岸田繁(くるり)とのバンド・サンフジンズのメンバーとして活躍。
- 細野晴臣「Vu Jà Dé」
- 2017年11月8日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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[CD2枚組]
3564円
VICL-64872~3
- DISC 1「Eight Beat Combo」
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- Tutti Frutti
- Ain't Nobody Here But Us Chickens
- Susie-Q
- Angel On My Shoulder
- More Than I Can Say
- A Cheat
- 29 Ways
- El Negro Zumbon(Anna)
- DISC 2「Essay」
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- 洲崎パラダイス
- 寝ても覚めてもブギウギ ~Vu Jà Dé ver.~
- ユリイカ 1
- 天気雨にハミングを
- 2355氏、帰る
- Neko Boogie ~Vu Jà Dé ver.~
- 悲しみのラッキースター~Vu Jà Dé ver.~
- ユリイカ 2
- Mochican ~Vu Jà Dé ver.~
- Pecora
- Retort ~Vu Jà Dé ver.~
- Oblio
- 細野晴臣(ホソノハルオミ)
- 1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどを結成する。1973年よりソロ活動を開始。同時に林立夫、松任谷正隆らとティン・パン・アレーを始動させ、荒井由実などさまざなアーティストのプロデュースも行う。1978年に高橋幸宏、坂本龍一とイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成し、松田聖子や山下久美子らへの楽曲提供を手掛けプロデューサー / レーベル主宰者としても活躍する。YMO「散開」後は、ワールドミュージック、アンビエントミュージックを探求しつつ、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。2016年には、沖田修一監督映画「モヒカン故郷に帰る」の主題歌として新曲「MOHICAN」を書き下ろした。2017年11月に6年半ぶりとなるアルバム「Vu Jà Dé」をリリースし、同月よりレコ発ツアーを行う。
- 細野晴臣 ニューアルバム「Vu Jà Dé」」特設サイト
- 細野晴臣“リリース記念ツアー”スペシャルムービー企画「昨日の1曲」実施中!
- 細野晴臣 アルバムリリース記念ツアー
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- 2017年11月11日(土)岩手県 岩手県公会堂 大ホール
- 2017年11月15日(水)東京都 中野サンプラザホール
- 2017年11月21日(火)高知県 高知県立美術館ホール
- 2017年11月23日(木・祝)福岡県 都久志会館
- 2017年11月30日(木)大阪府 NHK大阪ホール
- 2017年12月8日(金)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
2017年11月20日更新