ナタリー PowerPush - 星野源

星野源「エピソード」の裏舞台+ヒャダイン対談「真麻最高」

ナンバーガールもトム・ウェイツもランカ・リーも千石撫子も

──その1曲目の「エピソード」ですけど、歌詞に出てくる15分、30分という刻みを見て、すぐ「アニメの話をしてる……!」と思ったんですけど、実際は?

インタビュー風景

そうですね。アニメだったり、深夜にやってる30分枠の海外ドラマだったり。でもこれ「アニメだ!」って一発でわかる人は、多分アニメが好きな人ですよ。「なんのことですか?」って言われることも多くて「あ、そうだよな」って。日本のアニメって今、深夜の一番悩みやすい、切羽詰まった時間にやってるから(笑)、アニメに救われることがよくあるんです。

──最近はラジオでもたまにアニメの話をしてますよね。もともとアニメは好きだったんですか?

そんなに深く掘り下げているわけじゃないから自分をオタクと呼ぶのはおこがましいですけど、昔からずっと好きで観ています。自分の中では、ほかのジャンルとの垣根がないんですよ。アニメもドラマも映画もぜんぶ並列。自分が好きか嫌いか。音楽でも、ナンバーガールもトム・ウェイツもランカ・リーも千石撫子も、僕にとっては同じスターなんです。

──わかります(笑)。

「エピソード」が一番しんどいときに書いた曲なんですけど、なぜか素直に出てきたんですよ。ポーンポーンって。いろんな思いで「ううー」ってなってたときに、テレビをつけてちょっと気を紛らそうと思ったら、たまたまアニメをやっていて。それですぐさまひらめいて、5分くらいでできたんです。そのときの自分の気持ちにぴったりきた。途中のCM前には絶望的だったのに15分で解決した! すごいなあっていう。なんかそのぐらいの気持ちでいいんじゃないかなっていう思いがあってできた曲です。

おじさんが泣きながら歌ってる

──ソロでのライブやリリースを重ねていく中で、お客さんのリアクションだったり、客層だったり、変わってきたことはありますか?

最初の頃よりもだんだん男性のお客さんが増えてますね。それはなんかうれしいですね。

──それって何が原因なんでしょう。

なんでしょうね。僕より年上のおじさんが泣きながら歌ってくれてたりするんですよ。

──はははは。

僕より歌詞を覚えてるぐらいで(笑)。それが本当にうれしくて。……あとなんていうか、お客さんを見てると、自分に酔ってる人がいないんですよ。ほら、駅前でやってる路上弾き語りライブとかでよくあるじゃないですか、観てる女の子が胸の前で手を握ってウットリしてるやつ。あれはその音楽に酔っているフリをして「そんなアタシ」に酔っているなって思うんです。でも僕のお客さんにはそんな人が1人もいない。みんなまっすぐ対峙してくれて。顔が真剣だもの、みんな。それがすっごくうれしいです。

──多方面で活躍しているからか、しばしば文化人というか「カルチャーの人」として捉えられることがあると思うんですけど、そこに息苦しさを感じたりはしない?

昔は少しありましたけど、今はあんまり意識してないです。前は自分に芯がなくて、いろんなことを一生懸命やるみたいな感じだったんですよ。ソロ活動にきちんと向き合ったことで、息苦しさみたいなものはどんどんなくなってきていて。

──今はSAKEROCKや役者としての顔を飛ばして「歌手・星野源」から入る人も多いでしょうし。

インタビュー風景

そうですね。去年のワンマンぐらいから、それまでの客層ではない人が結構多いなとは思ってました。

──コンプレックスだったという歌声も、結果的にむしろそこが高く評価されていたりもしますよね。

いや、ありがたいことです。

──ソロアーティストとして、これからどういう風にいたいというビジョンはありますか?

アルバムを作ってた頃の精神状態を完全に抜け出すことができて、今はすごく楽しいんです。ちゃんと予想は当たりました。すでに新曲はできてて、これはちゃんと「抜けた!」っていう曲になってると思います。今回のつらさは今までの人生の中でも一番ヘビーなやつだったので、そこから抜けられたのは本当にうれしい。もっともっと歌っていきたいですね。

2ndアルバム「エピソード」 / 2011年9月28日発売 / 2940円(税込) / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-63781

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CD収録曲
  1. エピソード
  2. 湯気
  3. 変わらないまま
  4. くだらないの中に
  5. 布団
  6. バイト
  7. 営業
  8. ステップ
  9. 未来
  10. 喧嘩
  11. ストーブ
  12. 日常
  13. 予想
星野源(ほしのげん)

星野源

1981年1月28日、埼玉県生まれ。高校2年生のときに大人計画主宰・松尾スズキのワークショップに参加し、俳優としての活動をスタートさせる。2000年にはインストバンドSAKEROCKを結成。2005年に自主制作CD-Rで初のソロ作品「ばかのうた」を制作し、2007年にはこの作品をベースにしたCDフォトブック「ばらばら」が発売。2010年にシンガーソングライターとしてメジャー1stアルバム「ばかのうた」を発表した。2011年9月28日に2ndフルアルバム「エピソード」をリリース。また、音楽活動と並行してテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」、連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」、映画「ノン子36歳(家事手伝い)」といった数多くの映像作品に出演するなど、俳優としても活躍。2011年10月21日より放送のドラマ「11人もいる!」に出演する。

ヒャダイン / 前山田健一(まえやまだけんいち)

ヒャダイン / 前山田健一

1980年7月4日、大阪府生まれ。京都大学卒業後、2007年より本格的に音楽活動を始める。作詞・作曲・編曲家としてアーティストに楽曲提供する一方、ニコニコ動画に「ヒャダイン」名義で投稿した楽曲が注目を集める。2009年には倖田來未×misono「It's all Love!」、東方神起「Share The World」と作曲を手がけたシングル2作でオリコンウィークリーチャート1位を獲得。2010年にはももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」、麻生夏子「More-more LOVERS!!」、アニメ「みつどもえ」関連楽曲などで独自の作風が脚光を集めた。同年5月にブログにて「前山田健一=ヒャダイン」を告白し、さらに幅広い活動展開に。2011年にはヒャダイン名義によるシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」でメジャーデビューを果たした。同年8月3日に2ndシングル「ヒャダインのじょーじょーゆーじょー」をリリース。