「星の王子さま」を読み込んで歌詞に
──今お話しいただいた「Stellar Stellar」「NEXT COLOR PLANET」を含めて「Still Still Stellar」では3曲、すいせいさん自身が作詞した曲が収録されています。作詞するうえで意識していることはありますか?
自分の気持ちを素直に書くようにしています。でも素直に書きすぎると限定的なものになってしまうので、自分の気持ちをある程度抽象化して、いろんな人に当てはまるようにはしていますね。曲を聴いた人が「私もこう思ってた」と感じてもらえたらいいなって。
──なるほど。すいせいさんの書く詞はシンプルなようで難しそうな言葉選びだと感じたんですが、詞はスラスラ書けるタイプですか? 行き詰まるようなことはありましたか?
「ここのひと言がどうしても出てこない!」みたいなことはけっこうありました。「Stellar Stellar」に関しては、2番のAメロの歌詞がまったく出てこなくて、めちゃめちゃ考えに考えた結果、「王子様になりたい」みたいなほかの部分の歌詞から派生させようと思いつき、「星の王子さま」を読み込んで思い浮かんだ言葉を歌詞に落とし込みました。
──行き詰まったら何かからインスピレーションを得て、克服していくんですね。
はい。そのほかには好きなジャンルの曲を聴きまくって、思い浮かんだものを言葉にしてみたり、情景をなんとなくイラストで描き起こして、言葉に落とし込んでみたり。とにかくいろんなものに触れて作詞につなげています。
──すいせいさんが歌詞を通して伝えたいテーマとか、書きたいこととかはあるんですか?
「これを伝えたい!」みたいな強い気持ちがあるタイプではないんです。「Stellar Stellar」に関しても、ライブとのつながりを生み出したい気持ちが原動力にあったから作詞をさせてもらったくらいで。どちらかというと、歌詞を書きたくなるときって自分の中で何か気持ちを消化したいときなんですよ。これから先、自分の気持ちを消化したい、整理したいときにもし楽曲制作のお話があったら、そのときはまた歌詞を書かせていただくかもしれないですね。
──ご自身の作詞に限らず、アルバム収録曲の中で特に思い入れの深い楽曲はありますか?
みきとPさんに作っていただいた「駆けろ」ですね。「駆けろ」は、3カ月連続リリースの第2弾として発表した曲なんですけど、そのタイミングでアルバム発売決定の告知もしていて、アルバムの告知動画に「駆けろ」を使わせていただいたんです。この動画は自分で作ったものなので、BGMとして使う「駆けろ」に合わせて映像演出を作っていったんですが、それがキレイにハマったのが気持ちよくて。それとライブの告知やティザー映像にも「駆けろ」が使われているので、みんなが喜んでくれた様子を思い出すこの曲は思い入れが深くて気に入っています。
アイドルの中で一番アーティスティックなライブを
──そもそもすいせいさんが歌を始めようと思ったきっかけはあるのでしょうか?
実を言うと、きっかけみたいなものはないんです(笑)。いろんなところで言ってるんですけど、そもそも私は歌でやっていく予定ではありませんでした。クリエイター気質なので、何かを作って、作ったものを誰かに見てもらいたいという気持ちが大きくて。歌い始めるきっかけになったのは、イノナカミュージックへの加入ですね。
──イノナカミュージックへの加入が大きなきっかけだったんですね。歌の活動をするにあたって最初に意識したことはありますか?
「照れずに歌う」ですね。歌をやる前は、“カッコつけて歌う人=歌がうまいと思い込んでる人”みたいな印象があって、あまり周りからいい印象を持たれないんじゃないかというイメージがあって。私も潜在的にそう思っている部分が少なからずあったので、しっかりとアーティストっぽく歌うことをやってきませんでした。なので、人前で歌うならちゃんと恥ずかしがらずに、アーティストみたいな歌い方をしようと思って、常に腹から声を出そうとは意識していると思います。
──人前で歌うときは緊張するほうですか?
わりと緊張しますね。イノナカミュージックに入ったときに、AZKiちゃんのソロライブのオープニングアクトをやらせてもらったんですけど、初めてのステージだったので、本当に手と足が震える中でがんばって歌ったんですよ。今ではそれがほとんどなくなりましたけど。
──緊張しなくなったのは場数を踏んできたからですかね。
慣れたのかなとは思います。去年は本当にたくさんのライブに呼んでいただけたし、配信で歌う“歌枠”もたくさんやりましたし。ありがたいことに“歌枠”にたくさんの人が来てくるので、モニター越しですけど、人前で歌ういい練習になったと思います。
──ちなみに今まで出演してきたライブの中で特に印象に残っているものはどれですか?
やっぱり「ノンストップ・ストーリー」は、私にとってターニングポイントだったと思います。あのときは、私のことを知らない人もけっこういたと思うんですけど、「すごい! やっときた!」みたいな歓声をすごく上げてくれて、自分もしかして人気者?って錯覚しちゃいましたね(笑)。
──いや、あの現場ですいせいさんのこと知らない人はほとんどいなかったと思います(笑)。10月にはすいせいさん初のソロライブが開催されますが、どんな公演になりそうですか?
私は「アイドル」を名乗らせていただいてるんですけど、アイドルの中で一番アーティスティックなライブをしたいなとも思っていて。
──具体的にはどのようにアーティスティックなんでしょうか?
セトリもそうですし、演出面も。まだあまり言えないんですけど、アーティスティックな演出がたくさん入ります。ライブ後に、1本の映画を観たような感覚になればいいなあと思って。ライブの中に1つのストーリーを組み込んだ、見応えのあるものを目指して準備しています。
──なるほど。アルバムの楽曲も含めてすいせいさんの持ち曲はライブ映えするものが多いと思いますが、セットリストはどういうものになりそうですか?
流れを意識して考えました。序盤はどの曲がよくて、終盤はどの曲がいいのか。実際に自分が観客として聞いた感じを想像しながら考えたりしながら、「『駆けろ』は絶対盛り上がる曲だろうな」とか、「このご時世じゃ難しいけど、『Starry Jet』でコール&レスポンスができたら気持ちいいだろうな」とか。ライブの風景を想像しながらセトリを組むのはすごく楽しいです。
──イノナカミュージックの盟友であるAZKiさんと、にじさんじの戌亥とこさんのゲスト出演が決まっていますが、このお二人が出演することになったきっかけは?
戌亥とこちゃんとは仲がよくて、とこちゃんのソロライブにゲストで呼ばれたこともあるんです。そのときから「私も自分のソロライブに呼び返したい」と思っていました。私ととこちゃんは事務所が違うんですけど、もっと事務所の垣根を越えて新しいことや楽しいことができたら面白いし、VTuber界の発展にもつながるんじゃないかなと考えていて、「2人で壁を壊すぞ」という気持ちがあるんです。その第一歩になるといいなと思って呼ばせていただきました。
──AZKiさんはどうですか?
イノナカミュージック立ち上げのときにAZKiちゃんと一緒に活動していたけど、私は途中でレーベルを転籍してしまって。それでもAZKiちゃんと何かやりたいなっていう気持ちをずっと持っていたんです。それぞれ別々の場所で活動しているけど、「あのときには見れなかった景色を2人で見たい」という気持ちで呼ばせていただきました。
──2人ともタイプの違うシンガーですし、それぞれとコラボすることでどういうものを作り上げていきたいですか?
それぞれ“かっこいい曲”と“エモい曲”を選定しています。ライブのストーリーの一部として起承転結の「転」になるようなパフォーマンスをお見せできればなと思っています。
ツアー情報
- 星街すいせい「Hoshimachi Suisei 1st Solo Live "STELLAR into the GALAXY" Supported By Bushiroad」
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2021年10月21日(木) 東京都 チームスマイル・豊洲PIT OPEN 17:00 / START 18:00 <出演者> 星街すいせい / AZKi / 戌亥とこ
- 星街すいせい(ホシマチスイセイ)
- 2018年よりYouTubeを中心とした配信活動を行っているバーチャルYouTuber。2019年5月にホロライブプロダクション内に設立されたレーベル・イノナカミュージックに所属し、同年12月に女性バーチャルYouTuberグループ・ホロライブに移籍。2021年7月配信リリースのTAKU INOUEのメジャーデビュー曲「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でボーカルを担当した。9月に1stフルアルバム「Still Still Stellar」をリリースし、10月には初のソロライブ「Hoshimachi Suisei 1st Solo Live "STELLAR into the GALAXY" Supported By Bushiroad」を開催する。