「DOG DAYS"」の世界観と音楽の関係

──それだけアニメに対するイメージがはっきりしているということは、楽曲の方向性もすぐに固まった？

そうですね。夏のノスタルジックな雰囲気に加えて……「DOG DAYS"」は群衆劇みたいなイメージがあるので、キャラクターそれぞれの気持ちを反映できるものにしたいなというのを一番に考えました。

──イメージを伝えて上がってきた楽曲について、堀江さんのほうから「もっとこういうふうにしたい」とお願いをしたりは？

ありました。最初はちょっとだけ歌詞のニュアンスが違っていて、「もっと『自分が強くなりたい』という意思を込めたいです」とか、ちょっとずつ方向性を整えていくというか。でも基本的には最初からイメージ通りでしたね。

──曲の雰囲気もメロディラインもすごく素直で覚えやすいし、まっすぐそのまま受け止められるというか。

そうですね。セツナ系で最後は壮大になる王道の曲というか。それが現実世界にもファンタジーな世界にもハマるかなと思っています。

──カップリングの「ほうき星」はどういう基準で選んだんですか？

「Stay With Me」がセツナ系で壮大な曲なので、それとは真逆な、ポップでかわいらしい曲がいいかなと思っていて。カップリングだから「DOG DAYS"」のことはそれほど意識しなくていいかなと思ってたんですけど、私が声を演じているミルヒちゃん（ミルヒオーレ・F・ビスコッティ。物語の舞台となるビスコッティ共和国の代表領主で、国民や臣下から慕われる“愛され系”お姫様）がベッドの上で跳ねているような、彼女の元気なイメージにぴったり合う曲になったかなと思います。

「正しく歌う」ことを意識しちゃう

──歌入れに関してはどうですか？ どちらもイメージがはっきりしているだけに、迷いなくできたのではないかと。

いやいや、歌入れはいつも苦労します。私は歌が本業ではないので……変な言い方ですけど、いつも「正しく歌う」ということを意識しちゃうんですよね。ここ（音源）で教科書みたいな正解を作って、あとはライブで自分なりに変えてみたりとか、お客さんがそれぞれカラオケとかでアレンジして歌ったりしてくれたらいいや、と思っちゃうというか。

──自分の個性を出したいというよりは、譜面に書かれていることをそのまま表現したいみたいな。

個性を出すのが照れるタイプというか。ちょっとアクが強いぐらいが個性だと思うんですけど、個性よりも曲をきれいに聴いてほしいみたいな。好みの問題もあるんでしょうけど、レコーディングで何テイクか録った中でも一番すんなりしたものを選んでしまう傾向があって。

──ほかのアーティストが歌っている個性の強い歌を聴いていいなあと思ったり、「こんなふうに歌ってみようかな」と思うことはないですか？

ほかの方の歌を聴くといいなあと思うし、たまに同じ声優の方でCDを出したときにいただいたものを聴いたりすると……皆さん職業柄もあるのか、感情表現がすごく豊かなんですよね。私も感情を込めてないわけじゃないんですけど、平坦に歌うクセがあるかもなあって思いますね。

「DOG DAYS"」は小旅行気分で楽しめるアニメ

──ナタリーはアニメ専門のメディアではないので、読者の中には「堀江由衣の音楽は聴いたことがあるけど、アニメはあまり観ない」という人もいると思うんですよ。そういうアニメ初心者に「DOG DAYS"」を説明するとしたら？

小旅行をしているような気持ちになれる作品ですね、私の中では。風景もきれいだし、それぞれのキャラクターがひとときの休みを冒険しながら過ごしていて。あまり気を張らずに、楽しい気持ちで観られる作品です。

──旅行先の街の出来事みたいな感覚で楽しめるというか。

そうそうそう。今回は空に浮かぶ島が出てきたりするんですけど、そこで出会った謎の人物との関係やいかに、みたいな。シリーズ3作目で世界が広がっていて、その島の景色も森の中が多くてすごくきれいで、ちょっと癒されるような、元気をもらえる作品ですね。たまに女の子の服がツルンと脱げるので、トクした気持ちにもなれると思います（笑）。