ナタリー PowerPush - 堀江由衣
8thアルバムは「秘密」です ほっちゃん×清竜人 初対談
堀江由衣の通算8枚目となるオリジナルアルバム「秘密」が完成した。前作「HONEY JET!!」以降にリリースされた4枚のシングルを含む全14曲。「秘密」という意味深なキーワードで貫かれた、コンセプチュアルな1枚に仕上がっている。
ナタリー3回目の登場となる今回のインタビューは、ほっちゃんの単独インタビューと、アルバムリード曲「CHILDISH♡LOVE♡WORLD」の作者・清竜人を迎えた対談の2本立て。なお、2人にとってはこれが初対談となる。ほっちゃんの音楽性に新たな要素を加えた初コラボ曲「インモラリスト」が生まれた経緯や新曲制作の裏側など、「秘密」の秘密にじっくりと迫った。
取材・文 / 臼杵成晃 インタビュー撮影 / 中西求
<堀江由衣 単独インタビュー>
「山小屋に住んでいる謎めいた女の子」のイメージ
──今回のアルバムは、まず「秘密」という強いコンセプトが軸になっていると思うのですが、この「秘密」というキーワードが選ばれたのはなぜですか?
まずビジュアルからアルバムのイメージが浮かんだんです。シングルでは「インモラリスト」「PRESENTER」とどこか異世界っぽい感じの曲が続いてたので、その反動もあってか、ちょっと和風なイメージが浮かんで。アルバムのジャケット写真が、まさに最初に浮かんだイメージどおりなんです。「山小屋に住んでいる謎めいた女の子」みたいな。それで、じゃあタイトルも漢字のほうがいいかなー、というところから始まって。
──現実っぽさもありながらどこか不思議な、和風のファンタジーですね。
そうです。そこから何がいいかなって考えたときに「秘密」という言葉が浮かんできて。「秘密」って言われたら「なになになに?」って興味が湧いて、ちょっと知りたくなると思うんですよ。そんな気持ちになってもらえるかなというのがひとつ。それと、秘密って誰しもが心の中に持っているものだし、共感してもらいやすいテーマかなって。
──この和風なビジュアルに「秘密」というタイトルが乗ると、謎めいたニュアンスがさらに深まりますね。
「なんでこの子は山の中で暮らしてるんだろう? 実はスパイかな?」みたいな(笑)。日常っぽいんだけど、不思議な感じ。
ド頭に“ザ・秘密”みたいな曲を
──収録曲についても、この「秘密」というキーワードが全体を通して貫かれた、コンセプチュアルな仕上がりですよね。
そうですね。各作家さんから、それぞれいろんな「秘密」が返ってきたような。
──収録曲を選ぶ上でこだわったことは?
一番こだわったのは、1曲目に入れる曲ですね。いつも楽曲を選ぶときって、たくさんのデモの中からピンと来たものをピックアップしていくんですけど、今回アルバム全体のイメージとして一番「これ!」と思ったのは、1曲目の「秘密~プロローグ~」です。アルバムの中にプロローグとエピローグを付けるというのが、私の中でなんとなくずっと流行っていて(笑)。
──リスナーとしてそういう作品が好きだったんですか?
はい。物語を感じさせる作品が好きで。プロローグから始まったり、冒頭に謎めいた文章がちょっと入ってて、最後に「こうやってつながるのか!」みたいな、そういうのが好きなんですよね。自分のアルバムでもよくそういうものを入れさせてもらうんですけど、今回はド頭に“ザ・秘密”みたいな曲があったらいいなと思って。1曲目を不思議で謎めいた曲にしたい、というのが今回一番のこだわり。そこから気に入った曲を選んでいって、さらにその中からあと2曲選んで、作詞家のあさのますみちゃんにイメージを伝えながら歌詞をお願いしたのが「秘密~プロローグ~」「秘密~君を見てた~」「秘密~待ち合わせ~」の3部作です。
──3部作として、同じメインタイトルを持つ曲が3つ入っているというのはなかなか面白い構成ですね。しかも、いわゆるインタールード的な短いインストではなく、1曲ずつでも成立してる曲なのに、トータルで聴くとコンセプトの根幹を支える連作になっているという。
雰囲気がそれぞれ違うシングル曲が4つ入るから、アルバムとして「秘密」の縦軸がほしかったんです。ジャケットの女の子のイメージに近い物語を描けるような楽曲が欲しいなって。
背伸びしてみました
──今さらりと「ジャケットの女の子」とおっしゃいましたけど、かなり客観的に見ているんですね(笑)。
そうですね(笑)。作品を作るときはいつもそういう感覚なんです。実際に私はあの和風のお家に住んでいないんだけど、何かが違えば私もあそこに住んでた子になってたかもしれない、みたいな……パラレルワールド的な感覚というのがいつもどこかにあって。私であって私でないみたいな。
──アルバムで表現する自分やステージに立っている自分と、普段の自分の距離感をどういうふうに捉えていますか?
良くも悪くも、そこまでハッキリ切り離してはいないですね。よく「普段とステージ上とそんなに変わんないですね」って言われるんですけど、それってほめられてるのかなんなのか(笑)。「堀江由衣像を作り上げよう」っていう意識はあんまりないけど、アルバムやコンサートでは、コンセプトみたいなものとキャラクター設定がほしくなるんですよね。非日常感があるほうが、聴いてくださる皆さんがより共感できるものになると思うんです。
──「秘密」のアートワークは、世界観自体はものすごく作り込まれていますけど、舞台が和風なので、少し不思議な感覚ですね。ナチュラルではあるんだけど、現実のものではないような。
女の子の設定は一応、女子大生ということになってます(笑)。
──そんな細かい設定が?
今までは「不思議の国のアリス」的な、童話的な少女世界みたいなものがすごく好きで、どちらかと言うとそういうものを大事に作ってきたんです。17歳……と言ってみたりとか(笑)。でも今回はもうちょっとだけ間口を広げて、例えば大学生とか新社会人くらいの年代にしたら、もっと共感してくれる方が増えるかなと思って。
──「脱・17歳」ですね(笑)。
背伸びしてみました(笑)。
CD収録曲
- 秘密~プロローグ~
- kiss to you
- Coloring
- True truly love
- 秘密~君を見てた~
- イマカラキミノモトヘ
- PRESENTER
- インモラリスト
- MISSION
- DEAR FUTURE by WATCHMAN feat.Yui Horie
- CHILDISH♡LOVE♡WORLD
- YAHHO!!
- sky fish
- 秘密~待ち合わせ~
堀江由衣(ほりえゆい)
東京都出身の声優アーティスト。1997年に声優としてのキャリアをスタートさせた後、1998年に歌手デビュー。「ほっちゃん」の愛称で親しまれ、永遠の少女然とした自身のキャラクターと重なるオリジナル音楽作品をコンスタントに発表している。アニメやゲームのキャラクターソングも数多く手がけ、2005~7年には声優ユニット「Aice5」としても活躍。2009年9月には声優として歴代4人目となる日本武道館公演を2日間にわたって行い、大成功に収めた。2012年1月18日には通算14枚目のオリジナルシングル「Coloring」をリリース。2月22日には8thアルバム「秘密」を発表した。