音楽ナタリー Power Push - 「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」公開記念 HoneyWorks×スフィア×CHiCO with HoneyWorks

劇場アニメでつながったミュージックレインの輪

HoneyWorksのキュンキュンな世界観

──スフィアの皆さんはHoneyWorksの音楽にどんな印象を持っていましたか?

寿美菜子

寿 1曲の中に物語がギュギュッと詰まっていて、ほんの5分くらいなのに映画を1本観たような気分になります。音楽を聴くときは歌詞から自分なりのイメージを膨らませるけど、ハニワさんの曲には登場人物がいるので、より歌詞の世界に入り込むことができるんですよね。

豊崎 読み切りの少女マンガをいっぱい読んでるような感じです。私は小説でもマンガでも、ショートショートや短編集が大好きなので、聴いていてすごくワクワクします。曲を聴いているだけでもキュンキュンしますけど、MVではヤマコさんが描かれたイラストがあるからさらにキュンキュンする!

──キュンキュンするような甘酸っぱい恋愛ソング、というのがやはりハニワの最大の特長なのかなと思います。主に男性2人が曲作りをするクリエイターチームがどのようにしてこの世界観を作り上げているのか気になってたんですけど、映画ナタリーのインタビューによると、その根幹はshitoさんの少女マンガ趣味にあるそうで。

shito 子供の頃はそういうタイプじゃなかったんですけど、大人になってからあるきっかけで咲坂伊緒さんの「ストロボ・エッジ」や「アオハライド」を読んで「こんなに面白い世界があるのか!」と。ちょうどニコニコ動画で出会ったGomと一緒に音楽を作ろうとしていたところだったので「少女マンガの世界観を、もともとバンドでやっていたロックなサウンドで表現したい」と相談して。それで、動画を投稿するんだったら映像にもこだわろうと思ってヤマコを誘ったのがハニワの始まりなんです。

Gom そのとき彼が送ってきたデモが、のちに「告白実行委員会」シリーズの最初の曲になった「初恋の絵本」(2011年11月にニコニコ動画に投稿された、HoneyWorksの5作目)の原型なんです。レコーダーで歌とギターを録った弾き語りのデモだったんですけど、もう思いしか詰まってないみたいな。

戸松遥

戸松 思いしか詰まってない(笑)。そのデモ聴きたい!

Gom 僕はずっと少年マンガしか読んでなかったので、shitoが言うコンセプトには正直それほどピンと来なかったんですけど(笑)、彼の曲を聴いているうちにストレートな表現が刺さってきて。そこにヤマコのテイストが加わったことで、HoneyWorksの世界観ができあがった感じですね。

ヤマコ 少女マンガに関しては私より全然shitoさんのほうが詳しいんですよ。私はもともとピュアピュアな少女マンガに少し抵抗があったんですけど、それを打ち破ってくれたのがshitoさん。

スフィア一同 へえー。

ヤマコ それでも昔はひそかに少女マンガ家に憧れていたんです。ボカロの二次創作をしているときはそんな話したことなかったんですけど、ハニワの活動を始めたときに2人に話したら「じゃあマンガ描いてみようよ」って。

高垣 素敵ー。巡り巡って夢が叶ったんですね。

複数の青春を紡いでつなげた歌詞に挑戦した「恋色に咲け」

──ではここから映画のオープニング&エンディングテーマについて具体的にお聞きします。まずは4月13日にシングルリリースされたCHiCO with HoneyWorksによるオープニングテーマ「恋色に咲け」から。この曲はどのように制作を進めたのですか?

shito

shito この曲は普段と歌詞の作り方を変えてまして。いつもなら2人の主人公を置いて恋がどう進んでいくかを考えるんですけど、「恋色に咲け」はAメロとかBメロとか部分部分で、複数の青春を紡いでつなげた歌詞にしました。そこは僕らにとって新しい挑戦でしたね。サウンド的には、やっぱり映画のオープニングということで、とにかく疾走感を出したいと。

CHiCO ブロックごとに登場キャラが違うから、明るかったのが急に暗くなったりどんどん変わっていくのは私にとっても挑戦でした。それぞれ場面ごとにキャラになりきって、悲しい場面では顔をくしゃくしゃにして泣く寸前みたいな感じで歌ったり。裏声がきれいに出ても「いや、きれいすぎるから少し濁して」と言われたりとか、よりリアルになるようなアドバイスをもらいました。

──声色のニュアンスを重視して。

shito この曲はもう、大事なのはそこだけと言っていいですね。うまい歌手はたくさんいらっしゃいますけど、CHiCOの場合は感情表現を突き詰めていきたいというのがコンセプトでもあるので。歌というよりも演技に近い。

「一分一秒君と僕の」のドラマ、スフィアのドラマ

──エンディングテーマの「一分一秒君と僕の」はHoneyWorks meets スフィアのシングルとして4月20日にリリースされます。こちらはスフィアという声の個性がはっきりとした4人が歌うという前提がありますよね。パートの振り分けとか、そのあたりはどのように考えていったのでしょうか。

Gom 4人に歌ってもらうからには、それぞれの個性を際立たせたいというのは第一に考えました。あとサビではエンディングの切なさを増幅させるための合唱感というか、全員が声をそろえて歌うところをイメージしました。4人分の声にコーラスを合わせるとものすごい情報量なので、作っているときはかなり悩んだんですけど、4人とも自分の声の生かし方を熟知してらっしゃる方々なので、レコーディングでの表現の仕方は皆さんに任せて。

豊崎愛生

豊崎 私たちの場合は職業柄、キャラクターを意識しようと思うと、とことんやっちゃうんですよ。ここは泣いてるように、ここは笑っているようにってやろうとすると、極端に演じちゃう。今回はスフィアとして歌うので、キャラクターに寄りすぎちゃうと誰が歌っているのかわからなくなってくるんです。

──ああ、そうですね。声優としてキャラクターを演じたり、キャラソンを歌っているスフィアの皆さんにとっては、この曲での立ち位置が難しい。

豊崎 ハニワさんの曲は背景にキャラクターの設定がしっかりあるのが魅力だと思うので、そのハニワさんがスフィアに曲を書く、なおかつ「HoneyWorks meets スフィア」として歌うとなると、キャラクターがあって、スフィアがあって、4人それぞれの個性があって……その真ん中ってどこなんだろう?というのは最初すごく考えました。でもいただいた曲を聴いてみたら、今までのハニワさんとは少し違って、主人公はリスナーなんですよね。だからこそ最後に「君のストーリー」と歌っているんです。いろんな人に当てはまる歌詞になっているので、私たちもスフィアとして自然に歌うことができました。

寿 最近、スフィアの間で年齢の話をすることが多いんです。私たちももう8年やっているので(笑)、少しずつ自分たちの年齢感に合った表現を意識するようになってきていて。この楽曲をいただいたときは、最初はどんなふうに歌うべきか悩んだんですけど、未来に向けての明るさを秘めた曲だと感じたので、実際よりも少し上の年齢で「こんなこともあったよね」と優しく語りかけるような気持ちで歌いました。

戸松 私は「大丈夫だよ」と歌うところをどういうニュアンスで表現するべきか悩んで、Gomさんにアドバイスをもらったんですけど、そこでGomさんに「明るく話しかけるように」と言われたときに、私の中でこの曲がすごく理解できたんです。スフィアの中でも4者4様の背中の押し方、励まし方があると思うんですけど、この「大丈夫だよ」で私なりの伝え方がつかめたような気がします。

──スフィアは結成時から歌声も表現の仕方もまさに4者4様で、それぞれの個性を深めながら進んできた印象があります。ソロでの音楽表現はそれぞれカラーが違いますし、スフィアとして集まったときも個性を保ったまま混ざり合うハーモニーがグループ自体の個性になっているというか。

豊崎 私たち、音楽性の違いがあるから一緒にいられるんです(笑)。

戸松 普通は音楽性の違いで解散するんでしょうけど(笑)。

高垣彩陽

高垣 結成8年目にしてこれからどう変わっていくのか、ここから先のスフィアがどういう歌を歌っていくべきなのかをよく考えるようになってきて。そんなタイミングで、ハニワさんとこうして“meets スフィア”として新しい表現に挑戦できたのは、すごくありがたいきっかけをいただいたなと思いますね。

──映画や楽曲が持っている物語とはまた別のドラマがスフィアにはあったと。映画を観た人も、自分の心に当てはまるドラマが見えてくる曲かもしれませんね。

高垣 そうですね。学生は今まさに当事者として受け取るでしょうし、過ぎてしまった情景として思い出す人もいるでしょうし……聴く人の状況によって、それぞれ響いてくるところがあるんじゃないかと思います。

CHiCO with HoneyWorks ニューシングル「恋色に咲け」2016年4月13日発売 / ミュージックレイン
通常盤[CD] 1340円 / SMCL-424
期間生産限定盤 [CD] 1340円 / SMCL-425
収録曲
  1. 恋色に咲け
  2. これ青春アンダースタンド feat. sana
  3. 恋色に咲け-instrumental-
  4. これ青春アンダースタンド feat. sana -instrumental-
HoneyWorks meets スフィア ニューシングル「一分一秒君と僕の」2016年4月20日発売 / ミュージックレイン
初回限定盤[CD+DVD] 1944円 / SMCL-426~7
通常盤[CD] 1296円 / SMCL-428
期間限定映画盤[CD] 1296円 / SMCL-429
収録曲
  1. 一分一秒君と僕の
  2. 愛に出会い恋は続く
  3. 一分一秒君と僕の(Off Vocal)
  4. 愛に出会い恋は続く(Off Vocal)
初回限定盤DVD収録内容
  • 一分一秒君と僕の(Music Video Clip)
スフィア
スフィア

ミュージックレインに所属する声優の寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生からなる4人組ユニットとして、2009年4月にシングル「Future Stream」でメジャーデビュー。メンバーそれぞれ声優やソロアーティストとして精力的に活動しながら、コンスタントにCDリリースやライブ活動を行っており、2010年11月には東京・日本武道館での単独ライブを成功に収めた。2015年2月にはデビュー5周年を記念したファンセレクトのベストアルバム「sphere」をリリース。また同年には「情熱CONTINUE」「vivid brilliant door!」「DREAMS, Count down!」と3枚のシングルを発表した。2016年4月にはHoneyWorksとのコラボレーションによる「HoneyWorks meets スフィア」名義で、HoneyWorks制作の劇場版アニメーション「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」のエンディングテーマとなるシングル「一分一秒君と僕の」をリリース。

HoneyWorks(ハニーワークス)
HoneyWorks

コンポーザーのGom、shito、イラストレーターのヤマコのほか、Oji、モゲラッタ、ろこるといった多数のサポートメンバーからなるクリエイターユニット。2014年1月にボカロ曲で構成されたアルバム「ずっと前から好きでした。」でメジャーデビューを果たし、同年8月にはボーカリスト・CHiCOを迎えたユニット・CHiCO with HoneyWorks名義でシングル「世界は恋に落ちている」をリリースした。2016年4月には、楽曲シリーズ「告白実行委員会~恋愛シリーズ~」をもとに制作された劇場版アニメーション「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」が全国公開。さらに劇場版第2弾「好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~」の公開も決定している。

CHiCO(チコ)
CHiCO

2013年に実施されたソニー・ミュージックエンタテインメント主催のオーディション「ウタカツ!オーディション」にてグランプリを受賞。2014年8月にHoneyWorksとのユニット・CHiCO with HoneyWorksとして1stシングル「世界は恋に落ちている」をリリースし、メジャーデビューを果たす。2015年11月に初アルバム「世界はiに満ちている」を発表。2016年1月にはCHiCO with HoneyWorksとして初のワンマンライブを東京・WWWで開催した。2016年4月には、HoneyWorks制作の劇場版アニメーション「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」のエンディングテーマとなるCHiCO with HoneyWorksのニューシングル「恋色に咲け」をリリース。6月には東京・中野サンプラザホールにて初のホールワンマンライブ、7~8月には初のライブハウスツアーを行う。


2016年5月13日更新