Homecomings「i care」特集|「バラバラのままでも手を取り合える」福富優樹(G)×畳野彩加(Vo, G)が新作で伝えたいこと (3/3)

Homecomings「Somewhere In Your Kitchen Table」ツアーダイアリー

畳野彩加(Vo, G)

Somewhere In Your Kitchen Table、初日は福岡からスタート。羽田空港に着いてバタバタしながら飛行機に乗って無事に福岡空港に到着。この日は車移動で久しぶりに通る道や見覚えのある建物を見てツアーが始まったワクワクで胸がいっぱいだった。早速着いてから何を食べるかで色々と話し合った結果、天ぷら屋さんの「ひらお」に決定。今までもライブやキャンペーンで福岡に来たときに何度か行ったことがあって、やっぱり福岡といえばひらおに行かないと始まらない!と勝手に思っている。目の前で揚げられた熱々の天ぷらとお味噌汁とイカの塩辛の組み合わせはやっぱり最高だった。この日はすごく天気が良かったので愉快に散歩をしながらINSAまでの道のりを4人で歩いて川沿いで写真を撮ったりした。久々のこの感じ。

リハーサルをたっぷりした後あっという間にオープン時間になった。ツアー初日の緊張感と4年ぶりの福岡ワンマンだったのもあって少しだけ不安な気持ちがあった。けど、いつものSEでステージに出た瞬間、お客さんのあたたかい拍手がいつもよりも大きく感じた。待っていてくれたんだとすぐにわかったし不安もすぐになくなった。マスクで表情は見えないけど笑顔で楽しんでくれているのが伝わってきてすごく幸せな2時間だった。ツアー初日が福岡で本当に良かった。このツアーはきっと今までで一番良いものになるような気がした。

福富優樹(G)

2年ぶりに実家に帰ることができた。育った町を離れてから、それまでなんとも思っていなかった曇り空や海、大きな図書館、龍美の餃子とひろちゃんのスタミナラーメン、僕のあだ名のもとになった焼肉屋ふくちゃん、てんとう虫公園と夕暮れの田んぼの濃い緑なんかがやけに胸を波立てるようになった。年に何度も帰ることができた何年か前までよりも、ここ何年かの時間を経て、愛おしく思う気持ちがさらに増したような気がする。久しぶりに食べた実家のごはんにもかなりぐっときてしまった。お母さんとお父さんが作るごはんはめちゃくちゃ旨い。なぜか弟が作ってくれたニラ玉もおいしかった。食後のスマブラでは弟をボコボコにしてしまい申し訳なくなった。僕のバンジョー&カズーイはめちゃくちゃ強い。

福富優樹(G)ツアーダイアリー

石川でのライブはどうしたって特別なものに感じてしまう。自分や彩加さんの家族が観にきているのもあるし、友達にもかっこ悪いところを見せるわけにはいかない、という変なプレッシャーもある。いつもとは明らかに違う状況でいつも通りMCで大事なことや、ふざけたことを話すのもどこか恥ずかしくもあるのだけど、そんなふうに色々と考えてしまう場所がひとつあるというもの素敵なことなんじゃないかな、と思う。今回のツアーでどの場所でも話している話がふたつあって、「地方」ということばをあまり使いたくない、小さな町でも大きな街でも変わらずにそこに生活があって、そこに住んでいるひとたちがいて、誰しもが多かれ少なかれそのまちに好きな場所やお店があって。そんな場所に僕らは音楽を演奏しにきていて、もしよかったらみなさんの好きなものを教えてほしい、というはなし。もうひとつは、ひみつだ。

ライブはとても盛り上がったし、家族や友達にひさしぶりにバンドとしても元気な顔を見せることができてとても嬉しかった。昔から大好きな金沢駅の駅そばを食べられたことと、本番前に金沢21世紀美術館に寄って「フェミニズムズ」と「ぎこちない会話への対応策 ─ 第三波フェミニズムの視点で」のカタログを買えたのも嬉しかった。

福田穂那美(B)

3月6日は京都でのライブ。前日は金沢だったので、終わってそのまま車で京都へ向かい、夜ご飯は各自適当に済ませて就寝。ツアー中はできる限りその土地のお店に行ったり街を散策をしたいので、用意ができたらすぐにホテルを出る。

この日の朝は福富さんと御多福珈琲へ行って、ホットコーヒーとバタートーストを注文。最近コーヒーを美味しいと思えるようになったので、喫茶店でコーヒーを頼めるのがうれしい。コーヒーは私の好きな味で美味しかったしバタートーストもじゅわじゅわしみしみで最高。そのあとはすぐ近くの永正亭へ。なるちゃんとお店の前で合流していつも頼む特田舎を注文。特田舎とは冷たいお蕎麦で、大根おろし、卵、刻み海苔、天かす、ネギが乗っていて、美味しくて大好き。本当はほかのものも食べてみたいと思いつつ、でも結局迷わず特田舎を頼んでしまう。そしてお店のおばちゃんとおじちゃんが最高。おばちゃんの話している言葉を聞いて、ああ、京都にいるんだなという気持ちになる。おばちゃんが福富さんにお店のことを書いてくれてありがとうと話されていた。いつまでもこのお店があり続けてほしいと思いながら蕎麦をすする。

お腹がいっぱいになって入り時間が迫ってきたので早歩きでMUSEまで行く。着いたらまだリハまで時間があったので、ぽんちゃんと合流して4人で大丸へ。福富さんの希望で靴売り場へ行ったけどお目当てのものがなく、ぽんちゃんが前から気になっていた靴をゲットして、そのまま屋上へ上がった。天気は晴れのち曇りのような感じで、日が差すタイミングでみんなの写真を撮った。セブンティーンアイスを福富さんのおごりでみんなで食べていたら雨が降ってきてしまって、リハの時間も迫っていたので急いでまた戻る。

リハを終えたあとは準備などで少し忙しくなる。正直ライブの記憶があまりなくて、とにかく緊張していたことだけ覚えている。金沢では落ち着いてやれたのに。自分が緊張するのはどういうときか自分でもわからないので本当に困る。でもお客さんはとても温かくて、客席を見ながらうれしい気持ちで演奏していたことは覚えている。そして本番後に久々に行貞さんに会えて本当にうれしかった。相変わらず元気そうだったし、何だかほっとした。何のときだったかは忘れたけど、マルイの前でみんなで立ち話をしていたことをなぜかふと思い出した。

京都を出る前は特に京都という場所に思い入れを強く持っていたわけではなかった。執着がなかったとも言えるかもしれない。でも東京に引っ越してこうやって京都に帰ってくるたびに、何だかほっとするなといつも思う。今住んでいる街も好きだし、もちろん生まれ育った京都も好きだ。そしてツアーで訪れる場所のことを一つ一つ知るたびにうれしくなる。こうやってどんどん好きな場所を増やしていければいいなと思う。早くまたツアーをしたいし、次のツアーでは今回行けなかった場所にも行けたらいいな。

石田成美(Dr)

ツアーも終盤。週末の名古屋~大阪公演から帰ってきた3日後、今度は仙台へ。北関東に住んでいる私は、仙台に向かう途中の駅で拾ってもらう。このツアーの1カ月の間、ほとんどの週末に2泊3日の遠征に出掛けて随分と旅慣れたと思っていたけど、ツアーラストの遠征は北海道も含めた4泊5日の長旅だったので、さすがにみんなのキャリーバッグもお土産を入れる隙がないくらい荷物でいっぱいだった。入り時間までそんなに余裕はなかったけれど、この辺りの名物的なラーメンをみんなに食べてほしくて、高速に乗って割とすぐのサービスエリアに止まった。春休みだからか平日の昼前にもかかわらず割と利用する人が多く、予想外の注文の量に厨房の人たちが一同に集まって何やら緊急会議を始めるくらいの慌てっぷりだった。無事に届いたラーメンはみんなも気に入ってくれたようで、嬉しかった。ほなちゃんが各公演ごとにインスタのストーリーズでその土地のおすすめを募集していて、それにはたくさんのメッセージが届いていた。自分の暮らす町の好きなところや食べ物を知ってもらうのは嬉しいし、ましてやそれを気に入ってくれたら少し誇らしく思うだろう。私たちもガイドブックではわからないような住んでる人ならではのおすすめを聞けるし、すごく良い企画だなと思った。

腹ごしらえをして、そこからはほとんどノンストップで仙台へ。お昼過ぎには到着して、例のごとく腹ぺこだったメンバー4人で、おすすめしてもらった駅の立ち食い寿司とずんだシェイクを目指して街へ繰り出す。京都にいた頃、仙台へはライブで何度も訪れていた。ツアーの途中や車で日帰り(!)なことがほとんどで昼間のまちをゆっくり見て回ったことはあんまりなかったけど、歩いていると不思議と前に来たときのことを思い出した。

リハーサルを終えてからは早い。衣装にアイロンをかけたり、着替えたりしているうちに1時間が経って、あっという間に本番の時間になる。いつものSEがなると、エイエイオー!と言うのが恥ずかしい私たちは、あいまいな掛け声をして、わらわらとステージに出る。セットリストが変わって、3回目の公演。新曲にも慣れてきて、ライブを楽しむ余裕が出てきた気がする。キーボードがない分ステージは広く、自由に動いたり、終盤になるとぎゅっと集まったり、演奏に熱が入りやすくていい。楽しそう踊っている人が目に入って、バスドラムをちょっとだけ強く踏み込む。仙台のenn 2ndはステージが高くなくお客さんとの距離も近くて、一人ひとりの拍手の音がいつもよりも大きく聞こえた気がした。終演後、ローディーの青山さんもすごく褒めてくれて嬉しかった。

夕飯は初めて食べるせり鍋がおいしくて、ライブと同じくらい興奮する。ホクホクの気持ちのまま、明日の飛行機に備えてホテルへ。次は苫小牧、そして札幌。数えていくとツアーの終わりが見えてきて、少し寂しくなる。

仙台公演のちょうど1週間前に福島県沖で大きな地震が起きた。残念ながら今回来ることができなかった人たちのためにも(そしてシュイジューロウピエンと南蛮味噌漬けへのリベンジもかけて!)、きっとまた近いうちに仙台で演奏できたらいいな。

石田成美(Dr)ツアーダイアリー

プロフィール

Homecomings(ホームカミングス)

福富優樹(G)、畳野彩加(Vo, G)、石田成美(Dr)、福田穂那美(B)からなる4人組バンド。2012年京都精華大学在学中に結成後、2014年に1stアルバム「Somehow, Somewhere」、2016年に2ndアルバム「SALE OF BROKEN DREAMS」、2018年に3rdアルバム「WHALE LIVING」をリリースした。台湾やイギリスなどでの海外ツアーや、4度にわたる「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演などライブ活動も精力的に展開。2017年にはイラストレーターのサヌキナオヤと共同で、映画と音楽のイベント「New Neighbors」もスタートさせた。また2019年には活動拠点を京都から東京に移し、2021年5月にはポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsからアルバム「Moving Days」をリリースしてメジャーデビュー。2022年4月にはドラマ「ソロ活女子のススメ2」のエンディングテーマ「i care」を配信リリースした。