京都の人たちの文化って、すごいなって思います
──ある時代にたまたま存在した素材で作られたという点で、例えば陶磁器における粘土や釉薬に通じる部分があったりは?
望月 ありますね。今となってはもう出せない色とかもありますし。例えば安土桃山時代に焼かれた志野焼という焼物は、当時とまったく同じものは再現不可能と言われていたり。そういった、この言い方は適切ではないかもしれませんが、絶滅してしまったような骨董品にはロマンを感じます。作られた時代に思いを馳せると言うか。
鈴華 わかります。
望月 あと素材の話とはちょっと違うんですけれど、もう作られないという意味では祇園祭の山鉾にベルギーなど外国製のタペストリーがかけられているのですが……。
鈴華・町屋 ああ、はい。見たことがあります。
望月 その中にモンゴル帝国のタペストリーもあるんですけど、モンゴル帝国という国はもう存在しないし、その時代に作られたタペストリーは祇園祭の山鉾にしか残っていないそうなんです。なので、メトロポリタン美術館に貸し出されたりもしてるんですね。でも京都では、そんな世界のどこにもない美術品が普通にお祭りを彩る道具として使われている。そういう京都の人たちの文化って、すごいなって思います。
鈴華 最近、たまたま祇園祭のことが気になって、なぜ八坂神社(祇園祭は八坂神社の祭礼)に今おっしゃったような外国の織物があるのか調べたばかりだったんです。だからすごくタイムリーでびっくりしました(笑)。
望月 そうしたタペストリーが渡ってきたのは、日本が鎖国をしていた時代なんですよね。日本は鎖国中も中国とオランダとだけは交易を続けていて、当時のベルギーはオランダの一部だったので、ベルギー製のタペストリーも入ってきていたんです。その頃、伊藤家や三井家のような豪商が幕府に200億円近いお金を貸していて、その返礼のような形で舶来品のタペストリーを寄贈され、それを町人に見てもらうために祇園祭の山鉾にかけたそうなんです。
町屋 へえええ。
偽物の“隠しきれない打算”
鈴華 望月さんはもともと骨董にお詳しかったから、「京都寺町三条のホームズ」を書かれたんですか?
望月 いえいえ、最初は単にアンティークショップがミーハー的に好きで、それを舞台にしたお話を書きたいなって。でもいざ書くとなったら何も知らないので、とにかく勉強するしかない、みたいな(笑)。
鈴華 取材をされながら書かれたわけですね。
望月 そうです。例えば京都にある樂美術館に何回も通って学芸員さんにお話を聞いたり。そこにしか置いていない資料もあるんですけど、持ち出しできないからその場で書き写したり。骨董について何もわからないからこそ、勝手な判断はせずに逐一裏を取っていく感じでしたね。例えばアニメの第5話で清貴が「偽物にはどうやっても人を騙そう、欺こうという隠しきれない打算が見えてしまう。鑑定士はそれを感じ取れるのです」というセリフを言うんですね。
町屋 印象的なシーンですね。
望月 それって、人によってはある種のチート能力のように思われるかもしれないんですけど、そうした発言も、実は古美術鑑定家の中島誠之助さんの著書に書かれてあったことで。だからその著書も参考文献として載せているんです。もっと言うと、清貴の祖父で骨董品店「蔵」のオーナーである家頭誠司のモデルが中島さんなんです。だから誠司の教えを受けた清貴にも、そのモデルたる中島さんの鑑定眼や哲学が備わっているようなイメージですね。
──今おっしゃった「人を騙そうという打算が見えてしまう」というセリフには妙な説得力がありました。
望月 でも一方で、偽物を作るのに没頭して、言わばトランス状態で本人になりきって作ったものは真贋の見分けがつきにくいとも中島さんの本には書かれていて。つまり贋作師が誰かを騙そうと思っていないケースですよね。まれにそういう憑依タイプのクリエイターがいるらしくて。
鈴華 私は原作を拝読していて、贋作師の側に感情移入しちゃうことがあって。
望月 そうなんですか! 贋作師も、やはりクリエイターなので、だんだん「それを作っているのは自分なんだ」って気付いてもらいたくなることがあるそうなんです。最初は見抜かれないようにがんばっていたんだけど、あまりに見抜かれなさすぎて、つい自分を出しちゃうみたいな。フェルメールの贋作を描き続けていたメーヘレンにもそういう部分があったと言いますよね。「ホームズ」の作中に登場する天才贋作師の円生にしても、クリエイターとしての才能を誇示したいけど、贋作師としては偽物だと見破られてはいけないという葛藤があったり。
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今は使いどころを選べるようになった
- アニメ「京都寺町三条のホームズ」
- 放送情報
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テレビ東京:毎週月曜26:05~
テレビ大阪:毎週月曜26:05~
テレビ愛知:毎週月曜27:05~
BSジャパン:毎週金曜24:59~
AT-X:毎週水曜22:00~
- スタッフ
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原作:望月麻衣・秋月壱葉「京都寺町三条のホームズ」(双葉社・月刊アクション連載)
監督:佐々木勅嘉
シリーズ構成:山下憲一
キャラクターデザイン・総作画監督:伊藤陽祐
アニメーション制作:アニメーションスタジオ・セブン
- キャスト
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真城葵:富田美憂
家頭清貴:石川界人
梶原秋人:木村良平
円生:遊佐浩二
滝山利休:小林沙苗
家頭誠司:小山力也
家頭武史:上田燿司
宮下香織:木下鈴奈
宮下佐織:堀江由衣
- 音楽
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テーマソング:和楽器バンド「細雪」
オープニングテーマ:A応P「恋に咲く謎、はらはらと」
©望月麻衣・秋月壱葉/DEF STUDIOS
©「京都寺町三条のホームズ」製作委員会
- 和楽器バンド「細雪」
- 2018年11月14日発売 / avex trax
-
初回限定生産LIVE映像盤
[CD+DVD]
7020円 / AVCD-94180/B -
初回限定生産LIVE映像盤
[CD+Blu-ray]
7020円 / AVCD-94181/B -
MUSIC VIDEO盤
[CD+DVD]
2484円 / AVCD-94182/B -
MUSIC VIDEO盤
[CD+Blu-ray]
2484円 / AVCD-94183/B -
CD ONLY盤
[CD]
1296円 / AVCD-94184
- LIVE映像盤およびMUSIC VIDEO盤CD収録曲
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- 細雪
- 光の中で
- LIVE映像盤付属DVDおよびBlu-ray収録内容
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「和楽器バンド TOUR 2018 音ノ回廊 -oto no kairou-」(東京国際フォーラム公演)
- 細雪
- 紅蓮
- 沈まない太陽
- World domination
- シンクロニシティ
- 「儚くも美しいのは」
- 五芒星
- 焔
- 砂漠の子守唄
- 独歩
- 律動遊戯・叫
- セツナトリップ
- 脳漿炸裂ガール
- 吉原ラメント
- 月・影・舞・華
- いろは唄
- 千本桜
- 花になれ!
- 天上ノ彼方
- オキノタユウ
- 雪影ぼうし
- MUSIC VIDEO盤付属DVDおよびBlu-ray収録内容
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- 細雪(MUSIC VIDEO -New Ver.-)
- 細雪(MAKING)
- ショートフィルム「遠い時間、月の明かり」
- CD ONLY盤 CD収録曲
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- 細雪
- 光の中で
- 義風乱舞
- 蜉蝣
- 細雪(Piano Solo)
- 細雪 for Piano and Symphonic Orchestra
- 細雪(Instrumental)
- 光の中で(Instrumental)
- 義風乱舞(Instrumental)
- 蜉蝣(Instrumental)
- 望月麻衣「京都寺町三条のホームズ①」
- 発売中 / 双葉社
- 望月麻衣「京都寺町三条のホームズ⑩ 見習い鑑定士の決意と旅立ち」
- 発売中 / 双葉社