ナタリー PowerPush - ヒトリエ

肉体性を獲得した“ネットシーン”の寵児

「察しないでほしい」

──歌詞は曲ができたあとで書くんですか?

wowaka 今回はあとから書くことが多かったです。歌詞こそ日記みたいになってますね、ホントに。僕はずっとそうなんですけど、そのときの感じだったり、自分のモードやブーム、精神の健康状態が歌詞の中にすごく出るんですよ。このアルバムは「2013年の下半期日記」っていう感じです(笑)。

──歌詞に関しては、wowakaさんの個人的な感情が出てきていい?

wowaka うん、いいと思います。原点になっているのは自分の頭の中にある世界だし、それがヒトリエの歌詞の世界観になってると思うので。あと、メンバーと一緒に過ごしたり、演奏していく中でできた言葉ですからね、全部。1人でやっていたら、こういう歌詞やメロディにはなってないと思うし。

──wowakaさんの想像の世界とメンバーと共有するリアルな体験が混ざってるのかもしれないですね。そういう意味では「イマジナリー・モノフィクション」というタイトルはすごく象徴的ですね。

wowaka そうなんですよ。今回は「(ヒトリエは)こういうことだよ」っていうのを一番わかりやすい形で言っちゃいたいなと思って。

──メンバーの皆さんは、歌詞についてはどう感じてるんですか?

イガラシ 今「日記みたい」って言ってましたけど、自分も同じように感じるんですよね。似たような経験がいっぱいあるというか。

wowaka 作ってるときは、ほぼ毎日一緒にいますからね。

ゆーまお 歌詞を読んだときに「わかる。この前、ムカついてたからな」って思ったり。

wowaka ホントにそういう感じなんですよ(笑)。

シノダ まあ、それは一緒に体験した人間じゃないとわからないことだと思いますけどね。

──リスナーはそれぞれの価値観や世界観を重ねながら聴くわけで、そこで違う解釈が生まれるのも当然だと?

wowaka うん。それが一番健康的だし、そうあってほしいと思います。いちいち、こっちのことを察しないでほしい。

イガラシ 名言だね(笑)。「察しないでほしい」。

──バンドの知名度が上がると、いろいろと察しようとするリスナーも増えると思いますけどね。

シノダ それはもう、一現象として楽しむしかないですね。

wowaka そういう文化も、俯瞰して見てるとメチャクチャ面白いんだけどね。

「ボカロっぽい」ではなくて、「wowakaっぽい」んですよ

──歌詞についてもう1つ。wowakaさんの歌詞は主人公が女の子だったり、女の子の感情に焦点が当たっていることが多いですが、それはどうしてですか?

wowaka 「こういう子がいたらカッコいいな」とか「絵になるな」っていうことですよね。それしかないんですよ、始まり方としては。女の子のほうが言葉をしゃべらせやすいっていうのもあるし……。どうしてそう思うのか、自分でもすごく不思議なんですけどね。

──ナンバーガールにも少女を描いた曲が多いし、その影響もあるのでは?

wowaka 絶対にあるでしょうね。ただナンバガの場合は、女の子に対する能動的な意識の向かい方というか、僕とはちょっと性質が違うのかなと思いますけど。でも、ああいう少女像に関して、彼らから受け取ってるものはメチャクチャ大きいと思います。

──なるほど。「イマジナリー・モノフィクション」がリリースされると、ヒトリエの音楽性、アイデンティティがさらに強く伝わっていくと思います。ちなみに皆さんは自分たちの立ち位置について、どんなふうに認識してます?

イガラシ そうですね……。まあ、絡みづらいだろうなとは思います(笑)。

ゆーまお 偏見みたいなものを感じることもあって、それは「クソ食らえ」って思ってますけどね。曲を聴いて「ボカロっぽいね」って言われたりもするんですけど、それは順番が逆だったりもするから。この人(wowaka)のメロディがボカロのシーンに影響を与えたわけですからね。「ボカロっぽい」ではなくて、「wowakaっぽい」んですよ。

wowaka ボーカロイドだけじゃなくて、アニメだったり、アキバカルチャーも経てきてるんですよね。そういう文脈を踏まえた上で、こういうバンドをやっているっていう。この先はどこにでもアプローチできるバンドになっていきたいですね。いいものを作っていれば、勝手にそうなるだろうなって思ってるので。あと、最近の邦楽ロックシーンを見てると素直に「いいな」と思うバンドが増えてるんですよね。ああいうところにも正しくアプローチしていきたいと思います。

──音楽的な部分ではどうですか? さらにシンプルなバンドサウンドに向かっていくイメージですか……?

wowaka いや、今回のアルバムを経た上で、緻密なものをやりたいんですよ。こういうことをやった身体で緻密な曲をやれば、絶対に違うものができると思うので。バンドをやっていて感じるのは、“演奏に身体が付いていく”という感覚なんですよね。その肉体を持って、緻密に構成した曲をやるとどうなるか?っていう。

イガラシ うん。

wowaka それを経て、またシンプルに表現するタイミングも来るだろうし。そうやって続けていくのがいいですね。“生きてる”って感じがして。

ゆーまお いい精神状態だね(笑)。

ヒトリエ メジャー1stミニアルバム「イマジナリー・モノフィクション」 / 2014年2月19日発売 / 1890円 / 非日常レコーズ / SVWC-7986
収録曲
  1. アイマイ・アンドミー
  2. 生きたがりの娘
  3. アンチテーゼ・ジャンクガール
  4. 踊るマネキン、唄う阿呆
  5. (W)HERE
  6. ever ever ever
  7. 浮遊と沈没と
ヒトリエ メジャー1st シングル「センスレス・ワンダー」 / 2014年1月22日発売 / 非日常レコーズ
ヒトリエ メジャー1stシングル「センスレス・ワンダー」初回限定盤[CD+DVD] / 2100円 / SVWC-7977~8
ヒトリエ メジャー1stシングル「センスレス・ワンダー」通常盤[CD] / 1260円 / SVWC-7979
収録曲
  1. センスレス・ワンダー
  2. さらってほしいの
  3. darasta
初回限定盤DVD収録内容

MV「ルームシック・ガールズエスケープ」

  1. SisterJudy
  2. モンタージュガール
  3. アレとコレと、女の子
  4. るらるら
  5. サブリミナル・ワンステップ
  6. カラノワレモノ
  7. 泡色の街
ヒトリエ

wowaka(Vo, G)、シノダ(G, Cho)、イガラシ(B)、ゆーまお(Dr)の4人からなるバンド。ボーカロイド楽曲でサウンドクリエイターとして高い評価を集めていたwowakaが中心となり、ネットシーンで交流のあったシノダ、イガラシ、ゆーまおに声をかけ、2012年より活動をスタートさせた。同年12月には「ルームシック・ガールズエスケープ」、2013年4月には「non-fiction four e.p.」と立て続けに自主制作盤を発表し、同年4、5月に初のワンマンライブを行った。同年11月に開催されたワンマンライブ「hitori-escape:11.4 -非日常渋谷篇-」にて、ソニー・ミュージックグループ傘下に自主レーベル「非日常レコーズ」を立ち上げることを宣言。2014年1月にメジャーデビューシングル「センスレス・ワンダー」を発表した。同年2月にレーベル第2弾作品となるミニアルバム「イマジナリー・モノフィクション」をリリース。4月には東名阪3都市を回るワンマンツアー「マネキン・イン・ザ・パーク」を行う。