ナタリー PowerPush - Hi-STANDARD
難波章浩&横山健が明かすハイスタとAIR JAM再始動への道のり
昨年11年ぶりに再始動を果たしたHi-STANDARDが、ライブDVD「Live at AIR JAM 2011」を2月22日にリリースする。このDVDは2011年9月18日に横浜スタジアムで行われた野外フェス「AIR JAM 2011」でのハイスタ11年ぶりのライブの模様が余すところなく収められており、約3万人の観客が目撃した伝説のライブを追体験することができる。長年復活を求めていたファンにとって、まさに待望のアイテムと言えるだろう。
今回ナタリーでは、メンバーの難波章浩(Vo, B)と横山健(G, Vo)にインタビューを実施。昨年3月に発生した東日本大震災を機に開催を決めた「AIR JAM 2011」についてや、難波、横山、恒岡章(Dr)が再びハイスタとして活動再開することになった経緯、さらには今年秋に予定されている東北での「AIR JAM」開催についてなど、興味深い話をじっくり訊いた。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 中西求
震災があったとき自分の中にハイスタの名前が浮かんだ
──Hi-STANDARDの活動休止中、難波さんと横山さんは不仲だと噂されていて、ハイスタ復活はないと思われていました。今回の再始動は東日本大震災がきっかけで実現したということですが、以前から再始動に向けた予兆はあったんですか?
横山健(G, Vo) 難ちゃんは、震災前のここ数年は再始動の可能性を探っていて、僕に何度もアプローチしてくれてたんです。でも、僕は正直言ってやりたいって気持ちはそんなにはなかったかな。3人それぞれの活動があったし、僕は自分でソロとして動いてたから、そこからブレちゃいけないっていう気がすごくしてたんですよね。だから、「今はまだそのタイミングじゃない」っていう話をずっとしてたんだけど、今考えるとそれが再始動までの助走としては大きかったのかな。
──なるほど。
横山 そんな助走期間を経て、震災があったときに自分の頭の中にパッとHi-STANDARDの名前が浮かんだんです。きっとそれまでの助走がなかったらハイスタっていう発想には辿り着かなかったと思う。実際に僕らは不仲だった時期がありますよ。ときどき難ちゃんが「僕らにとってすべてが必要なことだったんだ」って言うんですけど、きっとこれまでの不仲云々といった流れや何年もの時間は全部、ここでこの話をするために必要なことだったのかもしれないですね。
難波章浩(Vo, B) 地震は天災だし、どうしようもないことですよ。でも、その後の政府の民衆に対する対応とか原発のこととか、人としての心が通ってないからそういう態度になってしまうわけで。とにかく人として、みんな仲良くならなきゃいけないと思ったんです。ハイスタっていうのはその表現方法の1つで、音楽を通じて日本全体が仲良くなろうっていうことを表現したいんです。
活動停止以降はお互いを必要としない人生を歩んでいた
──一時的にとはいえ仲が悪かった皆さんが再びハイスタとして集まることは、そんなに簡単なことではなかったと思うんですが。
横山 ちょっと刺激的なこと言っちゃいますけど、僕らね、2000年の活動停止以降それぞれが別々に、お互いがお互いをそんなに必要としない人生を歩んでいたんですよ。確かに不仲にもなったし。でも、震災がきっかけで全部を水に流して、またHi-STANDARDという名前のもとに集まった。お客さんには関係ないかもしれないけど、僕らにはそういったストーリーがあるわけですよ。
難波 ハイスタは大勢の人にアピールすることができるし、その意欲を感じたから健くんは「よし、今だ」と確信したと思うんだよね。僕は震災の前から「AIR JAM」みたいな大きなフェスをやりたいと考えていて、そこにはハイスタとして出たいと思ってたんです。
──どうしてハイスタとして出たいと思ったんですか?
難波 それは日本が暗いなと思ったから。この日本を盛り上げるためには僕のソロじゃだめだ、ハイスタが復活しないと日本が活気づかないだろ、ってことなんです。それくらいの不況だし、テレビでは人が人をむちゃくちゃにしちゃうっていうニュースが流れてる。もうわけがわかんない時代に突入したところで震災が起こって、改めてこんなことじゃいけないって気付く。ここで切り替わらないといけないって思ったんだよね。本当にいろんなことを考えていかなきゃいけないんだってことを仲間たちにアピールしたいんです。
横山 そうだね、今は少なくとも「音楽は楽しければいいんだ」っていう時期じゃないよね。
CD収録曲
- STAY GOLD
- MY HEART FEELS SO FREE
- SUMMER OF LOVE
- CLOSE TO ME
- DEAR MY FRIEND
- WAIT FOR THE SUN
- TEENAGERS ARE ALL ASSHOLES
- FIGHTING FISTS, ANGRY SOUL
- CAN'T HELP FALLING IN LOVE
- STARRY NIGHT
- BRAND NEW SUNSET
Hi-STANDARD(はいすたんだーど)
難波章浩(Vo, B)、横山健(G, Vo)、恒岡章(Dr)からなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし、知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期から海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。本作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。
約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年4月に難波、横山、恒岡がTwitter上で3人同時に「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!」とツイート。そして翌5月には、9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」の開催と、Hi-STANDARDがライブを行うことが明らかになる。国内外15組のアーティストが出演したこのフェスで、ハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを敢行した。2012年2月にはこの日のライブを完全収録したライブDVD「Live at AIR JAM 2011」をリリース。同年秋には東北で「AIR JAM」を開催することも発表されている。