ナタリー PowerPush - 甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)×ROY(THE BAWDIES)
ロックンロール対談
音楽によって世代の差がなくなる
──お2人は世代こそ違いますが、音楽的な共通項は多そうですね。
ヒロト うん、THE SONICSなんかもさ、黒人の音楽に憧れすぎて、彼らの中の妄想が炸裂してるんだよね。その大げささ、やりすぎ感、行きすぎ感がTHE SONICSだと思うし、それこそがロックンロールを前に進めることだと思う。ブルースを大げさにすればLED ZEPPELINになっていく。それが普通のことなんだよ。
ROY その振り切れる感覚がやっぱり本当にカッコよくて。THE SONICSは去年僕ら一緒にツアーしたんで、そのときに直接訊いたんです。ボーカルのジェリー(・ロスリー)に「誰が一番好きだったんですか?」って言ったら、ウィルソン・ピケットって言ってたんですよ。
ヒロト おおー、はいはいはい。
ROY で、納得したというか。
ヒロト なるほどね、いいねえ。
ROY だからあれだけノドをしっかり鳴らして、歪ませてたのかなって。
ヒロト 後先考えない感じの。
ROY そうですね。
ヒロト あのね、ROYくんは僕よりずっと若いんだけど、古い音楽を聴いてるでしょ。僕も自分の世代とは離れたものを聴いてるんです。だから僕とエタの時代、それからROYくんとエタの時代、その何十年の差は僕らがここに並んで座ることで、なくなるんですよ。で、これは僕の妄想だけど、多分キース・リチャーズがここにいてもおんなじ話ができると思うんです。そんで多分もっと若い中学生くらいの子が「エタのこのアルバム最高なんだよ」って普通に出してきてもおかしくないと思う。
ROY そう思います。
ヒロト で、その子たちはきっと今ヒットしてるものに興味がないんだよ。それがいいことかどうかはわからないよ? ヒットしてるものを、みんなが聴いてるから僕も聴かなきゃって思う心理はさ、みんなと仲良くしようという当たり前のことだから。俺たちにはそれが欠けてるわけ。問題もあるわけなんだよ(笑)。
ROY あはははは(笑)。
ヒロト でも友達は少なかったかもしれないけどさ、今こういうつながりがあるわけだから。僕はこれで良かったと思っているんです。
パンクがどんなふうに日本に紹介されたか
──さて、ヒロトさんはどんなレコードを持ってきてくださったんですか?
ヒロト 古い音楽の話はROYくんに任せることにして(笑)、僕は今日は違うテーマで持ってきた。僕は自慢ができることが1つあるの。それは自分の中学生時代に、リアルにパンクを体験したってこと。だからパンクのレコードを持ってきたんだ。
ROY すごいですねこれ。
ヒロト どんなふうにパンクロックが日本に紹介されてて、僕らがそれを受け止めていたかっていう証拠がここにいっぱいあってさ。この帯の文字。これにしびれたんだよ。レコード屋さんでさ、少ない小遣いで1カ月に1枚か2枚しか買えないときに、ジャケットと、帯の文字にやられて選ぶんだよ。で、「しっとりとした大人のムード」なんて書いてあるレコードは無視して(笑)、そんで、こういうさ、血が飛び散ったような文字でさ、「勝手にしやがれ」って書いてあってさ。「処女アルバム、犯すのは君だ!!」って書いてあったら、犯してやろうと思うじゃない!
ROY あはははは(笑)。
ヒロト もちろん童貞なんだけど(笑)。童貞でさ、彼女もいないしモテない中学生がこれを見てドキドキするんだよ。そしてお母さんやお父さんに隠れてこれを持って帰るんだよ。全部読むよ。(THE CLASH「白い暴動」を手にとって)「ロンドンは燃えている! 遂に姿を現したバイオレンス・パンクの王者、ザ・クラッシュ。ロンドン・スラムの怒れる若者たちがひたすらアナーキーにロックンロール、ロックンロール、ロックンロール……ギ、ギ、ギャオー!」「要するにロックンロールなのである。一切の思いいれが削り取られた骨組みだけのヘヴィ・メタリックなロックンロールが、うなりを上げて疾走している。彼らは火を吐かない、血も吐かない。ただ、毒を吐く」って。正しい! この文章を書いた人は正しい!
ROY あはははは(笑)。
ヒロト 買うだろ。
ROY 感じたままにガーッと書いてるんでしょうね。
ヒロト これもう小冊子1冊分くらいのさ(笑)、情報がこの帯にぎっしり詰まっていてさ、これにやられたんだ。今、この“熱”を若い人たちに知ってほしい。
意味はなく熱だけしかない
ROY この、THE DAMNEDのやつもすごい。
ヒロト そう、「セックス・ピストルズ、なにするものぞ!」って書いてあるんだよ。「“悪”(ワル)の権化“ダムド”遂に日本上陸!!」。この帯は最初のやつで、このあとスティッフ・レコードのマークが付いた帯に変わるんだけど、そのときは「セックス・ピストルズ、クラッシュと並ぶ」って書いてあるんだよね。同等なバンドになってる。最初だけ「なにするものぞ!」って書いてあるの(笑)。
ROY 面白いですねえ、これ。
ヒロト レコード会社のプロモーターが勝手に書くんだよね。タイトルも勝手に付けて。やっぱりこの熱なんだよ。
ROY 本当に好きだからこういう文章が出てくるんですもんね。
ヒロト 無茶苦茶だよ。熱だけしかなくてさ、意味はないんだよ。でもこの時代の熱は、この帯にすごく表れていると思う。
ROY パンクもロックンロールもそうだと思うんですけど、振り切った状態で、それこそ音じゃなくても、感情が爆発して表にボーンと出てしまったものが僕はロックンロールだと思うんですよね。だからこの帯もまさにロックンロールだと思う。
ヒロト RAMONESもほら、タイトルは「RAMONES」なのに、国内盤だけ「ラモーンズの激情」。
ROY 激情を感じたんですね、これを聴いて。
ヒロト 「ロックン・ロール革命! これは信じていた君のロック・モラルに対するニューヨーク革命児たちからの宣戦布告だ!!」って書いてあってさ、たまんないよ。これを見ると今でもドキドキする。
ROY 今の若い人たちが見たら笑っちゃうかもしれないけど、愛があって熱がある故にこう表現するしかないってことなんでしょうね。
ヒロト 僕が今こうやって語ってる熱もなんとなくわかる?
ROY はい、わかります。
ヒロト 「こいつちょっとおかしいぞ」「いつものヒロトじゃないぞ」みたいな感じがあると思うのね。でもロックンロールっていうのはそういうものなんだよ。引きこもりの少年をどっかに引きずり出すものだし、おとなしいやつを爆発させるものだし、そしてただ暴れてる奴に正しい武器と攻撃力を与えるものなんだよ。それがロックンロールだし、ロックンロールはいつも能動的に何かを指し示してくれる。だから今、僕はすごくおしゃべりになってるけど、そうなって当たり前なんだよな。
- THE BAWDIES ニューアルバム「1-2-3」 / 2013年1月16日発売 ビクターエンタテインメント
- 「1-2-3」初回限定盤
- 「1-2-3」初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / VIZL-516
- 「1-2-3」通常盤[CD] 2800円 / VICL-63991
- アナログ盤[CD] 2800円 / SEEZ RECORDS / SEZ-3025
CD収録曲
- DANCE THE NIGHT AWAY
- LONELY MAN
- ROCK ME BABY
- I WANT YOUR LOVE AGAIN
- LEMONADE
- LISTEN
- TAKE A CHANCE
- RED ROCKET SHIP
- SHA LA LA
- CAN'T STOP GROOVIN'
- SING YOUR SONG
- 1-2-3(初回盤限定ボーナストラック)
初回限定盤 特典
- ボーナストラック「1-2-3」収録
- 限定DVD「Recording movie : a Day in 1-2-3」(45分収録)付属
- 全国ツアー第2弾発表公演のチケット先行抽選予約シリアルナンバー封入
- 特色エンボスのスペシャルパッケージ仕様
- ザ・クロマニヨンズ ニューアルバム「YETI vs CROMAGNON」 / 2013年2月6日発売 アリオラジャパン
- 「YETI vs CROMAGNON」初回限定盤
- 「YETI vs CROMAGNON」初回限定盤[CD+DVD] 3675円 / BVCL-30008~9
- 「YETI vs CROMAGNON」通常盤[CD+DVD] 3059円 / BVCL-489
- 「YETI vs CROMAGNON」アナログ盤 3059円 / BVJL-6
CD収録曲
- 突撃ロック
- 黄金時代
- 人間マッハ
- 涙の俺1号
- チェリーとラバーソール
- 団地の子供
- ホッテンダー
- 日本の夏ロックンロール
- 炎
- ヘッドバンガー
- 南から来たジョニー
- 燃えあがる情熱
初回限定盤DVD収録内容
- 燃えあがる情熱(スタジオライブ)
- 南から来たジョニー(スタジオライブ)
- 炎(スタジオライブ)
THE BAWDIES(ぼうでぃーず)
ROY(Vo, B)、TAXMAN(G, Vo)、JIM(G)、MARCY(Dr)によって2004年1月1日に結成。リズム&ブルースやロックンロールをルーツにした楽曲や熱いライブパフォーマンスが各地で噂を呼ぶ。2009年4月に発表したメジャー1stアルバム「THIS IS MY STORY」は第2回CDショップ大賞を受賞。2011年11月には初の日本武道館公演を成功に収めた。2013年1月に4thアルバム「1-2-3」をリリースし、同年2月より横浜アリーナ、大阪城ホール公演を含む59公演の全都道府県ツアーを開催。
ザ・クロマニヨンズ
1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に、2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人組で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを敢行。数々の夏フェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。通算7枚目となるアルバム「YETI vs CROMAGNON」を2013年2月6日にリリースし、2月20日からは「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」をスタートさせる。