ナタリー PowerPush - 甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)×ROY(THE BAWDIES)

ロックンロール対談

ザ・クロマニヨンズとTHE BAWDIES。日本を代表する2組のロックバンドがそれぞれニューアルバムをリリースすることを受け、ナタリーでは甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)とROY(THE BAWDIES)の対談を企画した。

世代の異なる2人の共通言語はロックンロールとアナログレコード。対談の日、2人にはレコードを持参してもらった。2人が交わす奥深いロックンロール談義をぜひ楽しんでもらいたい。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 久保憲司

エタ・ジェイムズの衝撃

──今日はお2人にレコードを持ってきていただきました。ROYさんはどんなレコードを?

左から甲本ヒロト、ROY。

ROY 僕はこれ(エタ・ジェイムズ「Rocks The House」)です。もともと大好きなアルバムなんですけど、最近このオリジナル盤を見つけて買ったんで。

ヒロト これはすごいよね。

ROY すごいですよね。初めてこれを聴いたときに、直感で「これがまさにリズム&ブルースなんだな」って衝撃を受けた1枚で。おそらく彼女的にはブルースを歌ってるつもりだと思うんですけど、歌い方やテンポの取り方のせいでリズムがすごく強調されてて。最近ずっと聴いてるんです。

ヒロト うんうん。

ROY ジャケもすごくて手に包帯してるんですよね。人を殴ったせいなのか。わからないですけど。

ヒロト 荒れてた時期もあるらしいから、手首切ってた可能性もあるし。

ROY ありますよね。エタは本当に振り切れてて、生き方が見えるような、そんな歌声がめちゃめちゃカッコいい。

ヒロト この人はソウルファンには、味わいがないとかギャーギャー激しいだけとかよく言われるけど、そんなことないよ。

ROY ないと思いますね。

左から甲本ヒロト、ROY。

ヒロト 特に日本はさ、ディープブルースのファンがすごく多くて、僕も大好きなんだけど、そういうの好きな人は「エタはやかましい」みたいなことをよく言うのね。でも俺ら“やかまし好き”にはたまらない。

ROY あははは(笑)。僕もそうですね。僕、ロックンロールの入り口がTHE SONICSだったんで。

ヒロト おおー、ええなあ。

ROY だからそれこそ“やかまし好き”というか。それもあって最初にビビッと来た女性シンガーがエタ・ジェイムズだったんですよね。

サム・クックを聴いて歌えなくなった

ROY 今日持ってきたエタもライブ盤ですけど、僕、一番好きなアルバムは、サム・クックのハーレムスクエアクラブのライブ盤(「One Night Stand! Sam Cooke Live At The Harlem Square Club, 1963」)なんですよ。

ヒロト 世代を感じるねえ。

ROY あははは(笑)。

ヒロト 僕も大好きだけど、若い人が特に聴いてるんだ。あれは1980年代に出たんだよね。

ROY 本当にすごいアルバムで。

ヒロト もうあれだけでいい。

ROY はい、あれだけでいいです。あそこに全部詰まってると思いますね。

ヒロト すごすぎてお蔵入りになったんだよね。レコード会社が「こんなの出したらみんな引いちゃうよ」って。

ROY 僕は最初にソウルミュージックを聴き始めたときに、どれから聴いていいかわかんなくてとりあえずサム・クックを聴いてみたんですけど、オーティス(・レディング)とかに比べて、すっごい歌がうまいんですよね。で、粗さがなくて、1回スルーしてしまったんですよ。なんか物足りないなあと思って。でもあとからあのライブ盤を聴いたときに「いや、これはすごい!」って。ゴスペルそのものというか。

甲本ヒロト

ヒロト 僕はあのアルバムを聴いてから、1カ月近く声が出なかった。

ROY えー!

ヒロト 歌えないの、怖くて。こんなものが世の中に存在するんだから、もうほかの歌手はいらないと思って。僕なんかしゃしゃり出てって人前で歌っちゃいかんと思って、歌えなかった。

ROY 本当にサム・クックは神様の域だと思います。リトル・リチャードもオーティス・レディングももちろんすごいんですよ。ああなりたいって思う。でもサム・クックは憧れることさえできないくらいすごくって。

ヒロト 僕は一生のうちに一晩でいいからあんなふうに歌えたら、死んでもいいと思った。

ROY 本当にそうですよね。

ヒロト でもそれができないからまだ生きてんの。よかった、長生きできて(笑)。

THE BAWDIES ニューアルバム「1-2-3」 / 2013年1月16日発売 ビクターエンタテインメント
「1-2-3」初回限定盤
「1-2-3」初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / VIZL-516
「1-2-3」通常盤[CD] 2800円 / VICL-63991
アナログ盤[CD] 2800円 / SEEZ RECORDS / SEZ-3025
CD収録曲
  1. DANCE THE NIGHT AWAY
  2. LONELY MAN
  3. ROCK ME BABY
  4. I WANT YOUR LOVE AGAIN
  5. LEMONADE
  6. LISTEN
  7. TAKE A CHANCE
  8. RED ROCKET SHIP
  9. SHA LA LA
  10. CAN'T STOP GROOVIN'
  11. SING YOUR SONG
  12. 1-2-3(初回盤限定ボーナストラック)
初回限定盤 特典
  • ボーナストラック「1-2-3」収録
  • 限定DVD「Recording movie : a Day in 1-2-3」(45分収録)付属
  • 全国ツアー第2弾発表公演のチケット先行抽選予約シリアルナンバー封入
  • 特色エンボスのスペシャルパッケージ仕様
ザ・クロマニヨンズ ニューアルバム「YETI vs CROMAGNON」 / 2013年2月6日発売 アリオラジャパン
「YETI vs CROMAGNON」初回限定盤
「YETI vs CROMAGNON」初回限定盤[CD+DVD] 3675円 / BVCL-30008~9
「YETI vs CROMAGNON」通常盤[CD+DVD] 3059円 / BVCL-489
「YETI vs CROMAGNON」アナログ盤 3059円 / BVJL-6
CD収録曲
  1. 突撃ロック
  2. 黄金時代
  3. 人間マッハ
  4. 涙の俺1号
  5. チェリーとラバーソール
  6. 団地の子供
  7. ホッテンダー
  8. 日本の夏ロックンロール
  9. ヘッドバンガー
  10. 南から来たジョニー
  11. 燃えあがる情熱
初回限定盤DVD収録内容
  • 燃えあがる情熱(スタジオライブ)
  • 南から来たジョニー(スタジオライブ)
  • 炎(スタジオライブ)
THE BAWDIES(ぼうでぃーず)

THE BAWDIES

ROY(Vo, B)、TAXMAN(G, Vo)、JIM(G)、MARCY(Dr)によって2004年1月1日に結成。リズム&ブルースやロックンロールをルーツにした楽曲や熱いライブパフォーマンスが各地で噂を呼ぶ。2009年4月に発表したメジャー1stアルバム「THIS IS MY STORY」は第2回CDショップ大賞を受賞。2011年11月には初の日本武道館公演を成功に収めた。2013年1月に4thアルバム「1-2-3」をリリースし、同年2月より横浜アリーナ、大阪城ホール公演を含む59公演の全都道府県ツアーを開催。

ザ・クロマニヨンズ

ザ・クロマニヨンズ

1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に、2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人組で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを敢行。数々の夏フェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。通算7枚目となるアルバム「YETI vs CROMAGNON」を2013年2月6日にリリースし、2月20日からは「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」をスタートさせる。