ナタリー PowerPush - 平野綾

より“vivid”に より“私っぽく”

平野綾を一番かわいく撮った鮮やかなモノクロ写真

──“vivid”ってサウンドは明快なんだけど、実はアートワークは謎かけになっている気がしているんです。アルバムタイトルは“vivid”=色鮮やかな。で、実際にカラフルな12曲が収録されているのに、なんでファンタジスタ歌磨呂さんはモノトーンのアー写とジャケ写を作ったんだろう?って。

平野綾

実はタイトルとアートワークができあがる順番が逆だったんです(笑)。以前歌磨呂さんへ挨拶させていただいたときに「じゃあ今度お仕事しましょう」って話をしていて、今回その念願がようやく叶ったんですけど、タイトルが決まる前に歌磨呂さんがラフを描いてきてくださって。そのモノクロのビジュアルを見たときに「このモノクロのキャンバスにならどんな色でも付けられるんじゃないか」「聴く人によってどんな色でも当てはめられるんじゃないか」って、すごく色鮮やかでキレイなイメージが広がったので「vivid」っていうタイトルにしたんです。歌磨呂さんとは方向性などの打ち合わせはほとんどせずに、「最近何か楽しいことありました?」みたいな世間話しかしてなかったんですけどね(笑)。

──にもかかわらず、ファンタジスタ歌磨呂という人は、平野さんのイマジネーションを喚起するモノクロのデザインを提案してきた?

ええ。以前の私は音楽に限らず、どんなお仕事に対しても悪い意味で生真面目だったというか「こうしなきゃいけない」って決め付けていて。例えばこういう取材にはあらゆる質問を想定した上で、その答えを全部用意してから臨んでいましたし。それでもその場のノリで答えちゃったりすることもあるんですけど、そうすると「何、感覚で答えちゃってんの」って自分のことを許せなくなっちゃったりして(笑)。でもコントローラの話もそうなんですけど、今はファンの方のリアクションとか、取材中や打ち合わせ中に聞いたお話とか、いろいろな投げかけの中から私が直感的に選んだものが平野綾っぽければそれでいいじゃんって。歌磨呂さんがあの世間話の中から、そうやって直感に従うことを楽しんでいる今の私のことをちゃんと汲み取ってくださったのはホントにうれしかったですね。……あっ、あと「平野綾を一番かわいく撮る自信がある」って言ってくださったのもうれしかったです(笑)。

──それはどう考えてもうれしいですよね(笑)。実際、アー写もジャケ写もかわいいし。

ありがとうございます(笑)。そのお話を聞いたときとても興味が湧いて、実際に現場で「どうすればかわいくなりますか」「こういうのはどうですか」とやりとりを進めながら作ったのがあのアーティスト写真と、ジャケット写真なんです。

必要じゃなかった仕事の経験は一切ない

──さっき言っていた“平野綾っぽさ”って言語化できます?

我がことながらよくわかってはいないですね(笑)。「平野綾とはこういうもの」っていう絶対的な何かがあるわけじゃなくて、何か言葉やアイデアを投げかけられたとき「あっ、それ平野綾っぽい!」と思い浮かぶ感じなので。もし何か絶対的なものがあるとすれば、10歳の頃にお仕事を始めてから今までで、“必要なかった”って思う仕事の経験が1つもなくて。私の中では全部があってよかったものだし、絶対に必要なものなんです。その必要なものの上に立っている今の私が選ぶものはちゃんと平野綾らしいものだと信じているし、だから今回のアルバムもまさにそういうものになったんだろうなって思っています。これまでの歴史が詰まったさまざまな色の曲が入っているんだけど、ちゃんと平野綾のアルバムにまとまったな、って。

──確かにどの曲にも平野綾っていうハンコが押されてますよね。ちなみにどのタイミングで「平野綾っぽいから大丈夫」っていう確信を得られるようになりました?

2年くらい前ですね。なぜそう思いだしたのかはわからないんですけど、2年前の5年くらい前、今から7年くらい前から「5年後のタイミングで変わらなきゃいけない」っていうことを決めていて(笑)。

──7年前ってそれこそ「ハルヒ」や「らき☆すた」の頃。声優としてブレイクしたばかりの頃ですよね?

だからなんでそういう時期に「5年後に変わりたい」と思ったのかはホントに謎なんですけど(笑)、声優としてちゃんと仕事をした上で新しいチャレンジをしたいなら、今から5年後くらいには行動を起こさなきゃいけないなっていう気がしていたんですよね。で、実際にそこから5年の時間をかけて、ミュージカル、ドラマ、映画と、新しいお仕事をいただけるようになったりして。だから私の勘って意外と当たるのかもなって気はしています(笑)。

──その平野さんの勘は次は何をするべきだって囁いてます?

これまでバラードみたいな歌い上げ系の楽曲って苦手だったんですけど、去年「レ・ミゼラブル」に出させていただいて学んだことで、その苦手意識を少し克服できた気がしていて。しかも今、4月から始まるミュージカル「レディ・ベス」の稽古に入っていることもあって、耳が“オーケストラ耳”になってるので、音楽活動の範囲をこれからもっと広げてみたいなあって思っています。

──次回作ではオーケストラやビッグバンドをバックに歌うことになるかもしれない?

そういう新しさや面白さをお見せしてもいいなって思っています。今なら、そういうサウンドにしてもちゃんと“平野綾っぽい”作品になってくれると思うので。

ニューアルバム「vivid」 / 2014年2月19日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [CD+DVD] / 3800円 / UMCK-9658
通常盤 [CD] / 3059円 / UMCK-1471
CD収録曲
  1. vivid(inst)
  2. Let's Go!
  3. Up To Date
  4. Promise
  5. TOxxxIC
  6. ダブル
  7. 星屑ガランドウ
  8. のんびりしましょ
  9. Logic Girl
  10. もっともっと
  11. Keep On Runnin'
  12. 光の果てに
初回限定盤DVD収録内容
  1. Aya Hirano Special LIVE 2013 -Promise-
    • TOxxxIC~スターゲイズ・ラブ
    • DIFFUSION~FRAGMENTS
    • 無防備なリフレイン
    • Sunday~BRIGHT SCORE
    • LOOP~たからもの~Up To Date~LOOP
    • PizzzzzzzA!!!!!!!
    • Promise
    • 光の果てに
    • 星屑ガランドウ
    • バックステージ映像
  2. ジャケット撮影時のオフショット映像
平野綾(ひらのあや)

1987年、愛知生まれの声優・歌手。1998年に児童劇団に入団し、ドラマやCMに出演。2006年に話題アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の涼宮ハルヒを演じ、大ブレイクを果たす。その後も「DEATH NOTE」「らき☆すた」「NANA」といった話題作に出演し、アニメ界を代表する存在に。その一方で2006年にはシングル「Breakthrough」でCDデビューも果たす。以来、ベストアルバム「AYA MUSEUM」まで10枚のシングルと、2枚のオリジナルバム、1枚のベストアルバムをLantisよりリリースし、2012年にユニバーサルシグマに移籍。ANSWRらとともに制作した“コレクティブアルバム”「FRAGMENTS」や、ブリトニー・スピアーズのクリエイティブチームや八王子Pとともに制作したシングル「TOxxxIC」などの話題作をリリース。また2013年にはシングル「Promise」を、2014年2月にはオリジナルアルバム「vivid」を発表した。