ナタリー PowerPush - 平野綾
より“vivid”に より“私っぽく”
平野綾のもっている2.5次元っぽさ
──作詞家陣にも年齢感を意識してほしいっていうオーダーを?
そうですね。かわいくなりすぎたり、若すぎたりしないように、っていうお願いはさせていただきました。
──そして実際に26歳らしい言葉が集まった。「Logic Girl」の「もうスリルなんかより 欲しいのはスキルの方」っていう詞はまさにそうだし、「Let's Go!」の「現状維持なんて興味はない」もそう。維持すべき現状すらない新人には歌えない、キャリアを積んだ人の言葉ですもんね。
あと「ダブル」も今の私だから歌える曲なんですよ。
──確かにアダルトな詞ですね。ド頭から「安いタバコふかしてみても 目に染みて泣けるだけさ」だし(笑)。ただ平野さんは喫煙者では……。
ないですね(笑)。この曲は場末のバーで歌っている女が実はスパイで、自分目当てで店に来る客のことを嗅ぎまわってる……っていう世界を歌ってみたいってお願いをして作っていただいていて。
──ただ平野さんはスパイでは……。
ないですね(笑)。「ダブル」はキャラソンのつもりなんです。この曲の前に入っている「TOxxxIC」は「FRAGMENTS」と同じ作り方。「平野綾にこれをやらせてみたら面白いよね」というコンセプトで作ったシングル曲だったので、単体でアルバムに入れると浮いちゃう気がして。ただ「TOxxxIC」も今の年齢だから歌えるラブソングではあるので、アルバムに収録したかった。だからちゃんとアルバム全体のカラーに馴染ませるためにちょっとキャラソンっぽい「ダブル」を次曲に置いてみたんです。この2曲を並べたら、その流れの中に私らしさが見えてくるかなって。
──キャラクターを演じたり、キャラクターソングを歌ったりするのも平野綾らしさのひとつですもんね。
ええ。「TOxxxIC」「ダブル」の流れの中で平野綾の持っている2次元っぽさ、2.5次元っぽさを表現できたかなって思っています。しかも「ダブル」のあとには私が詞を書いた「のんびりしましょ」が続くのもいいな、って思っていて。
“平野綾のコントローラ”を握る万単位の人々
──フィクショナルな「ダブル」のあとに、自らの言葉を歌う「のんびりしましょ」が続くことで、2.5次元だった平野綾がだんだん3次元的存在になっていく感じ?
そうそうそう(笑)。それに1曲目から6曲目までが「押せ押せ」な展開なので、ここで素の私が出てきて「のんびりしましょ」って自分の言葉で歌ってみたらアクセントになるし、皆さんホッとひと息つけるかなって思って書いてみました。ただ、この曲も実は“今の平野綾”らしくて。「アルバムの中で1曲作詞をしてください」って言われたとき、以前の私だったら「もっともっと」みたいなパンクナンバーを選んでいたと思うんです。
──ライブ感を大切にしていたし、ファンもそれを望んでいたわけですしね。
だからこそボサノバの「のんびりしましょ」の詞を書いたらビックリするだろうし、面白がってもらえるかなって(笑)。キャラソンっぽい「ダブル」を歌う私も、「のんびりしましょ」で理想の休日のことを歌う私も、どっちも紛れもなく今の私自身だし、アルバムを聴いてくださる方の中には演じる私に期待してくださっている方もいれば、素の私を期待してくださっている方もいると思うので、その両方にお応えできたらいいなって思ったんです。 というのも、なんかここ数年「ファンの方に平野綾のコントローラを握っていてほしい」っていう感覚があって。
──「平野綾のコントローラ」?
一緒に歩いて行くためにファンの方にも平野綾の舵を取ってほしいんです。でも、今お話した通り“今の平野綾”にはいろいろな面があるから、このアルバムではできるだけ、そのいろいろな面を並べてみたくて。恋の駆け引きを歌った「TOxxxIC」も、女スパイの「ダブル」も、私の素の部分を感じてもらえる「のんびりしましょ」も全部並べて、どれか1つでも「面白いじゃん」って思っていただけたら、平野綾のコントローラを握って「こっちの方向はどうだろう?」って投げかけをしてほしいなって思っているんです。
──繰り返しになるんですけど、疲れません?(笑) 平野さんの場合、ファン=万単位の人たちが自分を操るコントローラを握ることになるわけですよね。
えっ!? そういうのって面白くないですか?
──できれば誰の指図も受けたくないなあ、と(笑)。
そもそもこの仕事が大好きだからやっているので、イヤだって思うことはないですね。それにせっかくこういう振り幅で活動しているんだから、できることならもっといろいろな世界を見てみたいし、もっともっと楽しくしたいですから。でも私1人の力ではなにもできないので、皆さんからたくさん球を投げてもらいたいんです。そうすればきっと新しいアイデアが生まれるし、新しいところに行けるはずですから。
- ニューアルバム「vivid」 / 2014年2月19日発売 / UNIVERSAL SIGMA
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3800円 / UMCK-9658
- 通常盤 [CD] / 3059円 / UMCK-1471
CD収録曲
- vivid(inst)
- Let's Go!
- Up To Date
- Promise
- TOxxxIC
- ダブル
- 星屑ガランドウ
- のんびりしましょ
- Logic Girl
- もっともっと
- Keep On Runnin'
- 光の果てに
初回限定盤DVD収録内容
- Aya Hirano Special LIVE 2013 -Promise-
- TOxxxIC~スターゲイズ・ラブ
- DIFFUSION~FRAGMENTS
- 無防備なリフレイン
- Sunday~BRIGHT SCORE
- LOOP~たからもの~Up To Date~LOOP
- PizzzzzzzA!!!!!!!
- Promise
- 光の果てに
- 星屑ガランドウ
- バックステージ映像
- ジャケット撮影時のオフショット映像
平野綾(ひらのあや)
1987年、愛知生まれの声優・歌手。1998年に児童劇団に入団し、ドラマやCMに出演。2006年に話題アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の涼宮ハルヒを演じ、大ブレイクを果たす。その後も「DEATH NOTE」「らき☆すた」「NANA」といった話題作に出演し、アニメ界を代表する存在に。その一方で2006年にはシングル「Breakthrough」でCDデビューも果たす。以来、ベストアルバム「AYA MUSEUM」まで10枚のシングルと、2枚のオリジナルバム、1枚のベストアルバムをLantisよりリリースし、2012年にユニバーサルシグマに移籍。ANSWRらとともに制作した“コレクティブアルバム”「FRAGMENTS」や、ブリトニー・スピアーズのクリエイティブチームや八王子Pとともに制作したシングル「TOxxxIC」などの話題作をリリース。また2013年にはシングル「Promise」を、2014年2月にはオリジナルアルバム「vivid」を発表した。