音楽ナタリー Power Push - 平井大×ジェイク・シマブクロ
若き異才、ウクレレの魔術師と語る
ネイティブな人だと思いましたよ
──では平井さんは、ウクレレを曲に使用する場合、どういう効果を求めているのですか?
平井 直感的なものですね。このフレーズにウクレレが入ったらよさそうとか。いろんな楽器を使っていますが、ルーツにはウクレレがあるので、いつも弾くと自分にすごくなじんでいる感覚があります。曲作りの際も弾いていると、とてもナチュラルな気分になれる。だから特に、こういう効果を求めてウクレレを使うということはないです。もっと適当なことを言っちゃえば、スタジオにウクレレがあれば使うし、なければほかの楽器で代用しちゃうし。あんまり深いことは考えていないんです(笑)。
ジェイク 今回のアルバムのタイトルトラック「Life is Beautiful」とか、本当にアレンジがすばらしい。アコースティック楽器がメインとなっていますが、それぞれがただ個性を主張するのでなく、融合しながらも、お互いのいい部分を引き出し合っている。とても完成度の高い楽曲だなって思いました。そのほかの楽曲もキャッチーかつメロディアス、そして洗練されているものばかりで、ファンタスティック! 大好きなアルバムです。また英語の発音もきれい。最初聴いたときは「本当に彼は日本人なのか?」ってスタッフに尋ねたほどですから(笑)。
平井 母親が英語を話せる人だったので、その影響が大きいのかもしれないですね。
ジェイク 本当にネイティブな人だと思いましたよ。
──一方ジェイクさんは、ほかの楽器のパートもすべてウクレレ1本で表現していますね。
ジェイク 僕が大切にしているのは、メロディとフィーリングですね。おっしゃる通り、ウクレレがすべての役割を果たさなくてはいけないわけだから。どうやってアレンジするのか気にしながら曲を作っています。
平井 ハワイにはソロのウクレレ奏者っていっぱいいるけど、世界に通用する方法でやっていこうとする人って少ない気がするんです。だからジェイクさんの表現方法には、本当に感心させられますね。確立されたスタイルだと思う。
ジェイク 僕も平井さんみたいにうまく歌えたら、そんなことする必要がなかったのですが。ウクレレしかできないので。でも2人ともウクレレがずっと好きな楽器であることは、曲を通じて伝わってくると思います。僕はそういう思いが伝わる音楽を聴くのが大好きなんです。
──お二人は使用するウクレレに何か特別なカスタマイズはされているんですか?
平井 特にそういうものはないですね。
ジェイク ナチュラルなフィーリングで弾くことが一番大切だと思います。あとは伝統や歴史も尊重すること。僕の音楽って、そこからかけ離れたものって思われがちなんですけど、ちゃんと敬意を持っていつも演奏しています。また、僕が使用しているのはKamakaという会社のものなんですけど、今年で創業100周年を迎えるんです。長い間愛されている歴史的なメーカーのウクレレに、自分が何かカスタムしようだなんて考えたことがない。結局、ナチュラルな気分で弾いていたら、自然と自分らしいスタイルが確立されていくものだと思う。流れに身を任せる、という感じですかね。
シンプルさを追及した新作
──それぞれの最新作にも、ナチュラルなウクレレのサウンドを収めているんですね。
平井 今回のアルバムはシンプルな音にしたいという気持ちが根本にあって完成させたものなんです。以前は自宅でパソコンなどを駆使して、アレンジをある程度まで決めたうえでレコーディングしてきたんですけど、今回はスマートフォンの録音機能にギターのフレーズを入れておく程度でスタジオに入ったんです。そこでメンバーとアイデアをシェアして、ああでもない、こうでもないとセッションしながら作っていったという感じ。曲を作っているといろんなアイデアが浮かんで、それを入れたくなるんですよ。でも今回はそこを我慢して、メッセージとメロディがストレートに伝わるアルバムにしたつもり。結果ギターとボーカルだけでも成立できる、シンプルな10曲が収録できたと思っています。
──アルバムにおけるウクレレの役割ってどんなものでしたか?
平井 レコーディング段階では特に意識して弾いたということはないんですけど、完成したものを聴いてみると、ウクレレが入ることで平井大サウンドになるんだなって。自分の音楽の核になっていて、重要な役割を果たしてくれているんだなと改めて感じることができました。
──ジェイクさんは9月28日に日本デビュー15周年記念のオリジナルアルバム「ナッシュビル・セッションズ」をリリースされます。
ジェイク このアルバムは平井さんの作り方と似ている部分がありますね。今回は何もアイデアを持たずにナッシュビルのスタジオに入ったんです。全部で6日間のレコーディング期間があったんですけど、初日はひたすら友人のミュージシャンたちとジャムセッションを重ねていきました。今までそういう経験がなかったから、とても楽しかったです。また、僕らもあまり作り込みすぎたサウンドにならないよう心がけて作っていました。1曲に関して最大4回までしかやり直しをしないとか、ルールを設けて。とにかくライブ感を大切にしたアルバムです。
平井 ライブ感を出した音が、結局一番いい音だったりするんですよね。
友達、今度紹介しましょうか
──今回の対談で、お二人とも同じ感覚を持ってウクレレや音楽と向き合っている印象を受けました。一緒にセッションしたら面白いかもしれないですね。
平井 どうなんだろう?(笑) 今は全然イメージが湧かないですが、2人でやるならウクレレのみでシンプルにセッションするのがいいのかな。
ジェイク 確かに。でも、僕はウクレレしか弾けない人間なので、偏ったアイデアしか出せないかもしれないですが(笑)。あ、そうだ。1つ聞きたいことがあって。今回の平井さんのアルバムでセッションしている人は日本の方ですか?
平井 はい。
ジェイク すばらしいプレイヤーばかりですね。ナッシュビルのスタジオプレイヤーかと思いました。皆さん、音楽感覚が研ぎすまされています。
平井 みんな僕の友人ですよ。
ジェイク すばらしいお友達をお持ちなんですね。
平井 今度、紹介しましょうか?(笑) スタジオもあるんで。
ジェイク ぜひ!
──次のアルバムは、平井さんのプロデュースで「ジャパン・セッション」を作ってみては?
ジェイク それ、面白いかもしれないですね!
- 平井大 ニューアルバム「Life is Beautiful」 / 2016年6月15日発売 / avex trax
- CD+DVD 4310円 / AVCD-93422/B
- CD 2700円 / AVCD-93423
CD収録曲
- Faraway
- Life is Beautiful
- A Good Day
- I’m Yours
- Locals Only
- tonight
- See you at the ocean
- Stay
- Everything is Music
- Stay by my side
DVD収録内容
- Life is Beautiful(Music Video)
- A Good Day(Music Video)
- Live Tour 2016 ~LOCALS ONLY~ at EX THEATER ROPPONGI
- Faraway
- Ocean Wave
- Surf's Up
- Surf Time
- Any day
- Beautiful
- Last September
- また逢う日まで
- Locals Only
- Summer Queen
- Kiss Me Baby
- Slow & Easy
- For The Future
- ジェイク・シマブクロ ニューアルバム「ナッシュビル・セッションズ」 / 2016年9月28日発売 / Sony Music Japan International / 3000円 / SICX-62
- ジェイク・シマブクロ「ナッシュビル・セッションズ」
収録曲
- へミオラ・ブルース
- シックス - エイト
- マン・オブ・マッド
- ギャロッピング・シーホーセズ
- モータウン
- ケルティック・チューン
- トライトーン
- 青の俳句
- バラッド
- エフ・マイナー
- キラウェア
<日本盤ボーナストラック>
- アコースティック・インタールード
- ありがとう
平井大(ヒライダイ)
1991年5月3日東京都生まれ。3歳のときに祖母からもらったウクレレがきっかけで音楽に興味を持つ。2011年には自身の楽曲「ONE LOVE ~Pacific Harmony~」がイベント「ホノルルフェスティバル」の公式イメージソングに抜擢され注目を集め、2011年5月にはデビューミニアルバム「OHANA」を発表。「SUMMER SONIC」「ALOHA YOKOHAMA」などさまざまな大型フェスに出演を果たした。2013年にはミニアルバム「Dream」でメジャーデビューし、翌2014年にはメジャー移籍後初のフルアルバム「ALOOOOHANA!!」をリリース。2016年6月には約1年ぶりとなるニューアルバム「Life is Beautiful」を発表した。
ジェイク・シマブクロ
1976年11月3日生まれ、ハワイ州ホノルル出身。4歳よりウクレレの演奏をスタートし、1998年にはPURE HEARTのメンバーとしてデビュー。2002年からはソロアーティストとしての活動を開始した。同年4月にはSony Music Japan Internationalと契約を交わし、7月にソロデビュー作にあたるミニアルバム「サンデー・モーニング」を発表。2016年に日本デビュー15周年を迎え、9月28日にはアメリカ・ナッシュビルのミュージシャンたちとレコーディングした記念アルバム「ナッシュビル・セッションズ」のリリースを控えている。