平井大、躍動の2020年を語る|今を大切に、感じたままに

「THE FIRST TAKE」はいつも通り

──企画モノといえば、話題を呼んだYouTubeの「THE FIRST TAKE」からの楽曲も10月に配信されましたね。どうでしたか? あの企画は。

いつも通りのことなんですよね。一発録りで楽曲が完成することが多いので。ただ映像クルーの方々が入っているだけという違いでした(笑)。

──そして11月に入ると、リリース延期されていた楽曲「Holiday」が配信されました。ヒップホップのテイストを交え、過ぎ去った季節の甘い記憶が蘇ってくるナンバーですね。

ウクレレをメインに、ヒップホップのビートを効かせて、夏っぽい仕上がりになっていますよね。SNSでは、のんびりした休日に聴きたくなるという声をいただいて、多くの皆さんに届いた1曲になったのかなって。リリース時期をずらしてよかったと思っています。

──以降は、冬を感じさせる楽曲の発表が続きますね。平井さんは、季節を意識して楽曲を制作することはありますか?

取り入れる楽器を変更させるとかはあるのですが、基本的に季節を意識することは少ないですね。ときどき、寒くなると「おでんが食べたい」とか歌詞に入れたくなりますけど(笑)。自分の中で持続的に好きなこと、景色を表現するようにしています。

──夏の楽曲はサーフミュージックなど洋楽のエッセンスを感じるものが多いですが、「ここにあるもの」や「冬の予感」は邦楽の影響を感じさせる雰囲気がありますよね。

この2曲は、自分の生活圏に近いサウンドになっていると思います。「ここにあるもの」は、自分が生まれ育った街=東京の日々移り変わる景色の中で、変わらないものや思いを表現できた気がするし、「冬の予感」に関してはオフシーズンの海へ向かう最中のクルマから見える風景、そこに吹き込んでくる乾いた風を表現できたのかなって思います。

連続配信の締めくくりはスターバックスとのコラボソング

──そして、このプロジェクトの締めくくりを飾るのが「Starbucks, Me and You」。これはタイトル通り、スターバックスとのコラボソングですよね。

僕にとって、コーヒーはスターバックスと言えるくらい生活に欠かせないですし、またツアーなどで家を離れる時間が多い自分にとって、変わらない味を楽しむことができて心を和ませてくれる“ホーム”のような存在なので、今回のコラボレーションのお話をいただいた時は純粋にうれしかったですね。しかも“夏”ではなく“冬”の季節に合う楽曲を作っていただきたいというリクエストをスターバックスさんからいただいて、これをきっかけに新しい自分のイメージを作るきっかけも与えてくださったのかなって。

──クリスマスをはじめ、ホリデーシーズンを暖かく盛り上げてくれそうな楽曲に仕上がっていますね。

この楽曲は、スターバックスのお客さんやスタッフの方々から寄せられた、4000近くにおよぶスターバックスホリデーにまつわるメッセージやキーワードを取り入れて制作したものなんですけど、ジンジャーブレッド ラテが人気なんだなとか(笑)、皆さんがスターバックスで感じる幸せな時間をこの楽曲で表現できたのかなって思います。

──ジンジャーブレッド ラテを飲みながら聴くと、心と体がポカポカして満たされましたよ。

実はスターバックス ラテしか頼まない人間でして(笑)。でも近いうちに試したいと思います!

平井大

──それにしてもタイトルがストレートですよね。

(笑)。最初は「Milk&Coffee」でいいのかなと思っていたんですけど、スタッフの皆さんの尽力のおかげでタイトル使用許可をいただきました。タイトルに関しては、あんまり難しい言葉を使いたくなくて、それを見ただけでどういう楽曲なのか、想像付くものを付けたいと常に思っているんです。この楽曲で「スターバックス」という名前を入れることができたおかげで、リスナーの方々がより風景を想像しやすくなったのかなって。

──この楽曲で今回の配信プロジェクトは終了しました。やり遂げてみての感想は?

より世の中の流れを見て楽曲を発表することができたのかなって。結果、どの楽曲も皆さんの生活になじむものになった気がします。

大切なのはどういうカタチでも音楽が届くこと

──平井さん自身はアナログ派とおっしゃっていましたが、今後の楽曲発表の方法についても考えるきっかけになったのでは?

平井大

正直なところ、なんでもかんでもCDにして発表しなくてもいいのかなと思っています。僕の場合はCDとデジタルのセールスに大差はないですし。確かに、CDで育った人間にとっては寂しいことですけど、時代の流れで変化することは必然ですから。またアナログな人間が最先端な手法で作品を発表するのも面白いのかなって思います。

──ではこの一連の楽曲もCD化する予定はないのですか?

CDとして発表する意味を見い出すことができたら発表するかもしれません。僕はサステナブルを大切にしているので、すぐに使い捨てされるようなものを次々と生産したくない。フィジカルとして発表するからには、多少金額が高くなっても、リスナーの皆さんが持ち続けたいと思っていただける“付加価値”を加えて届けたいと考えています。CDは、今後そういう“記念品”的なものとして残っていくのかなと思いますね。

──またライブに関しても、2020年はオンラインが主流になりました。このことによってライブに対する姿勢にも変化があったのでは?

Instagramを通じてライブをすることが増えたことによって、リスナーの皆さんの声がちゃんと僕に届くようになった。それを反映させながらパフォーマンスを進行させるのは楽しかったですね。フェイス・トゥ・フェイスでのライブだと、笑顔を見せているけど、その心の奥にどんな感情を抱えているのかって伝わりづらい。でも、フェイス・トゥ・フェイスも素晴らしいものがある。どちらもどちらで、いい部分、悪い部分があるから、判断しづらいですよね。ただ大切なのは“生”でパフォーマンスをしていることが、どういう形でも皆さんに届くことなのかなって。それが伝わるクオリティの高いパフォーマンスを今後も追求していくだけです。

──2021年はデビュー10年の記念すべき年です。どんな1年にしたいですか?

僕はあんまりアニバーサリーとか気にしたことがなくて。また、今後どうなるか先が見えない状況が続いているから、とにかく目の前にあることを大切にしていくだけ。それを積み重ねることで、自然と未来が見えてくるのかなと思います。

平井大