日向坂46の2ndアルバム「脈打つ感情」が11月8日にリリースされた。
欅坂46(現:櫻坂46)の派生グループである“ひらがなけやき”けやき坂46という特殊な形式で活動をスタートさせた彼女たちは、紆余曲折の中でチームワークを強めてきた。やがて二期生、三期生、四期生と仲間たちも増え、坂道シリーズ第3のグループとしての個性を磨き上げてきた。今作は日向坂46としては2枚目のアルバムとなるが、ひらがなけやき時代のアルバム「走り出す瞬間」も合わせると3枚目。およそ3年ぶりのオリジナルアルバムとなる。
ひらがなけやき時代から“聖母”と称される穏やかなオーラでグループを優しく包み込んできた潮紗理菜は、2ndアルバムのリリース後、12月に神奈川・Kアリーナ横浜で行われる全国ツアー「Happy Train Tour 2023」追加公演をもって日向坂46を卒業する。今回の特集では卒業を目前に控えた潮と、彼女がたっぷりの愛情を持って接している三期生メンバーの山口陽世の2人にインタビュー。コロナ禍の始まりにリリースされた1stアルバム「ひなたざか」から3年、グループの変化と成長の記録と言える新作「脈打つ感情」について語ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 曽我美芽
すべての事柄をポジティブに捉える潮紗理菜
──潮さんと山口さんがお二人でいるときは普段どんな感じなんですか? 先ほどの撮影の際は張り合ったりイジり合ったりしてましたけど(笑)。
潮紗理菜 何人かいるんですけど、特別かわいがっている後輩の1人だと思ってます。私はね?
山口陽世 ありがとうございます(笑)。
潮 先輩後輩という間柄ではあるものの、さっきみたいにイジってきてくれたりとか、ちょっかいを出してきてくれたりとか、そういうのが私はすごくうれしくて。なんだろうな、かわいいなあって思うんです。唯一意地悪したくなっちゃう子かもしれない。
──山口さんは野球経験者としてプロ野球の始球式で本気の投球を見せたり、バラエティ番組でも少しずつ個性を発揮していますけど、まだ底が見えないというか、まだまだ開けてない引き出しがありそうな印象があります。
潮 全然あります! パッと見、スンと立ってたら大人しくてクールな印象があるかもしれないけど、本当はそんなことなくて。めちゃめちゃ甘えん坊だし……すっごい甘々なんです。裏では。そっちのかわいい一面をまだまだ引き出したい。裏のほうがむしろかわいい。
山口 あははははは。
潮 よりね? もっともっとたくさんの人にそれが伝わればいいなと思ってる。
──逆に山口さんから見た潮さんは、どういう先輩ですか?
山口 すべての事柄をポジティブに捉える人です。いろんなときに前向きになれる言葉を教えてくださるので、今までの自分をひっくり返されるような、そんな先輩です。
潮 そうだったんだー。ひっくり返してた?
山口 ひっくり返されました。今日も。
「もうちょっと匂わせてくださいよ~」
──潮さんは卒業を控えているタイミングなので、もっとこうシリアスというか、話しにくい雰囲気だったりもするのかな?と想像していたんですが……いつもと変わらないですね。
潮 そうですね。終わりの時期が見えているから、だったらいつもと変わらない日常を噛み締めておきたいなという気持ちが強くて。特別なことをするのは逆にもったいない。日常が幸せなので、みんなと今まで通りいられたらいいなと思っています。
──そうは言っても、ツアーを1本1本消化したり、潮さんにとって最後のCD作品となる2ndアルバムが着々と完成に至る中で、だんだんと「終わりに近付いている」と意識してしまうことはない?
潮 アルバムに収録される新曲「君は0から1になれ」はミュージックビデオの撮影があったんですけど、撮影中は正直なんの実感もなかったんですよ。でもMVが公開されて、たくさんの方からいろんなお声をいただいたときに改めて「ああ、いよいよ最後の活動期間が始まったんだな」と思いました。皆さんと一緒に過ごせる時間のタイムリミットが近付いているんだなって。ツアーも7年半の活動の中で各地回らせていただきましたけど、いろんな地方を巡るのはこれが最後なんだな……って、どの曲とは言いませんけど、おひさま(日向坂46ファンの呼称)のペンライトがきれいに光るあの曲を歌うたびにジーンときちゃいますね。あとはメンバーと目が合う回数が知らずしらずのうちに増えている気がします。みんなの眼差しが温かくて……寂しいなあとは正直思います。
──それはメンバーの皆さんも同じですよね。普段通りに過ごしていても、どうしてもそういう気持ちが湧き上がってしまうでしょうし。
山口 そうですね。いろんな場面で「ああ、これを紗理菜さんと一緒にするのは最後なのかな……」って。
──寂しさはあっても、今の1つひとつの活動は絶対に楽しいですよね?
潮 楽しいです。
──そんなに楽しいいろいろができなくなってしまうと思うと、辞めるのを止めたくなりませんか?
潮 えー! もちろん寂しさは日に日に増してきますけど、私は昔から一度決めたことは最後までやり通す性格だし、それが自分の信念でもあるので、そこは何があっても揺るがないかなと思います。後悔するくらいなら全力で楽しんだほうがいいし、楽しい思い出をたくさん残したい。なので、できるだけ「寂しい」以外のマイナスな感情は持たないよう心がけています。
──引き止めたくなりませんか?
山口 ここまで意思が強かったら引き止めづらいですね……。
潮 そうだよね(笑)。メンバーにも発表の直前まで言わなかったんです。ぱるちゃん(山口)、発表したときに「もうちょっと匂わせてくださいよ~」って言ってたもんね(笑)。あの言葉が忘れられなくて!
山口 メンバーにくらい匂わせてくれてもいいじゃないですかー(笑)。何もなかったから衝撃でした。
三期生は私が産んだ?潮紗理菜の止まらない三期愛
──前回の佐々木久美さんと東村芽依さんのインタビューはちょうどツアーが始まる直前だったので意気込みを聞かせてもらいましたが(参照:日向坂46「Am I ready?」インタビュー)、声出し解禁になり、全公演おひさまの声援があるツアーはいかがですか?
潮 私はライブがお仕事の中でも1、2を争うほど好きなんですけど、それはライブが好きというよりも、おひさまの皆さんと一緒に同じ空間を過ごせることが好きだったんだなというのを、皆さんの声をたくさんいただいて改めて感じました。おひさまの皆さんの声があることはそのくらい大事で、ライブを作るうえでの大切な一部になってるんだなって。おひさまの声がないとライブが完成しない。無観客のライブも経験しての今なので、楽しさもありがたさも倍ですね。
山口 私はライブ中におひさまの皆さんと目が合ったときの、思い切り楽しんでいる表情がすごく好きなんですよ。今回のツアーはさらに声を出してくださっているし、距離が近くなる場面もあるので、そういうときの……実際は1対1で話しているわけではないんだけど、おしゃべりしているときと同じ目と表情をこちらに向けてくれるのがわかるときが本当に幸せです。
潮 心が通じてるなって感じるよね。
山口 日向坂46の活動の中でも、ライブが一番弾けられる場所で。今がこれまでで一番の楽しさを放っている瞬間だな、と感じる瞬間がツアーではたくさんあります。
潮 今回のツアーを通して、三期生がすっごい輝いてるんですよ! あるときですね……あの会場覚えてる? 今野さんが話してくれたとき。ケータリングの個数制限があったところ。
山口 手羽先……?
潮 愛知だ! 手羽先!
山口 どういう覚え方ですか(笑)。
潮 プロデューサーの今野さん(ソニー・ミュージックエンタテインメント今野義雄氏)はライブに来てくださったときに必ず感想をくださるんですけど、愛知公演ではひと言目から「とにかく三期生がすごかった」と。それだけ言って帰られたんですよ。
山口 いやいやいや。盛ってる(笑)。
潮 いやホントに! まあ細かく言えば「とにかく三期生がすごかった(からみんなもがんばろうね)」なんですけど、ほぼ「三期生すごかった」だけ。もう私、自分も三期生かというくらいニヤニヤしちゃって。三期生の魅力が伝わってる!と思って……お前は誰だよという感じですけど、三期生の努力を一番近くで見てきたので、ホントにうれしかった。間違いなく三期生が一番弾けているのが今回のツアーだと私も思ってるし、関係者の方も思ってるし、きっとおひさまの皆さんもそう感じてるんじゃないかと思います。
──手塩にかけて育てた我が子を誇る母親のような言い方ですね。
山口 そのときも、プロデューサーさんが帰られたあともずっとその話をしていて。本当に育ててくれたのかなと思うくらい(笑)。
潮 そうなのかな? 私が産んだのかな? 特にみーぱん(一期生の佐々木美玲)とは一緒にごはんを食べてるときなんかもずっと三期生の話をしていますね。
──三期生は一期、二期、四期と違って4人という少ない人数で、どことなくほかの期とは違う独特のムードがありますよね。
潮 ほかの期別と比べると圧倒的に少ないんですけど、場の空気をガッと変える力を持ってるんですよ。
──大絶賛ですね。
山口 すごい! ありがたいです。期待に応えられるようがんばっていきます。
潮 重圧にならなければいいけど(笑)。
次のページ »
シングルとは違うワクワク感、潮&山口の思い出のアルバム