音楽ナタリー PowerPush - 日笠陽子
ただひたすらに“カッコいい”ハードロックアルバム
カッコいい私でいるという“選択”
──「Couleur」ってそうやって日笠さんが制作全般にコミットしたことがしっかり窺えるアルバムですよね。「Glamorous Songs」は小室哲哉さんたちと共作することでいろんなケミストリーを起こした“コラボレーションアルバム”だったんだけど、今作はまさに“日笠陽子”のアルバムになっています。
新録の曲に関しては、もう本当に何をしてもいい、自由にしていいって言われていたので(笑)。アルバムの制作が決まった段階から「原点回帰したい」ということは伝えてました。アーティストデビューの話があった2~3年前に私がやりたいと思っていたことを今また改めてやってみたい。バンドと一緒にカッコいいロックをやりたいって。
──実際このアルバムの中の日笠さんは「ロックスター」と聞いて、みんながイメージするだろうロックスター像をきっちり背負っている。重たいビートに歪んだギターリフが絡むオケをバックに正面切ってカッコいいハイトーンボーカルを聴かせまくる“カッコいい日笠陽子”を目指したのはなぜなんでしょう?
「ファンです」って言ってくださる人の中には男性はもちろんなんですけど、女性や小さい子も少なくないからですかね。
──COASTのライブのときもアンコールでプレイする曲のリクエストを受け付けたら、12歳の女の子が答えてましたもんね(参照:日笠陽子、“チーム日笠の完成見た”初ワンマンを堂々完遂)。
そうなんですよ。そういう子たちや女性の皆さんにちゃんと憧れてもらえる自分でいたい、もっと惹き付けられる自分でいたいっていう意識が働いている気はします。
──ファンの期待するカッコいいお姉さん像を引き受けたかった?
「期待を背負ってます!」みたいなプレッシャーは感じてないんですけどね(笑)。どちらかというと「選択の結果」っていう感じかなあ。もし世の中に「かわいい」と「カッコいい」という2種類のキャラクターがあるとしたら、私はどっちだろう? カッコいいかな?みたいなことを考えてみたり、じゃあ「男性が思うカッコいい・かわいいもの」と「女性が思うカッコいい・かわいいもの」があるとしたら、どちらが私には似合うかな?って考えてみたりした結果、このサウンドとビジュアルが生まれたというか。あと、第三者が日笠陽子に似合うものを選んでくれていて、それもいい彩りになってるんですよね。
「日笠陽子」はただの看板なのかもしれない
──「第三者」って?
周りのスタッフさんと打ち合わせをしたり、雑談をしたりしていると私自身は気付いてない私の一面に気付かされることが多いんです。もう2年以上一緒にいるチームなので、ちゃんと私のことをわかってくれていて。「日笠さんにはこういうのが似合うと思う」「これよくない?」っていろんなアイデアを出してくれるし、そのアイデアの中には的を射ているものがホントにたくさんあるんですよ。私はそういうやり取りができることを「チーム力」って呼んでるんですけど、それも今の私を形成する大事な要素だと思ってるし、実際チームのみんなの言葉って本当に重要なんです。
──これは前回のインタビュー(参照:日笠陽子「Glamorous Songs」インタビュー)でも聞いたことではあるんですけど、日笠さんはそのチームのリーダーやプロデューサーでは……。
ないですね。リーダーシップなんてないですし、私自身は「これやりたい!」ってすごく子供っぽいことを言いながら、一直線にバーっと走っていっちゃってるだけのような気がしてますし(笑)。でも私が1人でむやみに走ってるだけだったら100%途中でガケに落ちたり、交通事故に遭ったりしてるはずなんですよ。
──あはははは(笑)。
なのに事故に遭って大ケガすることもなく、自由に走れてるのはチームのみんなのおかげなんです。気付かないうちに横断歩道を渡らせてくれていたり、私が行きたい道をちゃんと整備してくれていて。今回のアルバムに限らず、作品の制作中は私も走ることに必死だったからそれがあまりわからないんですけど、制作が終わって改めて振り返ってみると「あっ、いつもみんなに助けられたんだな」と気付くことが多いんです。このチームの力があったからこそ「Couleur」っていうアルバムもできたんだろうなって思ってますし。このあいだのインタビューと同じ、ただのチーム自慢になっちゃうんですけど(笑)。
──そのチーム力って「Glamorous Songs」のときより上がってますよね。
上がってますね。
──コラボレーションアルバム「Glamorous Songs」ではコラボ相手の力を借りることもできたけど、「Couleur」は日笠さんと制作スタッフの力だけで作り上げなければならない。でもちゃんと“カッコいいロック”を作るミッションを成し遂げているわけですから。なんでチーム力が上がったんですかね?
なんでなんだろう? ……飲み会をやってるから?
──あはははは(笑)。
でも年末、本当に1回宴会をやってみたんですよ。バンドさんやエンジニアさん、スタイリストさん、PVの制作チーム、ジャケットの制作チーム、レーベルのスタッフ、事務所の人間っていう30~40人で集まって。ほかにもバンドメンバーとレーベルのスタッフさんもよく飲んでたりするらしいですし。そうやって横のつながりが強くなったからっていうのは大きな理由のような気がします。お互いがお互いのことを知ってる安心感とか、プライベートな話すらもできる信頼感が以前にも増して強くなってるから、チーム力も増してる。チーム全体の意思がより統一されるようになってるんじゃないのかなあ。だから最近ポスターやジャケットに「日笠陽子」って名前が書いてあるのを見るとなんか不思議な気持ちになるんですよ。なんか自分の名前じゃなくて、ただのチームの看板みたいに見えちゃって(笑)。
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- 1stアルバム「Couleur」 / 2014年9月3日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] 3780円 / PCCG-01417 / Amazon.co.jp
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / PCCG-01418 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2700円 / PCCG-01419 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- 新世界システム
[作詞・作曲:CHI-MEY / 編曲:大久保友裕] - ENVY DICE
[作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:渡辺和紀] - Brighter day
[作詞:KAORU / 作曲・編曲:HearTribe] - Crazy you
[作詞:YADAKO / 作曲・編曲:Masse] - 美しき残酷な世界
[作詞:マイクスギヤマ / 作曲:石塚玲依 / 編曲:根岸貴幸] - 憂冥
[作詞・作曲:HISASHI / 編曲:小森茂生] - 風と散り、空に舞い
[作詞:こだまさおり / 作曲・編曲:藤井雄大] - 終わらない詩
[作詞:yamazo、稲葉エミ / 作曲・編曲:yamazo] - EX:FUTURIZE
[作詞:hataru / 作曲:奥井康介 / 編曲:中山真斗] - Pollution
[作詞:YADAKO / 作曲・編曲:Masse] - Sleepy Hungry Minds
[作詞:nadia / 作曲:前澤寛之 / 編曲:中山真斗] - Seek Diamonds
[作詞:大森祥子 / 作曲・編曲:中山真斗] - FLOWERS
[作詞・作曲:CHI-MEY / 編曲:大久保友裕]
初回限定盤 BD / DVD収録内容
- 「新世界システム」ミュージックビデオ
- 「美しき残酷な世界」ミュージックビデオメイキングクリップ
- 「終わらない詩」ミュージックビデオメイキングクリップ
- 「Seek Diamonds」ミュージックビデオメイキングクリップ
- 「EX:FUTURIZE」ミュージックビデオメイキングクリップ
- 「新世界システム」ミュージックビデオメイキングクリップ
日笠陽子(ヒカサヨウコ)
神奈川県出身の女性声優、ボーカリスト。テレビアニメ「けいおん!」の秋山澪役など、数多くの人気作で主役級のキャラクターの声を多数担当。また、メインボーカルを務めた「けいおん!」のエンディング曲「Don' t say "lazy"」がゴールドディスクを獲得し、自ら考案したギャグ「てへぺろ(・ω<)」が流行語となるなど、アニメ業界外でも注目を集める。2013年5月「日笠陽子ソロプロジェクト」を立ち上げ、デビューシングル「美しき残酷な世界」をリリース。6月には2ndシングル「終わらない詩」を、7月には小室哲哉らが参加するコラボレーションアルバム「Glamorous Songs」を発表する。その後もアニメ「ダイヤのA」のエンディングテーマ「Seek Diamonds」や、「Z/X IGNITION」のオープニング曲「EX:FUTURIZE」といった話題作を立て続けにリリースし、2014年9月、初のオリジナルフルアルバム「Couleur」を発表した。