樋口楓のライブで感じた、2次元と3次元に垣根はない
──ナナヲさんは、この曲のサウンド面に関してはどのように作っていったのでしょう。
ナナヲ 樋口さんのライブ映像を観たときに、生バンドと一緒にライブをしていて「樋口楓、本当におる!」という気持ちになったんですよ。ライブだと歌声も力強いし、熱量もすごくて「2次元と3次元の垣根なんてないんだな」と感じたので、ライブで映える曲になったらいいなあと思っていました。最終的にどんなふうに解釈するかは樋口さん次第だと思うんですけど、ナナヲ的にはこの曲に出てくる「君」は樋口さんのファンの方々のことだったら意味があるのかなって。あと曲調は少女性のある「ピヨ」をいいと思って声をかけてくださったので、マイナーコードの曲だと台無しになるかなと思ってさわやかさを意識しました。
樋口 すごくキラキラしている曲で、スカッとした青春のような雰囲気もあって「オーダー通りだ!」と思いました。それに最初に聴いたとき「早くライブをしたいなあ」という気持ちになりました(笑)。私はいつもリスナーさんのことを「同じクラスの隣の席に座っている君」みたいに表現しているんですけど、「君と笑えば もっと好きになれそうなんだ 私のこと」の部分や「君」という表現で、いつも当たり前のようにいてくれるリスナーさんに対しての「ありがとう」や「これからも盛り上がっていこうね」を1人の女の子としてカッコつけずに伝えられる曲になったと思うので、聴いてもらえるのが楽しみです。それにナナヲさんが同じ女の子の立場で考えてくださって、女の子としての曲に仕上げてくださったのがうれしい。
──ナナヲさんは曲を作る際、樋口さんの人柄をどんなふうに知っていったんですか?
ナナヲ とにかく樋口さんの動画をたくさん観ました。樋口さんが話す言葉の端々から音が垣間見える部分があったし、過去について話しているところからいろいろと想像したりして。中でも印象に残っているのは「本当はにじさんじを辞めていたかもしれない」と話していた雑談配信です。悩みや考えていることを知るとその人のことをよく知れると思っているので、あの回はすごく大きかったです。あと、ライブを意識していたので「wow~」というコーラスは「みんなで歌えたらすごくカッコいいだろうな」と思って入れちゃいました。
──樋口さんはライブでお客さんを煽るのがすごくうまいイメージなので、お客さんにコーラスしてもらうととても映えそうですね。
樋口 実はあのコーラス部分、ナナヲさんにも一緒に歌っていただいたんですよ!
ナナヲ ちょっとだけ歌わせてもらいました(笑)。
樋口 ナナヲさんと私は声質が全然違うので、ナナヲさんの声が入ったことで曲がすごく華やかになりました。でも、あれってなんで入ってもらえたんでしたっけ? 私は「ナナヲさんにも入ってもらえたらうれしいな。でも難しいだろうな」と思っていたので、協力してもらえることになって「いいんですか!?」という感じだったんですよ。
ナナヲ もともとナナヲの現場でも、周りにいる方にコーラスで入ってもらうことが多いんです。その感じで「入ってもいいですか?」って混ぜてもらいました(笑)。
樋口 あれはめちゃくちゃうれしかったです。私、にじさんじや周りのナナヲさんの曲を歌ったことがある人たちに、絶対自慢しますもん(笑)。
ナナヲ あはははは(笑)。
──「アブノーマルガール」は、樋口さんの歌い方も普段とは雰囲気が違いますね。
樋口 曲調もそうですけどテーマが「女の子」だったので、カッコいいところを見せようとしつつ、「普通の女の子でもあるんだよ」というマインドで歌いました。
ナナヲ 樋口さんは「こう歌ってみましょう」と話したあとの飲み込みがすごく早くて、表現力の幅がある人なんだなと思いました。ちなみに、ナナヲのイチ押しポイントは、ラスサビ前の「特別じゃない 私の魔法 解けないで」のところです。ここのテイクはどれもよすぎて、最終的にどれにしようか選びかねるくらいだったんですよ。
「アブノーマルガール」は自分だけでなく“みんなに近い曲”
──樋口さんの1stアルバム「AIM」には全編を通して色んなタイプの曲が収録されていますが、「アブノーマルガール」はどんな曲になったと思いますか?
樋口 キラキラした曲ですし、VTuberをしていないときの素の自分に近い曲なのかなと思います。そういう意味では、自分だけでなく“みんなに近い曲”でもあるのかなって。
ナナヲ 樋口楓という表舞台に立つ人が、アルバムの中では「1人の女の子」になれる曲になったらいいなと思って作っていたので、そう言ってもらえるとすごくうれしいです。ナナヲは初めて作家として曲を書かせていただきましたけど、その相手が樋口さんで本当によかったなと思います。これまで自分の曲は自分自身が歌うことしか頭になかったので、歌ってもらった瞬間に「これこれ!」と思えたことも本当に楽しかったですし、もっと勉強していろんな人に曲を書けるようになりたいなと思えるような経験でした。
樋口 私もナナヲさんにお願いしてよかったなと思います。ナナヲさんはこれからきっといろんな方に楽曲を提供していくと思うんですけど、その初めてをいただいて「私でいいんですか!?」という気持ちと感謝でいっぱいです。
──ちなみに、アルバムタイトルの「AIM」はどんなイメージで付けたのでしょうか。樋口さんが今年に入って配信しているバトルロイヤルゲーム「Apex Legends」のようなFPSで使われる用語「エイム」(照準を合わせる)も関係あるのかなと思ったのですが(笑)。
樋口 最近ハマっていますからね(笑)。目標に向けて狙いを定めるという意味もありますし、順番を入れ替えると「私のこと(=I AM)」にもなるので「AIM」に決めました。例えば「アブノーマルガール」にとっての「AIM」は「君」だったり「素の自分」だったりすると思うんですけど、そういうものがほかの曲にもそれぞれにあって。それを表現できるタイトルだと思ったんです。
──なるほど。アルバム全体に通ずるタイトルでもあるんですね。ちなみにナナヲさんも12月に最新アルバム「七転七起」がリリースされます。これはどんな作品になっているんでしょう?
ナナヲ 「七転七起」というタイトルについては、「七転び八起き」みたいに7回転んで8回起きるなんてちょっとすごすぎるので、「7回転んで、7回起きるぐらいでよくない?」という意味でつけました。ナナヲらしさがちりばめられた作品になっていると思いますし、同時にコロナ禍で感じたことも要所にあって「コイツらしい」と思ってもらえるアルバムになったかなと。
樋口 私も聴かせていただいたんですけど、ナナヲさんの“ナナ”を想像できるような数字がたくさんちりばめられていたり、等身大なところがあったりしてすごくいいなと思いました。このご時世にメンタルダウンしている人にとっても、すごく勇気づけられるだと思います。
いつか一緒にライブを
──それぞれの今後については、どんなことを楽しみにしていますか?
ナナヲ アルバムを発表したら、やっぱりツアーを回れたらいいなと思います。配信ライブもできますけど、それだけだとやっぱり寂しいというか、お客さんの顔を見てライブができたらいいなあと。あと樋口さんのライブも観に行きたいです! 「アブノーマルガール」をステージで歌っている樋口さんを観てみたい(笑)。
──ファンの皆さんからすると、いつか一緒にライブをしてくれないかなと期待しているかもしれません。
樋口・ナナヲ やりたい!
樋口 私も同じくお客さんの前でライブができたらいいなと思います。もちろん普段の配信も楽しいですし、私たちVTuberにとってはこのコロナ禍って「こういうコンテンツがあるんだな」と多くの方に気付いてもらえた期間だと思うんですけど、やっぱり人の温かみとか会場での生の歓声を一度体験してしまうと、やみつきになってしまうというか。なので、早くコロナ禍が落ち着いて、ライブでみんなの生の声が聞けたらいいな。なので、世界平和を願っております……!
ナナヲ あはははは!(笑)
ライブ情報
- Kaede Higuchi Live 2021 "AIM"
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2021年2月19日(金)東京都 TACHIKAWA STAGE GARDEN