音楽ナタリー PowerPush - ハイレゾで伝わるギタリストの精神
トクマルシューゴがソニー ウォークマン&ヘッドホンで体感
ソニーから、ハイレゾ音源に対応したウォークマンやヘッドホンが続々とリリースされている。ハイレゾ音源がいよいよ一般の音楽好きに浸透してきた感のある昨今の状況を受けて、ナタリーではハイレゾ音源の魅力を改めて追究する特集を企画した。
今回はハイレゾ音源のギターの再現性に着目。トクマルシューゴにThe Velvet UndergroundやLed Zeppelin、Daft Punkなどの楽曲をハイレゾと非ハイレゾで聴き比べてもらい、その所感を聞いた。
取材・文 / 加藤一陽 撮影 / あさみあやこ
作り手として感じるハイレゾ音源の印象
──トクマルさんはハイレゾ音源にどういった印象を持っていますか?
ハイレゾ音源は、サウンドに奥行きがあるなって思います。左右も若干広がりは出るんですけど、やっぱり奥行きというか、3D映画を観ているように音の階層が見えてくるというか。さっきビル・エヴァンスの「Montreux II」を試聴したときは、CDとハイレゾ音源では「そもそも録音が違う音源なんじゃないか?」っていうくらい違いました。そもそもこの音源って録音状態があまりよくなくてノイズが多いんですけど、ハイレゾで聴いたらベースとドラムとピアノがしっかりと立ってきて。
──「Montreux II」は1970年の作品なのでもちろんアナログレコーディングされたものです。そういったハイレゾネイティブではない音源がハイレゾ化されることについてはどう思いますか?
もちろん良し悪しは聴き手それぞれが判断すればいいと思いますけど、個人的に単純に興味がありますね。できるだけハイレゾ化してほしいと思います。
ハイレゾで感じるギターの魅力
アンプやコード感が想像できる
The Velvet Underground / 「The Velvet Underground and Nico」「The Velvet Underground」
──まずはThe Velvet Undergroundの「The Velvet Underground and Nico」と「The Velvet Underground」を聴いていただきました。これらもアナログレコーディングされた音源です。
はい。どちらもハイレゾで聴いたら、リマスタリングした人がThe Velvet Undergroundが好きなのがよくわかりました(笑)。この時代のロックバンドって大体そうだと思うんですけど、きれいな音でロックをやろうとは思っていなかったと思うんです。だから昔のロックがハイレゾ化されているのを見ると、少し「逆のことやってるなあ」って感じていたんだけど、聴いてみると別のよさが出ている。ギターはコード感とかももちろんなんだけど、ちゃんとアンプから出した音を拾っているのが伝わってくるし……そもそもアンプ自体をちゃんと歪ませてこのサウンドを作っていたんだなっていうのもわかります。
──それはCDではわからなかったのですか?
「ギターが歪んでいる」というのはもちろんわかりますけど、「アンプがどうで、コードの押さえ方がどうで……」みたいな細部はわからないものが多いですよ。さらに圧縮音源になると、より“音が雑”になるんです。ギターの持つ繊細さが間引かれて、テクニック的な部分がフラットになってしまう。
──うまい、下手があまり出なくなる感じですか?
ハイレゾに比べたらそうかもしれませんね。でもハイレゾだとヘタなのがすぐわかっちゃう。ごまかしが効かなくなります……恐ろしいことに(笑)。だから僕たちアーティストも背筋が伸びますよね。
ギターの重なりやパンニングまでも見える
Led Zeppelin / 「Rock and Roll」
──続いてLed Zeppelinの「Rock and Roll」をハイレゾで聴いていただきました。
これはギターキッズが喜ぶと思いますよ(笑)。NW-ZX2とMDR-1Aで聴いたらギターの音だけを追うことができたから。これは採譜の人にとってもいいでしょうね。アナログやCDだとなんだかわかんなくて、楽譜とかも雑になったりしていましたから。
──そうなんですね。
ギターが何本重なっていて、どういうふうにパンニングされているかもわかりやすい。ギター好きは聴いたほうがいいですよ。再発見がある。
──この曲はいわゆるハードロックですけど、こういう音楽って音がキレイになると逆に魅力が損なわれる部分もあると思うんですけど。
もちろん音がキレイになったり、1つひとつのパートがわかりやすくなることで、音圧で押してくるようなロックサウンドの魅力は若干損なわれる部分はあると思います……そもそも、そういうロックサウンドってCDやアナログ特有のものなのかもしれませんけど。
──じゃあ、その手の音楽はハイレゾ向きではないのでしょうか?
いえいえ、その分、別の魅力が出てくるというか、奥行きが出てきて、アーティストが意図する音へのこだわりがわかりやすく伝わるって思いましたね。「Rock and Roll」ってCDとかは“不良の音”って感じのサウンドが魅力なんだけど、それがよりクールな音になっている。ジミー・ペイジらしいサウンドも顕著に感じることができますね。
──トクマルさんが思うジミー・ペイジらしさとは?
ジミー・ペイジって、めちゃくちゃカッコよくて最高なんだけど、コード感が独特で、“発明家タイプの人”っていうか……ギターがすごくうまいってわけじゃないんです。クセとして、プリングオフ(指で弦を引っかけて音を出す奏法)がスムーズじゃないときがある。ハイレゾだとそういう部分がよりハッキリと伝わってきて、彼らしさが際立つような印象です。
WALKMAN Sony NW-ZX2
ソニー ウォークマンの最上位モデル。ハイレゾ音源の再生はもちろん、MP3などの圧縮音源やCD音源をハイレゾ相当の高解像度音源にアップスケーリングする「DSEE HX」を搭載し、さまざまなファイルフォーマットの音楽をクリアに出力する。DSDファイルの再生にも対応。
- 価格:オープンプライス
- 容量:128GB
- 信号圧縮方式(音声):MP3、WMA、ATRAC、ATRAC Advanced Lossless、WAV、AAC、HE-AAC、FLAC、Apple Lossless、AIFF、DSD(リニアPCM変換再生)
- 信号圧縮方式(ビデオ):映像 / AVC(H.264 / AVC)、MPEG-4、Windows Media Video 9、音声 / AAC-LC(AVC、MPEG-4用)、WMA(Windows Media Video 9用)
- 信号圧縮方式(静止画):JPEG
- ディスプレイ:4.0型ワイド、TFTカラー液晶、WVGA(854×480ドット)
- 本体動作対応OS:Windows 7(Service Pack 1)以降、Mac OS X v10.6以降
- 外形寸法(本体):約64.7(W)×約130.4(H)×約16.2(D)mm
- 重量:約235 g(ケーブル除く)
Headphone Sony MDR-1A
低域から100kHzの超高域までを再生する広帯域40mmHDドライバーユニットを搭載。耳を包み込むような快適な装着感のステレオヘッドホン。
- 価格:オープンプライス
- 形式:密閉式 / ダイナミック型
- 周波数特性:3Hz~100kHz
- インピーダンス:24Ω(@1kHz)
- ドライバーユニット:40mmドーム型
- ケーブル:1.2m着脱式 / 片出し
- 重量:約225g(ケーブル除く)
- カラーバリエーション:2色(ブラック、シルバー)
TONOFON FESTIVAL 2015
2015年6月7日(日)
埼玉県 所沢航空記念公園 野外ステージ
<出演者>
トクマルシューゴ / neco眠る / 明和電機 / 森は生きている / yumbo / 麦ふみクーツェ楽団
トクマルシューゴ
TONOFON主宰。レコーディングからミックスまで、すべてをひとりでこなすマルチアーティスト。2004年に1stアルバム「Night Piece」をアメリカのレーベルから発表する。その類い希な音楽センスが評判を呼び、日本やアメリカだけにとどまらずヨーロッパにも拡大。100種類以上の楽器 / 非楽器から作り出されるポップで寓話的なサウンドは、世界中の音楽ファンを魅了している。また、多様な楽器を用いた楽曲を再現するライブの形態は、ソロ / トリオ / バンドとさまざま。2013年までに5作のアルバムをリリースし、ソロ活動10周年を迎えた2014年には5作のアルバムをすべてアナログでリリースした。