世代ごとの邦楽と洋楽

──デビュー当時のavengers in sci-fiは我が道を行くって感じがありましたよね。

木幡　確かに先輩から勉強しようなんて気持ちはさらさらなかったですね。僕らの世代って、日本の音楽にダサいってイメージを持っていた節もあったと思うんです。今はニューヨークにも東京にも同じように最新のものがあるんですけれど、その頃の僕としては、日本で売れてる音楽は海外と比べて1、2世代遅れてるものに感じていた。上の世代のやっていることは、ありがたがって勉強するものっていうより、ぶっ壊していかなきゃいけない古い権威の塊だと思ってた。だからそういう反骨精神みたいな姿勢が染み付いていたというのはあるかもしれない。

──LAMP IN TERRENとかTHE ORAL CIGARETTESはどうですか？ 同時代の海外の音楽シーンを意識して曲を作ったりはする？

山中　あんまり洋楽を意識したことはないですね。聴くことは聴くんですけれど、それを自分のバンドでどうしようかとかは考えたことないです。

松本　僕も同じですね。僕も好きで聴いてるものと自分が作っているものは全然違います。

──実はさっき木幡さんが言ったような洋楽と邦楽に対してのイメージの格差って、さらに世代が上になるとよりハッキリ広がるんです。例えば今の40代が大学生だった1990年代初頭のいわゆる渋谷系の時代って、外資系レコード店で邦楽のCDを買うのが恥ずかしいなんて思ってるような人すらいた。

一同　へえ。

──そういう人は周りにバレないように買っていたりして。

松本　全然想像つかないですね。

──今そういうことがなくなってきたのは、90年代から今に至るまで、日本のバンドシーンがどんどん充実してきたということだと思うんです。アメリカやイギリスにも当然いい音楽はあるけれど、日本にもいいバンドがいる、ということが当たり前になってきた。

松本　そうですね。やっぱり僕も対バン相手とか上の世代の人のやっていることがすごく刺激になっているわけですし。先輩たちは目標でもあるし、いつかその目標を超えたいとも思っている。よりよいものを自分から生み出したいと思っているので。

来たる「HighApps SPECIAL!!」に向けて

──対バン相手から刺激を受けるっていうのは、ほかの皆さんもそうですか？

田邊　そうですね。僕の場合はどんなジャンルでもメロディがよかったらグッときますし、単純に生き方がカッコよければ先輩だろうが後輩だろうが関係なく刺激を受けます。

武井　僕はTHE ORAL CIGARETTESのライブがけっこう刺激的ですね。楽屋では静かだったのにステージではガーッとハイテンションになってるから「もっとやっちゃえよ！」みたいな気持ちになる（笑）。

山中　はははは！（笑）

安島　僕も対バン相手から刺激は受けるんです。でもあの人があれをやったから今日は俺もそれをやるみたいなことはなくて、毎日自分が積み重ねてきたものを全力で燃焼させる。ブレたくないなとは思っています。

──ちなみに「HighApps」では楽屋ってどういうムードなんでしょう？

スタッフ　基本的にはそれぞれが気を遣って過ごしてる感じがしますね。

山中　イベントがどうこうっていうよりバンド同士の関係性による気がしますけどね。

──なるほど。打ち上げのときはどうですか？ 音楽以外の話題で盛り上がることが多い？

田邊　飲み続けて深い時間になったらあるかもしれないですけど、仲がよければいいほど音楽の話はほぼしないですね。でも、例えば「そういえばお前のMCこうだよね」とかふとしたときに放たれた誰かのひと言の攻撃力がデカいということはたまにあるかな。

──お客さんには「HighApps」をどんなふうに楽しんでもらいたいですか？

スタッフ　バンドに近いスタッフが作っているイベントなので、タイムテーブルや見せ方にも、実はバンド側の人間が考えた意図が隠れています。ワンマンライブともバンド主催のイベントとも違う面白さを感じ取ってもらえるといいですね。

※4月12日までの限定公開