発想が技術に追い付いた「子 ギャル」完成まで
──「子 ギャル」は2014年、Vocaloid技術を駆使したhideさんの歌声が話題になりました。この作業はhideさんの歌声のサンプルを集めて歌にするという内容だったと思います。今回の書籍を読むと、制作プロセス自体はhideさんとI.N.A.さんが一緒に音楽制作を行っていたときの延長線上だったことがわかります。
そうなんですよ。本の最後のくだりでも触れてるけど、最初から何も変わっていない気はするんですよね。
──「子 ギャル」のリリースに喜ぶファンもいれば、批判の声を上げる人もいましたがどう捉えていましたか。
お金もうけが云々っていう話でしょ? お金もうけするんだったらそんな面倒くさいことしないですよ。普通にデモテープを売っちゃえばいいんだから(笑)。
──確かに(笑)。「子 ギャル」は発想に技術が追い付いたからこそ完成させることができた楽曲でした。
hideの発想はぶっ飛んでいたけど、実はかなり近い未来に実現できそうなアイデアが多かった感じがします。「未来人」という章でも触れていますが、彼には 1、2年先とかそう遠くない未来のことを言っているようなところがあったんです。今でもテレビを観ていると、「あのときhideが言ってたことだ!」と思うこともあるし。彼が未来のことをどこまで想像していたかどうかはわからない。でも実際に形になって、サイボーグではないけど、hideの声が蘇ったのはすごいことですよね。
──I.N.A.さんの歩みの裏側もこの書籍で知ることができますね。
hideは「hideっていうミュージシャンは松本秀人とI.N.A.でプロデュースしている感覚」とか言い散らかしてそのままいなくなっちゃったけど、僕が何をやってたかなんてわからない人がほとんどですからね、今でも。hideと一緒に音楽を作っていたと言われているけども、何をやっていたかはほとんどの人がこの本を読んだらわかるんじゃないかな。
hideを語り継いでいくと決めてから20年
──hideさんが亡くなって20年が経ち、1つの節目を迎えます。これからのhideさんとの接し方について考えていることはありますか?
実は今までもあまり考えたことがなくて。近年においては不思議なことに事務所が「こういうことをやりたい」って言うんじゃなくて、例えば映画「JUNK STORY」もそうだし、3Dのホログラフィックライブとかも違うところからお話が来ることが増えたんです。「hideさんを題材にしてこういうことをやりたいんです」と。
──hideさんの楽曲を題材にした舞台「僕らのピンク スパイダー」などもありましたね。
そう。そんな話をいただいたとき、僕も音楽で協力できることはやることにしています。だから自分からhideについて「こうしたい」みたいに思うことはそんなにないんです。もしかしたら1回もなかったかもしれない(笑)。
──2000年にhide with Spread Beaver名義で発表した「TELL ME」くらいでしょうか。
あれもhide本人がやるって決めてたことですからね。単純にhideに関わっていると面白いんですよ。それが一番の理由。この本を書くのも面白かったし。でも音楽のほうが本当に楽ですね(笑)。
──大変そうなエピソードがたくさん書かれているのに……。
いやいや、音楽を作るほうが100倍くらい楽です。本を書き終わったあとに「hide 20th Memorial SUPER LIVE『SPIRITS』」用のアレンジのデータを作っていたんですが、全然楽だなって。
──水を得た魚のように(笑)。
音楽だったらずっとやっていけるって実感しました(笑)。
hideの音楽は“ワンアンドオンリー”
──hideさんの音楽が風化せずに新たなファンに響いている理由はどこにあると思いますか?
音楽的に実験を繰り返してきて、hideオリジナルのサウンドを確立したからだと思います。流行りの音楽だけをやっていたとしたら、その音楽が出た5年くらい先にはもう聴かれなくなってたんじゃないかな。hideはいろんな人がやってないことをずっとやってきたから、つまりhideの音楽は“ワンアンドオンリー”なんです。だからいつ聴いても古く感じない。“流行らない音楽”っていうのは、いろんな人がやろうとしてもできないって意味もあると思う。
──風化しない理由はオリジナリティが確立されたhideサウンドにあると。
hideが亡くなったあとに弟のヒロシくんとは「hideを語り継いでいきましょう」とか「俺はあいつをブルース・リーみたいにするんだ」と話していたんです。ブルース・リーは俺が知ったときはもういなかったけど、全世界のいろんな人に今でも人気でしょ? ああいう人になってほしいって話を98年にしていて。The Beatlesがそうだけど「3世代にわたってファンが付くともう永遠の存在になる」って説があるんですけど、今のhideに関してはその入口まで来ていると思うんで、「ああ、これはもう少しだね」って状態。
──書籍の発売と共に「hide 20th Memorial SUPER LIVE『SPIRITS』」には、hide with Spread BeaverとしてI.N.A.さんも出演します。
オフィシャルでも告知されてますが、こういう大きいイベントをやるのはもう最後かもしれない。それを受けて、選曲とかをいろいろ考えています。hideのライブは2DAYS公演の場合、日によって中身の構成や曲順、見せ方が違ったんで、今回もそれをやろうとは思ってます。どっちを観に来ても面白いし、1日だけ観ても面白い。楽しめるように……がんばります(笑)。
書籍
- I.N.A.(hide with Spread Beaver)
「君のいない世界~hideと過ごした2486日間の軌跡~」 - 2018年4月28日発売
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス -
単行本 1728円
- 内容
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- 君のいない世界
- プロローグ
- 出会い
- ロサンゼルス
- ハードコアテクノくん
- 酒と泪とヒデラと消防車
- hideソロプロジェクト始動
- 2枚のシングル
- アンセム
- LAの青い空 その壱
- ほんとにあったヤバい話
- LAの青い空 その弐
- 未来人の片鱗
- LAの青い空 その参
- DON'T PANIC
- ギブソン レスポール
- 過酷な日々
- HIDE YOUR FACE
- LAの青い空 再び
- hideとzilchとX JAPAN
- PSYENCE
- 3・2・1
- 時代の終焉
- hide with Spread Beaver
- 未来人
- エピローグ
メモリアルライブイベント
- hide 20th memorial SUPER LIVE
「SPIRITS」 -
2018年4月28日(土)
東京都 お台場野外特設ステージJ地区OPEN 10:00 / START 11:30 / END 19:00(予定)
出演者
MUCC / ZEPPET STORE / OBLIVION DUST / D'ERLANGER / BUCK-TICK / hide with Spread Beaver(ゲスト:PATA) -
2018年4月29日(日・祝)
東京都 お台場野外特設ステージJ地区OPEN 10:00 / START 11:30 / END 19:00(予定)
出演者
J / 氣志團 / defspiral / ZIGGY / 布袋寅泰 / hide with Spread Beaver(ゲスト:PATA)
献花式
- hide Memorial Day 2018~献花式~
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2018年5月2日(水)神奈川県 CLUB CITTA'
ボックスセット
- 「hide 1998-Last Words-」
- 2018年5月2日発売 / エムアップ
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[6CD+DVD+BOOK]
14904円
MUCL-00003
1998年春。hideが自ら語った最後のストーリー。永遠のメッセージを完全コンプリート。
映画
- hide 20th Memorial Project Film
「HURRY GO ROUND」 - 2018年5月26日(土)全国公開
あの衝撃の日から20年。なぜ彼は時代を超えても生き続けるのか。その真実に迫った究極のドキュメンタリー。
トリビュートアルバム
- V.A. 「hide TRIBUTE IMPULSE」
- 2018年6月6日発売 / UNIVERSAL J
-
[CD] 3240円
UPCH-2162
hideの音楽のスケール同様、幅広くバラエティに富んだアーティストやバンドによるトリビュートアルバム。
- I.N.A.(イナ)
- hideの共同プロデューサー兼プログラマー。X JAPANのサポートメンバーとして日本のロック界を裏側で支えてきた音楽プロデューサーで、さまざまなアーティストのアレンジなどを手がけている。現在は東京・IID 世田谷ものづくり学校にスタジオを構え、音楽ワークショップ「電脳音楽塾」を展開している。