音楽ナタリー Power Push - HEY-SMITH
新体制で初めて制作した“2秒で好きになる”アルバム
パンクを好きになったきっかけ
──「Radio」は2006年に無期限活動休止をしたKNUCKLESというバンドのカバーですね。どうしてこの曲をカバーしようと思ったんですか?
猪狩 KNUCKLESは大阪のバンドなんですけど、俺はこの曲が大好きなんです。中学生のときにKNUCKLESに出会うまではけっこうポップなものを聴いてたんですけど、KNUCKLESがきっかけでパンクが好きになって。今一番好きなのはRancidやNoFXなんですけど、KNUCKLESは俺のルーツなんですよね。
イイカワ アルバムにカバー曲を入れたいって猪狩が言って、ボブ・マーリーとかいろんなカバーを試してたんですけど、演奏する中で一番しっくりくるのは「Radio」なんじゃないかなって思って。僕はこの曲を知らなかったですけど、聴いて「いい曲だな」って思いましたね。
YUJI 僕も単純に曲がキャッチーだし、カッコいいし、わかりやすいし「これでいいんじゃないですか? 誰かわかんないですけど」って感じでした(笑)。
──KNUCKLESとは親交があるんですか?
猪狩 いや、今回「カバーをさせてください」って了承を得るところで初めてお会いしたんです。共通の知り合いを通じて電話させてもらって、恐る恐る「もしもし、HEY-SMITHの猪狩っていうんですけど……」って言ったら「めっちゃ好きだよ! TwitterもInstagramもフォローしてるよ!」って言ってくれて「うそー!?」って(笑)。「カバーしてくれるの? やってやって!」って感じやったから「やりまーす!!」って。かなり意気込んでレコーディングしましたね。
深夜3時になると歌わされる
──「What They Hide」にはイイカワさんが作曲に参加されていますね。
イイカワ 今回の曲はほとんど猪狩が作ってますけど、実は制作段階ではメンバー各々いろいろ作ってきてて。その中で僕が作った曲がそこに残ってる。
猪狩 うん。アルバムにはいいものが残ってるだけで。だから一番いいものを作ってるのは俺だっていう話なんですけど(笑)。この曲はケンくんがトランペットで最初のリフを吹いてて「これギターでやってくんない?」っていう話から始まって、俺がそれに対して展開を提案していって、けっこうすぐにできたよね。
イイカワ うん。僕はけっこうイメージから曲を作ることが多いんですよ。今回は単純にお客さんが何万人かでジャンプしてるっていう、そういうのがいいなあって思ってイメージを猪狩に伝えて。
猪狩 俺もそれ聞いたときに海外のフェスとか、「フジロック」(FUJI ROCK FESTIVAL)の夕方に最初のリフを弾いてる感じがすごくイメージできて。「“夕方のフェス”をテーマにいこう!」みたいな。
イイカワ 自分はトランペットなのに、ホーンのことはまったく考えてなかったですね(笑)。ギターとリズムと歌メロを持ってきて、ホーンは後回しって感じでした。今回新しく入ったメンバーが曲を作って、それをメインコンポーザーの猪狩が「いいね」って思ってくれて、それがアルバムに入ったっていうのは、個人的には意味があるかなあと思ってますね。
猪狩 自分の引き出しももちろん入ってるけど、ケンくんの提案が自分にはなかった引き出しやったから「これおもろいな」って普通に思いましたね。
──YUJIさんが作曲に参加している「Truth Inside」はどのようにしてできたのでしょうか?
猪狩 これはでっかいコテージを借りてやった曲作り合宿のときにできた曲で。コテージの中にはスタジオがあるんですけど、スタジオにずっとみんながいるわけじゃないんですよ。それぞれラーメン食ってたり、テレビ観てたりバラバラで、誰かしらが曲の片鱗を作ったらスタジオ集合みたいな。それでジャムって「なんかイマイチやな。解散!」っていう感じで。夜はみんなで飲んでたんですけど、この3人は朝の5時とかまでずっと飲んでました。毎日夜中の3時ぐらいになったらベロベロで「はいYUJI、俺らが気持ちよくなれるやつ適当に歌って!」ってリクエストして。
YUJI 合宿の初日から深夜3時になると絶対歌えって言われるんです。最初は自分でアコギで弾けるOasisとかやってたんですけど、毎晩言われるんでいよいよネタがなくなってきて、日中曲作ってる最中に「これは夜用の曲」ってネタを作るようになってきて(笑)。
猪狩 それで作った曲を歌い出したらAメロとかBメロは2人とも「全然入ってこないわー」ってなってたけど、サビ聴いたら「そのサビ、もしかしたらいいかもよ」ってなって。それで翌日サビ以外の部分を俺が付けてできたのがこの曲ですね。この曲めっちゃ好きです。今までのHEY-SMITHではたぶんできなかった曲やし、いい感じにメタル感もあって、でもポップやし。
やりたいことがたくさんある
──HEY-SMITHとして初めてのレコーディングを終えて、今どのような心境ですか?
イイカワ 早くも次のアルバムが作りたいですね。このメンバーになって動き始めてまだ1年経ってないし、まだまだやりたいことがたくさんあります。
猪狩 まじで? 俺全然作るつもりないねんけど(笑)。
イイカワ 俺とかYUJIは、今回初めてレコーディングに参加して“対猪狩”のやり方が終盤にやっとわかってきたんで。猪狩のツボとか、会話のテンポとか、話の組み立て方とか。だから次はもっとぐいぐい食い込みたいなっていう野望がありますね。
猪狩 ふふふ(笑)。ただ俺はもうアルバムを1年とか2年単位で出す気はないけどね。
イイカワ じゃあ次のアルバムに向けて力をためる期間にしますかね。あとはとにかくライブですね。
猪狩 そうやね。「ハジマザ」(「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2016」)もあるし、ひさしぶりの47都道府県ツアーも始まるし。長いツアーってめっちゃ楽しいけどしんどいんですよね。だってファイナル12月3日ですよ、もう俺たちの1年は終わるんだなっていう(笑)。
YUJI 単純にツアー日程見せられたときはゾッとしましたね。
猪狩 言っとくけど、ツアーとか「ハジマザ」組んでる俺のほうがゾッとしてるからな。君らは見るだけやんか。
イイカワ だけど、いきなり決定したものをドーンと見せられるこっちの身にもなってほしいですね。
猪狩 あはは(笑)、確かにね。
YUJI 対バン相手もTwitterで初めて知るっす。
猪狩 「ハジマザ」の出演者とかも相談しないから。
──メンバーでも猪狩さんから何が出てくるかわからないんですね。
猪狩 うん。お楽しみに!(笑) 「ハジマザ」にしてもツアーにしても、新しいメンバーと一緒に作った曲をやれるんですごく楽しみです。今のHEY-SMITH、めっちゃいいですからね。
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- ニューアルバム「STOP THE WAR」2016年5月18日発売 / CAFFEINE BOMB ORGANICS / Fried Rice Inc.
- 「STOP THE WAR」
- 初回限定盤 [CD+DVD+フォトブック] 3132円 / CBR-75
- 通常盤 [CD] 2592円 / CBR-76
CD収録曲
- Instream
- Stop The War
- Dandadan
- Don't Worry My Friend
- 2nd Youth
- Alive And Lucky
- Truth Inside
- Let Me Fly
- Radio
- What They Hide
- Summer Breeze
- Before We Leave
- States Of War
- Bogey Loves(ボーナストラック)
初回限定盤DVD
- 「Stop The War」ミュージックビデオ
- 「Stop The War」ミュージックビデオメイキング映像
HEY-SMITH(ヘイスミス)
猪狩秀平(G, Vo)を中心に結成されたパンクバンド。2006年に大阪を拠点にライブ活動を開始し、2009年に1stミニアルバム「Proud and Loud」でCDデビュー。2010年の1stフルアルバム「14 -Fourteen-」を経て2011年にリリースした2ndフルアルバム「Free Your Mind」はオリコン週間インディーズランキングで1位を記録する。2012年には「FUJI ROCK FESTIVAL '12」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO」といったフェスに参加したほか、coldrain、SiMとの合同ツアー「TRIPLE AXE TOUR 2012」を開催した。2013年5月、2年ぶりのフルアルバム「Now Album」を発表し47都道府県を回るレコ発ツアーを大成功に収める。2010年より自主企画イベント「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」を主催しており、2014年9月には大阪・泉大津フェニックスにて初の野外開催を成功させた。2015年1月に同イベントの模様を収録したDVD「Live at OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」をリリース。メンバーチェンジを経て、現在は猪狩秀平、YUJI(B, Vo)、満(Sax)、Task-n(Dr)、かなす(Tb)、イイカワケン(Tp)の6人体制で活動を行っている。2016年5月には新体制で初めてレコーディングしたアルバム「STOP THE WAR」を発売した。