ナタリー PowerPush - Hermann H. & The Pacemakers

10年ぶりの新作を発表 バンド復活エピソード

ブランクがあったことも、それはそれでよかった

若井悠樹(Wolf)

──約7年ぶりにステージに立ってから、今と昔のバンドシーンで変化などは感じましたか?

若井 俺は一切(音楽を)やってなかったから、ホントに浦島太郎でしたけどね。

岡本 この人はThe Rolling Stonesと矢沢永吉しか知らないからね、もともと。

若井 そうなんだけどね。クリープハイプとかWHITE ASHも、対バンが決まってからCDを聴いてみて、「うわ、カッコよくね?」っていう(笑)。

──ウルフさんは普通に仕事をされてたんですか?

若井 そうです。今もやってます。

平床 それがいいんですよね。それぞれに人生があって、仕事もあって、そのうえでバンドに還元するというか。バンドだけに依存してない感じが強いというか、以前とは違った力を生んでるんじゃないかなって。

岡本 うん。若いときはバンドしかないと思ってたし、それがなくなるのが怖いから、どんどんブレも生じてきて。周りからもいろんなことを言われるしね。こっちはよくわかってないのに「売れなくちゃいけない、お客さんを入れなくちゃいけない」ってことだけは植え付けられるっていう。だけど、そういうことを乗り越えてみると、「なんだ、楽しく音楽をやればいいんじゃん」ってだけで。

平床政治(G)

──それって、学生のときにバンドを始めたときの状況に似てるんじゃないですか?

平床 そうなんですよね。よく言うんですけど、僕らは音楽でつながってるバンドじゃなかったんです。そうじゃなくて、ただの仲良しだから。「ああいうバンドを目指そうぜ」みたいなこともなかったし、「楽しく、センスのいいことやろう」ってだけで。今はそこに戻った感じなのかな。

──戻るためには約10年という時間が必要だった、と。

平床 さすがにそんなには要らないと思うんだけど(笑)。ブランクがあったことも、それはそれでよかったと思うんですけどね。

岡本 俺の中にも平床の中にも、存在がなくなってたわけですからね、ヘルマンは。10年っていう時間の中で培った音楽や文化を統合して、またゼロからカッコいいものを作る。「今やるなら、これだよね」っていうのが一致するまでに、これくらいの時間がかかったっていうことだろうね。

平床 うん。

岡本 でも、面白いですよね。復活ライブをやって、ベスト盤(2013年3月発表のベストアルバム「The Best of Hermann H. & The Pacemakers」)を出して、今回のアルバムにつながって。全部がすごくスムーズだったんですよ、人間関係を含めて。俺が一番デカいなって思うのは、“おもいやり”じゃないかなって。

左から平床政治(G)、岡本洋平(Vo, G)、若井悠樹(Wolf)。

平床 おもてなし?

岡本 いや、“おもいやり”(笑)。お互いに“おもいやり合える”っていうのがいいんじゃないかなって。

平床 相手のことを考えられるってことね。

岡本 そう。個々の個性だったり、人生だったり、文化だったりを考えられるようになった。ガキの頃とかって、同じ考えじゃないと「どっか行けよ」ってなっちゃうじゃないですか。今はそういう感じじゃないですからね。

現在進行形のヘルマンの音になるという確信

──アルバム「THE NOISE, THE DANCE」の制作はどんな雰囲気だったんですか?

平床 すごく自然でしたね。まず、岡本のデモを聴いた時点で、僕らが初めてやり始めたときの初期衝動感があったんですよ、よくも悪くも。そこに立ち返って、また新しいものを作っていこうぜっていう気持ちも伝わってきたし、俺としても「今だったら、また違う感じでアウトプットできるんじゃねえ?」っていうのがあって。メンバーそれぞれが10年間培ってきたものを持ち寄って、この時代で鳴らしたら、現在進行形のヘルマンの音になるっていう確信もあったし。

岡本 そう言うわりには、だいたいレコーディング当日まで歌詞ができてなかったけどな(笑)。あとね、いい意味で気合いが入り過ぎてなかったのもよかったと思うんですよ。

平床 そうだね。

岡本洋平(Vo, G)

岡本 基本的には俺が曲の全貌やメロディを作って、そこに政治が歌詞を乗せるんですよ。それを受けて「ああしよう、こうしよう」って決めていくんだけど、リフ、サウンド、メロディをヘルマンらしく配置していくだけなんですよね。そういうものがバンドサウンドの中でぶつかり合えば、自然とカッコいいものになるというか。そんなに難しく考えなくても「これは俺らにしかできないだろうな」と思えるものが自然に出てくるっていう。

平床 「これ以上突き詰めても、結果は何もないな」っていうのがわかるようになったんですよね。自分たちが求めているものがすぐに見えるようになったし、料理と同じように「この材料を入れればいい」っていうこともわかるようになって。前はもっとゴチャゴチャ考えてましたからね。

岡本 自分たちの音楽の焦点を瞬間的に合わせることができるんですよね、今は。

ニューアルバム「THE NOISE,THE DANCE」2014年1月29日発売 / 2800円 / Mini Muff Records / XQDF-2031
収録曲
  1. Welcome Home Heroes
  2. San Jose
  3. Dance, don't run!
  4. THE COMPOUNDER
  5. The Big Upset / 番狂わせ
  6. スターライト
  7. MISTER MEMENTO
  8. WHO’S The Boss??
  9. 王様の瓶
  10. Wake up & Go
ライブ情報
Hermann H. & The Pacemakers 全国ツアー「"DANCE 'EM ALL" 2014」
  • 2014年2月20日(木)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / 髭
  • 2014年2月22日(土)北海道 札幌KRAPS HALL
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / テスラは泣かない。
  • 2014年3月1日(土)東京都 赤坂BLITZ
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers
  • 2014年3月9日(日)大阪府 Shangri-La
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers
  • 2014年3月21日(金・祝)愛知県 APOLLO BASE
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / キュウソネコカミ
Hermann H. & The Pacemakers
(へるまんえいちあんどざぺーすめーかーず)

岡本洋平(Vo, G)、平床政治(G)、溝田志穂(Key)、若井悠樹(Wolf)からなる4人組バンド。1998年1月より活動を開始し、翌1999年10月に1stミニアルバム「HEAVY FITNESS」を発表。2001年9月にマキシシングル「言葉の果てに雨が降る」でメジャーデビューを果たす。4つ打ちを取り入れたキレのあるロックナンバーや、若井のアグレッシブなステージパフォーマンスなどで人気を博す。2003年1月にギターの平床が脱退し、その後バンドは2005年3月に活動を休止した。しかし約7年後の2012年2月に東京・LIQUIDROOM ebisuにて1日限定の復活ライブを開催し、6月に本格的な活動再開を発表。さらに2013年1月には平床が再加入し、その後バンドは「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」「BAYCAMP2013」などの大型イベントに出演。ロックファンに健在ぶりをアピールした。2014年1月に活動再開後初となるアルバム「THE NOISE, THE DANCE」をリリースし、2月からはアルバムを携えたツアー「"DANCE 'EM ALL" 2014」で全国5都市を回る。