ナタリー PowerPush - Hermann H. & The Pacemakers

10年ぶりの新作を発表 バンド復活エピソード

2012年2月、約7年ぶりのライブを東京・LIQUIDROOM ebisuで開催し、チケットが即完売となる中で奇跡の復活を遂げたHermann H. & The Pacemakersが実に10年ぶりとなる新作「THE NOISE, THE DANCE」を完成させた。マシータ(Heavenstamp / ex. BEAT CRUSADERS)、山下壮(LUNKHEAD)などのサポートメンバーに加え、中村一義、町田昌弘(100s)、あずままどか、ヨースケ@HOMEがゲスト参加した本作は、ヘルマン特有のオルタナ / ミクスチャー感覚が気持ちよく炸裂した充実作となった。

今回ナタリーでは、岡本洋平(Vo, G)、平床政治(G)、若井悠樹(Wolf)にインタビュー。バンドの復活から今回のアルバムに至る経緯を語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 佐藤類

またヘルマンをやってみよう

左から平床政治(G)、岡本洋平(Vo, G)、若井悠樹(Wolf)。

──10年ぶりの新作「THE NOISE, THE DANCE」、すごくよかったです。

平床政治(G) お、ホントですか?

──本当に素晴らしいと思います。10年もブランクがあったバンドが、まったくタイムラグを感じさせないような作品を生み出すことって、すごく稀だと思うんですよね。

平床 そうかもしれないですね。なんでだろうね?

岡本洋平(Vo, G) たぶん、いい意味で1回転したんだよね、政治が戻ってきたことも含めて。2012年に「一夜限りでいいから、もう1回ライブをやろう」って思ったときも政治に声をかけたんだけど、そのときは「できない」ってことで、俺と溝田(志穂 / Key)とウルフ(若井悠樹)とサポートメンバーでやって。

──平床さんはアンコールで1曲だけギターを弾いたんですよね。

岡本 うん。その後、「またヘルマンをやってみよう」ってなったとき、「もし新しい作品を作るのであれば、平床も一緒じゃないと意味がない」っていうのが俺の中にあったんですよね。で、こいつ(平床)にも曲を書いてもらうという前提で何曲かデモを作り始めて……。そのときもやる気なかったんだけどね、この人は。

岡本洋平(Vo, G)

平床 (笑)。すごくザックリした始まり方だったんですよ。「また一緒にやろうぜ」という話をしたわけでもなく、「あれ? なんだか毎月のように酒に誘われるようになってるぞ」っていう。それまで10年くらい会ってなかったのに。

岡本 ホントにそうだよね。

平床 音信不通だったからね。

──メンバー全員、そういう状態だったんですか?

岡本 うん。ヘルマンが活動休止してからは、ウルフにも会ってなかったし。

若井悠樹(Wolf) そうだね。

平床がいないヘルマンは、ヘルマンではなかった

岡本 でも、復活ライブ以降、政治と飲みに行ったり、みんながウチに遊びに来たりするようになって。

平床政治(G)

平床 また普通に仲良くなっただけなんですけどね。

岡本 そのタイミングで、俺が作ってたデモを自宅の作業部屋でドン!と聴かせて……。

平床 ……そのシチュエーションの話をいろんなところでしてるんですけど、ひとつ違うことがあるんですよ。岡本は「ドン!と聴かせた」って言ってるけど、実際は俺が「そろそろ聴かせろ」っていう感じだったんですよ。「わかったから、聴いてみようよ」って。

岡本 どっちでもいいよ(笑)。

若井 (笑)。俺と岡本の中で「今日は正式に『やらねえか?』って平床に言おう」っていう日があって。でも、宴もたけなわになっても言い出さないヤツがいたっていう。

平床 その雰囲気はバレバレだったんですけどね。

──岡本さんのデモを聴いたときの感触はどうだったんですか?

岡本 そのとき覚えてるのは、平床が「これならイメージできるよ」って言ってくれたことなんですよね。

平床 うん。「これならイケるな」っていうか、ピンと来たという言い方しかできないんだけど。

岡本 そこで平床も含めて「また一緒にやろう」ということになって。

──平床さんがいないとヘルマンじゃない、という意識が強かったんですね。

岡本 うん、そうじゃないとダメだったろうし。平床が抜けたあとのヘルマンっていうのは、俺が歌詞も曲も全部書いていて、それがつらくなってきたんですよね。これはヘルマンじゃないと思って……。

──それが活動休止した理由?

岡本 うーん、そうですね……。

若井悠樹(Wolf)

若井 キツかったんですよね、何か。「(バンドが)あるからやってる」っていう部分もあったと思うし。

岡本 俺がダメになったのが、一番デカいんじゃないかな。目標もなく、ただ続いていくっていう、クリエイティビティのなさだったり。スタッフは盛り立ててくれてたんですけどね。

若井 結局、作詞作曲は岡本が全部やってるわけで、どうしても限られてくるというか、化学反応的なものも生まれづらくなってたと思うんですよ。そのうちメンバーもキツくなっていって……。俺は俺で「たくさん踊らなきゃ」とか、おかしなベクトルに進み始めて(笑)。

岡本 (笑)。ひとつのカルチャーを共有できなくなったんですよね、最後は。で、ここが限界だろうなって。

ニューアルバム「THE NOISE,THE DANCE」2014年1月29日発売 / 2800円 / Mini Muff Records / XQDF-2031
収録曲
  1. Welcome Home Heroes
  2. San Jose
  3. Dance, don't run!
  4. THE COMPOUNDER
  5. The Big Upset / 番狂わせ
  6. スターライト
  7. MISTER MEMENTO
  8. WHO’S The Boss??
  9. 王様の瓶
  10. Wake up & Go
ライブ情報
Hermann H. & The Pacemakers 全国ツアー「"DANCE 'EM ALL" 2014」
  • 2014年2月20日(木)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / 髭
  • 2014年2月22日(土)北海道 札幌KRAPS HALL
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / テスラは泣かない。
  • 2014年3月1日(土)東京都 赤坂BLITZ
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers
  • 2014年3月9日(日)大阪府 Shangri-La
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers
  • 2014年3月21日(金・祝)愛知県 APOLLO BASE
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / キュウソネコカミ
Hermann H. & The Pacemakers
(へるまんえいちあんどざぺーすめーかーず)

岡本洋平(Vo, G)、平床政治(G)、溝田志穂(Key)、若井悠樹(Wolf)からなる4人組バンド。1998年1月より活動を開始し、翌1999年10月に1stミニアルバム「HEAVY FITNESS」を発表。2001年9月にマキシシングル「言葉の果てに雨が降る」でメジャーデビューを果たす。4つ打ちを取り入れたキレのあるロックナンバーや、若井のアグレッシブなステージパフォーマンスなどで人気を博す。2003年1月にギターの平床が脱退し、その後バンドは2005年3月に活動を休止した。しかし約7年後の2012年2月に東京・LIQUIDROOM ebisuにて1日限定の復活ライブを開催し、6月に本格的な活動再開を発表。さらに2013年1月には平床が再加入し、その後バンドは「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」「BAYCAMP2013」などの大型イベントに出演。ロックファンに健在ぶりをアピールした。2014年1月に活動再開後初となるアルバム「THE NOISE, THE DANCE」をリリースし、2月からはアルバムを携えたツアー「"DANCE 'EM ALL" 2014」で全国5都市を回る。