先人たちの築いたものがあるから今があるんだぜ
──今回のWILYWNKAさんのアルバムはメロディアスなフロウもあれば、リズムに合わせてワードをしっかりとリズミカルにデリバリーするオーソドックスなラップも目立つ作品でした。
WILYWNKA 自分のアルバムでは1曲目の「Return Of The Rap」がお気に入りですね。これが俺の考えるラップというか。
GeG どういうこと?
WILYWNKA 今の時代、ヒップホップはものすごく多様化しているから、俺はいろんな表現があっていいと思うけど、それでも「それは違くないか?」って感じる曲もあって。だから俺は自分がカッコいいと思うラップをアルバムの1曲目で提示したかったんですよね。ちなみにタイトルは1990年代に流行ったマーク・モリソンの「Return Of The Mack」をモジってるんですよ。“The Mack”には「イケてる男」って意味もあって。この曲は“イケてるラップが帰ってきたぜ”ってニュアンスなんです。このタイトルはヒップホップ愛あふれる1%(WILYWNKAが所属するANARCHY主宰レーベル)のスタッフたちと一緒に考えました。
VIGORMAN 俺の「SOLIPSISM(独我論)」はタイトルの通り、自分のやりたいことを本当に好き勝手にやらせてもらったんですよ。1stアルバムってそういうもんだと思うし。一方で、タカは今回2枚目のアルバムだから、「何を言えばいいのか」って部分でけっこう悩んでたんですね。それを側で見てたから、今の話も納得というか。タカが今感じていることを素直に作品に落とし込んだなって感じますね。
GeG じゃあタイトルはどういう意味なん?
WILYWNKA 2曲目の「PAUSE」がそのままアルバムのタイトルになってるんだけど、この曲自体はカメラがテーマなんですよ。時間って絶対に止められないものだけど、カメラはその瞬間を切り取ることができますよね? 最近はどのスマホにも付いているから、みんな当たり前のように使ってるけど、冷静に考えてカメラってすごいなと思ったんです。今の世の中って本当にものすごいスピードでいろんなことが移り変わっていく。でもちょっと立ち止まって周りを見渡してみると、そこには先人たちが築き上げてきたすごいものがたくさんある。だから1回立ち止まってみよう、みたいな意味ですね。
VIGORMAN おお、いいこと言うな(笑)。
WILYWNKA この前ロケのとき、たまたま話してたんだけど、今の世の中っていろんなことが進化しすぎて、あらゆることが簡略化されているような気がするんだよね。極端な例かもしれないけど、今だったら女の子への告白はLINEのスタンプ1個で済むわけやん。でも昔の人はそもそも携帯がなかったから、家に電話して、家族の人が出ちゃって気まずい思いとかしたわけでしょ。確かに便利な世の中はいいと思うけど、不便さの中にあったエモさを思い出したいっていうかさ。
GeG なるほどね。それが1曲目の「Return Of The Rap」への思いとかかってるわけか。今のヒップホップシーンはなんでもありな感じになってるけど、先人たちの築いてきた音楽を踏まえて、今があるんだぜ、的な。
WILYWNKA さすがGeG! そういうこと。
来年は変態紳士クラブでアルバム出さな
──今回の3作品には変態紳士クラブの曲が1曲ずつ入っていますね。
GeG マジでポイントはそこなんです。
VIGORMAN 俺のは「Vintage From Teenage」で、タカのは「CIROC」、GeGのは「Home」。今のところ、変態の曲が聴けるのは俺ら3人の作品しかない。
GeG 俺らはなるべくその感じでやっていきたいからね。
WILYWNKA この3曲だったら「Home」が一番好きだけど、個人的にいいラップができたと思ったのはVIGORMANの「Vintage From Teenage」だな。
VIGORMAN 俺はスピットするタカのラップが好きで。しかもこの曲はエモい。かなり気に入ってる曲ですね。
WILYWNKA VIGORMANの1stアルバムだから、俺自身もかなり思い入れがあったんですよ。昔からずっと一緒にいて、いろんな経験をしてきたからこそこの曲があるというか。この曲はライブで歌いたいな。
GeG 俺は「CIROC」がかなり好き。これ、俺らがいっつも飲んでるウォッカの名前なんですよ。大阪で俺らが一番シロックにお金を使ってると思う(笑)。馬鹿騒ぎの歌ですね。
VIGORMAN 「右手にOrange Juiceを持つ / 左手にCIROCのボトル」っていうのはまさに俺ら(笑)。
WILYWNKA この曲はドラムもかなりいい。
GeG 俺、もともとメロウな曲が大好きで、アルバムもそういう曲ばっかりだから、2人の作品ではあえて違うテイストにチャレンジしてみたんですよ。
VIGORMAN でもさ、2人とも知ってた? 変態紳士クラブの曲って全部で10曲しかないんやで(笑)。
GeG アルバム1枚分すらできてない(笑)。
WILYWNKA 「ZIP ROCK STAR」を作ってたときは、俺まだ一二三屋でバイトしてたんだもんな。今考えるとよく作ったと思うよ。昼はバイトして、朝の7時くらいまで作業して、また一二三屋に行くっていう。
VIGORMAN そんな状態でもタカは自分のミックスCD売りまくってたよな(笑)。
WILYWNKA GeGと「CCC」を作る前に自分でプリプロしたミックスCDを2枚作っていて。たぶん合計で5000枚は売ってると思う(笑)。音楽やってるとなかなか食えないんですよ。だから日銭を作るために悪いことやったりする奴も少なくない。けど、それじゃダメだってHIDADDYが教えてくれたんです。だから俺は自分で作ったミックスCDを必死で売ってた。そうすれば悪いことしなくて済むから。クラブとかでもめっちゃ売ってた。
VIGORMAN でも2017年に「ZIP ROCK STAR」出してからここまで早かったよな。マジであっという間だった。
WILYWNKA あっという間だったけど、やっぱりすごい大変だったよな。アルバムを10枚出してる先輩とか、このサイクルを10回も繰り返しているわけでしょ? マジで考えられない。改めてすごすぎるわ。
GeG とりあえず来年は変態紳士クラブでアルバム出さなあかんな。
WILYWNKA いや、その前に俺らのソロアルバムをしっかり聴いてもらわなあかんやろ(笑)。
VIGORMAN どうなることやら(笑)。
GeG 3人共、真剣に作ったアルバムなんで、みんな聴いてください!
ライブ情報
- WILYWNKA PAUSE TOUR 2019
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- 2019年12月8日(日)東京都 WWW X
- 2019年12月25日(水)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2019年12月28日(土)福岡県 DRUM Be-1
- 2019年12月30日(月)大阪府 なんばHatch
- GeG“Mellow Mellow ~GeG's PLAYLIST~”リリースSP
【メロメロライブ~GeG's Live Set~】 -
- 2019年11月8日(金)大阪府 クリエイティブセンター大阪 STUDIO PARTITA