ナタリー PowerPush - Heavenstamp

混沌の時代に新進気鋭バンド現る 2011年最新型サウンド

2011年に大きな飛躍が期待される男女混合バンドHeavenstampが「Stand by you E.P.+REMIXES」でメジャーデビューを果たす。彼らはSally#Cinnamon (Vo, G)、Tomoya.S(G)、Shikichin(B)、Mika(Dr)からなる4人組で、2009年にバンドを結成。昨年リリースしたインディーズ盤「Hype -E.P. + REMIXES」は処女作でありながらBLOC PARTYのラッセル・リサックがリミックスで参加し、一躍音楽ファンの注目を浴びた。ギターロック、ディスコ、パンク、シューゲイザーの要素を巧みに取り入れ、曲ごとに表情を変える様はまさに“新世代”ならぬ“新時代”バンドの風格を感じさせる。

ナタリーでは、このたびワーナーミュージック・ジャパンからメジャー作を発表する彼らにインタビューを実施。バンドの発起人&リーダーであり、ほぼすべての作曲を手がけるTomoya.S(G)と、静かなるパワーを秘めたフロントSally#Cinnamon(Vo, G)にHeavenstampの成り立ちを語ってもらった。

取材・文/鳴田麻未

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メンバーは全員が本気で音楽と向き合える人でなければ

──メジャーデビュー盤を作り終え、いよいよリリースされる今の気持ちはいかがですか?

Sally#Cinnamon(Vo, G) 「Stand by you」はHeavenstampの最初のライブから演奏している曲なので、この曲でメジャーデビューできるのは非常にうれしいです。間違いなく良い作品だと思うので、1人でも多くの人に届くといいなと思います。だから今は発売されるのが楽しみですね。

Tomoya.S(G) うん、自分たちとしては本当に最高の作品ができたと思ってるので、早く聴いてほしいなっていう気持ちです。

──ではまず最初に、バンド結成のいきさつから教えてください。

Tomoya.S バンド組もうって言い出したのは自分です。きっかけは、2008年の「FUJI ROCK FESTIVAL」でMY BLOODY VALENTINEのライブを観て、ものすごい衝撃を受けたから。

──MY BLOODY VALENTINEのライブを観て、なぜバンドをやろうと?

Tomoya.S もう10代の頃から大好きで、でもずっと活動休止状態だったからたぶん生で演奏を観ることは一生ないのかなと思ってたんです。それが観られたっていう感動もすごかったし、実際ライブのエネルギーが凄まじくて、触発されたんだと思います。それまでもバンド活動はしてたんですけど、僕はそのときに、これまでとは違う、今の時代に合っていて新しくてカッコいいバンドを作りたいなと思って。それで、知り合いの中から一番イメージに合う3人に声をかけました。

──それまでやっていたバンドはどういう系統だったんですか?

Sally#Cinnamon いわゆるJ-POPの曲を歌うバンドで、私はギター&ボーカルでした。

Tomoya.S 僕は男4人組で、UKギターロック直系っていう感じの音でしたね。自分がボーカルで、今ベースのShikichinが当時はギターで入ってました。

──ライブで感動したTomoyaさんは、「今のバンドをがんばろう」ではなく「新しいバンドを作ろう」と思った。それはどうしてですか?

Tomoya.S うーん、正直、前のバンドに限界を感じたというか……当時のバンドは10代の頃の初期衝動をそのまま表現するような感じで続いていて、自分はその間にいろんな音楽を知ったり新しいことを経験したのに、その経験値が反映されたバンドではなかったんですね。僕はそれに満足できなくなっていたというか。音楽がすごく好きで一生やっていきたいんだけど、このままじゃ一生続けられないなっていう気がした。なので、これを止めて新しいことを始めようという気持ちになったんです。

──じゃあTomoyaさんの中では、今度のバンドは一生続くものにしようっていう決意があったんですか?

Tomoya.S ありましたね。で、一生続けるには、メンバー全員が本気で音楽と向き合える人でなければと思ってました。多いじゃないですか、簡単に「俺結婚するからバンド辞めるわ」とか「就職するわ」とか言って、志半ばにメンバーが離れていき空中分解しちゃうようなバンド。過去にそういうケースをたくさん見ていて、それでは音楽を一生続けられないなって思ってたんです。だからこのバンドには本気な人たちに集まってもらいたかった。

メンバーの条件:フジロックに行ったことがある人

──では結果的にTomoyaさんがSallyさん、Shikichinさん、Mikaさんに声をかけた理由を教えてください。

Tomoya.S それぞれミュージシャンとしてとても優れてるっていうのと……大前提として、フジロックに行ったことがない人は絶対に入れるつもりなかったんです。

──あはは(笑)。すごく具体的な条件ですね。

Tomoya.S だってフジロックのGREEN STAGEを観てバンドやりたいと思ってるのに、その景色を観たことがない人ではダメじゃないですか。わからない人と同じものを目指すのはできないなと思って。3人は、あのマイブラのライブを観た、もしくはフジロックに行ったことのある人なので最低条件はクリアです(笑)。その上で、僕と同じビジョンを共有できるなと思えた人でした。

──中でも、今隣にいるSallyさんに関してはどういったところに惹かれたんでしょう。

Tomoya.S 以前やってたバンドをお客さんとして観に行ったことがあるんですけど、典型的なJ-POPっぽいバンドの曲に対して、彼女にはそこに収まりきってない圧倒的な存在感と歌声がありました。その当時から、よくある歌モノだけに収まるのはもったいないなぁという思いがあって、だからバンドに誘ったんです。

Sally#Cinnamon 私はそのとき音楽活動を一旦止めて新しいことを模索してる時期だったんですね。私も前のバンドがどこかつまらなくて、もっと密接に音楽とかかわるにはもっと面白いものが必要な気がするなと思って、フジロックとかのフェスによく行ってました。そんなときTomoyaに「新しいバンド作るんだ。ぜひ一緒に」と言われて、すぐに「ぜひ」と返事をしましたね。

──その「もっと音楽を」「もっと面白いものを」と欲してる感じが、Tomoyaさんからするとパワーを持て余してるように見えたんですかね。

Tomoya.S まさにそうですね。あの状態で収まってたら良い形にならなかったんじゃないかなって。まぁ僕も同じだけど、やっぱり以前のバンドはビジョンがハッキリ描けてなかったんだろうなと思いますね。

Sally#Cinnamon そうだね。いつも何かが抜け切らなくて、何かはわからないんだけど、漠然ともっと面白いことを探してました。

ミニアルバム「Stand by you - E.P. + REMIXES」 / 2011年5月11日発売 / 1500円(税込) / Warner Music Japan / WPCL-10934

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CD収録曲
  1. Stand by you
  2. Pops
  3. Cambrian.
  4. Stamp your feet
  5. Stand by you - 80KIDZ remix
  6. Pops - Bloc Party vs CoPilots Drunk In Charge remix
  7. Stamp your feet - Pepe California remix
Heavenstamp(へぶんすたんぷ)

それぞれ別のバンドで活動していたSally#Cinnamon(Vo, G)、Tomoya.S(G)、Shikichin(B)、Mika(Dr)が集まり2009年に結成。ライブをベースに活動し、2010年12月に初のCD作品「Hype -E.P.+REMIXES」をインディーレーベルGoldtone Redordsからリリース。本作はBLOC PARTYのメンバーであるラッセル・リサックがリミックスで参加し、各方面から高い評価を受ける。2011年1月にはフレンチロックバンドJAMAICAと東阪でライブを行うなど、注目度が高まる中、ワーナーミュージック・ジャパンと契約。同年5月にミニアルバム「Stand by you - E.P.+REMIXES」でメジャーデビュー。ニューレイブ以降のギターロック、ディスコ、パンク、シューゲイザーサウンドを日本人的ポップ感覚で消化した、美しいアンサンブルを武器に活動している。