広大な草原にいるようなイメージでした
──シングルに収録された2曲はいずれも作詞が松井洋平さん、作編曲が高橋諒さんです。このうちオープニングテーマになっている「Feel You, Heal You」は、2ndミニアルバムに収録されていたヒーラーガールズ初のオリジナル曲「Feel You, Heal You ~sêrênité~」のリアレンジバージョンですね。
礒部 もともと「sêrênité」バージョンとして歌っていた曲だったので、「『Feel You』がオープニングになったぞ!」みたいな。
堀内・吉武・熊田 うんうん。
礒部 その驚きと感動がすごく大きかったのを覚えています。しかも「sêrênité」は教会音楽のような神聖さが感じられるアレンジで、もちろんそれも大好きだったんですけど、オープニング版のアレンジを初めて聴いたときにオーケストレーションの豪華さに圧倒されて。まさにミュージカルアニメにふさわしい楽曲に生まれ変わっていて、「これはまた歌うのが楽しみだ」と思いました。
堀内 本当に壮大なアレンジなので、レコーディングも広大な草原にいるようなイメージで臨んでいて。例えば「サウンド・オブ・ミュージック」の草原のシーンとかを思い浮かべつつ、音楽の風に包まれながら深呼吸して、心の底から思いを届けるようにして歌いましたね。あと、レコーディング当日はまず自分自身が癒されようと思って、一番好きな深緑色のワンピースを着て行きました。
吉武 そうなんだ? レコーディングは1人ずつだから初めて知った。
礒部・熊田 うん。
吉武 オープニングの「Feel You」は「sêrênité」とは歌い分けも全然違って、特にサビを4人全員で歌うということは今までなかったんですけど、その分、一体感もありました。花凜ちゃんも言っていたように、ヒーラーガールズの初めてのオリジナル曲が、自分たちが出演するアニメのオープニングになったという喜びも本当に大きくて。歌詞も当然アニメとリンクしているので、自分が矢薙ソニアを演じてきた中で得た感情だったりを入れ込もうと考えながら、すごく新鮮な気持ちで歌えました。
熊田 私はレコーディングのときに、ものすごく動いた記憶があって。
──動いた?
熊田 もちろん走り回ったりしていたとかではないんですけど、軸はブレないようにしつつ、マイク前で手を大きく伸ばしてみたり。ヒーラーガールズをずっと見てきてくださっているディレクターの土橋(陣)さんから「もっと仲間を感じて」といったディレクションをいただいて、そのイメージを大切にした結果、全身を使って歌っていましたね。ちなみに当日は、まり菜ちゃんはお気に入りのワンピースを着て行ったと言っていましたけど、私はほぼすっぴんで行きました。
吉武 それも知らなかった(笑)。
熊田 私は普段、メイクをするのがすごく好きなんですけど、「Feel You」を歌うときはありのままの自分で、ノーメイクで野に放たれるじゃないですけど……。
堀内 覚悟を決めて。
熊田 そう、覚悟を決めて、飾らずに、より自然なアプローチを目指しました。
礒部 さっきも言ったように私はミュージカルが大好きで、自分自身も舞台に立つことがあるんですけど、「Feel You」のレコーディングもそのときの感覚に近くて。私もこの曲には草原のイメージがあって、すごくきれいな空気と風に包まれて、音楽と一緒にサーフィンしているみたいな感じで、正直に感情を解放して歌うことができましたね。
堀内 花凜ちゃんが歌う「鼓動を高鳴らすパーカッション」というフレーズは聴いたとき、そのまんまなんですけど「鼓動、高鳴ってる!」と思って。花凜ちゃんの音への正直さをすごく感じました。
礒部 本当? うれしい! 素敵なオケに身を任せてレコーディングできたと思います。
痛みに寄り添ってくれる楽曲
──もう1曲の「Believe like Singing.」は「ヒーラー・ガール」のエンディングテーマです。オープニングの「Feel You, Heal You」はスケール感とともに力強さも感じられる曲でしたが、こちらはひたすらに優しいですね。
吉武 私の勝手なイメージでは、色でいうとオープニングの「Feel You, Heal You」は緑で、エンディングの「Believe like Singing.」はオレンジなんですよ。「Believe like Singing.」は最初に歌詞だけいただいたんですけど、自分自身に問いかけているようでもあり、誰かの背中を押すようでもある温かい歌詞で。だからこの曲は素の自分で、ストレートに感情を込めることを意識しました。
礒部 エンディングテーマはオープニングテーマとはまた違う形で、いろんな人のいろんな状況に寄り添ってくれたり、何かの目標に向かって一緒に歩いてくれる曲だと思っていて。
堀内 作品のキャラクターたちも寄り添い合って、夢に向かって進んでいるからね。
礒部 そうなの。それプラス、個人的な話をすると、アニメの放送開始前にオープニングとエンディングの映像だけYouTubeで公開されたんですけど、その日がヒーラーガールズとは別の自分の公演がコロナ禍で中止になってしまった翌日だったんです。そのタイミングで「Believe like Singing.」を聴いて、涙が出てきたんですよ。そのときの私の悲しい気持ちにも寄り添ってくれたし、「きっとまたチャンスが来るから、一緒に進んでいこうね」と励ましてくれてるような気がして。私自身、レコーディングでは寄り添ってくれる曲になったらいいと思いながら歌ったんですけど、後日、実際に自分が寄り添われたので、誰かにとってもそういう曲になってくれたらうれしいです。
堀内 歌詞の中に「たった一つ、ほんの少し きっかけを抱きしめるの」「たった一つだけでいい きっかけになっていくから」というフレーズが出てくるんですけど、本当にその通りで。日常の中で起こる些細な出来事も、1つひとつちゃんと意味があって、全部つながっている。そういうメッセージだと私は受け取ったので、今この瞬間を大事にしながら、花凜ちゃんが言ってくれたのと同じように、誰かに寄り添って一緒に歩んでいきたい。そんな優しさを込めて歌いました。
熊田 どんな人でも大なり小なり悩みや痛みを抱えていて、他人から見たら大したことなさそうな痛みでも、当人にとっては耐えられないぐらいの激痛だったりすることって、よくあると思うんです。そんないろんな痛みがある中で、「Believe like Singing.」は聴いてくれた人のどんな痛みにも等身大でぶつかってくれる……いや、ぶつかっちゃダメだ。等身大でヒーリングしてくれる曲だなあと。
──普遍性がある?
熊田 そうですそうです。人を根源的なところから癒してくれるというか、シンプルな言葉だからこそトンって胸に届くことってあるじゃないですか。それを音楽にしたらこうなりました、みたいな。だから私もアニメ本編でエンディングが流れるたびに救われた気持ちになるし、痛みに寄り添ってくれて心が温かくなる、不思議な楽曲だと思います。
礒部 アニメの主題歌なので当たり前といえば当たり前なんですけど、私たちの中ではオープニングの「Feel You, Heal You」、アニメ本編、エンディングの「Believe like Singing.」までひとつながりでアニメ「ヒーラー・ガール」なんですよ。物語込みの楽曲であり、楽曲込みの物語みたいな、とても強い結び付きを感じているので、ぜひセットで観て聴いて癒されてもらえたらうれしいです。