写真集に込めたメッセージ

──アルバムには、軍艦島に行かれた際の写真が収められたブックレットも付属します。

今回、軍艦島を訪れた理由の1つは、もちろん岡崎さんの故郷だから。実際に岡崎さんが住んでいた建物も、近付くことはできなかったものの、遠くから見えました。それともう1つ、どんな写真集を見ても軍艦島の朽ち果てた廃墟ばかり捉えていて……。でも人がいなくなった場所にも新しい命が芽吹いていて、絶対に素敵な緑が島にはあるはずだと。そう思って島に行ったら、想像以上に緑がありました。

──写真を拝見して、自分も軍艦島のイメージと違っていて驚きました。

軍艦島と言えば廃墟、というのはあくまで1つの捉え方であって、それとは別の見方もあるわけで、物の見方はいろいろあるよということも、これらの写真でお伝えしたかったんです。たぶん、軍艦島をこういう風に切り取っている人はそんなにいないんじゃないかな。そういうあまり誰も気付いていないところを、掘り起こすということも私の役割だろうと思っています。

初の単独ライブも「with you」と地続き

──林原さんは6月11日に初の単独ライブを行います。突然の発表にファンも驚いていましたが、ライブをしようと思ったきっかけは？

いや、今も思ってないけど（笑）。「ブギーナイト」の1300回記念公開録音をするために中野サンプラザホールを借りたものの、キングレコードの方から「その夜が空いているからぜひライブを」と言われたのでやるというだけです。私があまり音楽活動に積極的じゃないせいか、キングレコードも「どうやら最近、林原がキングで働いていないぞ」「うちの作品に出ていないぞ」と気付いちゃったみたいで（笑）。スターチャイルドがなくなったときに「もう子供ではいられないのか」と薄々思っていたけど……これは逃げられないぞ、と。

──そんなことはないと思いますよ。2015年の「KING SUPER LIVE」にも出演してましたし。

あれは面白かったね、大きいところだった。でも、あのイベントを経験したから改めて思ったけど、私にとってはさいたまスーパーアリーナも体育館も教室も変わらないなって。どこであろうがそこに人がいるから歌を歌うという点では同じで……という感じのことを「ポケットモンスター」のロケット団のメンバーに話したら、コジロウ役の三木眞一郎くんに「めぐちゃん、体育館とさいたまスーパーアリーナは違うよ」って優しく言われたけど（笑）。

──あのイベントでは白いTシャツにジーンズというシンプルな衣装でしたが、その自然体が林原さんらしいと当時思いましたし、今の話にも通じるところがあると感じます。

でも、それはキンスパに出たからわかったことだよ。あと、あのくらい大きい会場だとお客さんの顔が見えないね。個々とは付き合いづらいね。

──中野サンプラザホールぐらいだとまだ多少は見えますね。

そうなの、今回はお客さんの顔が見える！

──その単独ライブを発表された「ブギーナイト」でも歌唱を匂わせていましたが、「with you」の曲もたくさん期待できそうですね。

もちろん。ほかの曲も歌うけど、それは外せない。さっき「キングレコードから言われたからライブをする」みたいに言ったけど、その一方で、軍艦島に降りたときに「もう少しやりなさい」と感じた流れの1つだとも思っていて。私はかなり前から「他人からもらった元気はいつか尽きるから、自分で元気を生み出せる人になってほしい」と言っているんですけど、その気持ちはずっと変わりません。だから6月のライブの副題も「あなたに会いに来て」だし。そうした姿勢のきっかけになるような、じわじわと効く漢方薬みたいな岡崎さんの音楽を今、この時代にお届けできるのも、とても意義があることだと思うのでがんばります。