音楽ナタリー Power Push - 林原めぐみ
過去と未来、私の思いと誰かの思い すべて詰め込む「タイムカプセル」
写真の彼女が肩をはだける理由
──DISC 3は「PULSE」のセルフカバー盤。シンセ主体のサウンドデザインだった1990年盤から一転、4曲とも跳ねるリズムに乗せてギターをガツガツ弾きまくる、イマドキのダンスロックテイストにリアレンジされています。
それはもう「Over Soul」っていうシングル(2001年)以降ずっと組んでいる作曲家でもあり、今回はアレンジャーとして参加してくれた、たかはしごうさんのおかげですね。ただ、ご本人はすごく悩んだとはおっしゃっていました。前の「PULSE」はしっかり時代背景、時代のトレンドが刻まれた音作りをしているからって。
──1980年代後半から1990年代初頭ならではのダンス系ポップスに仕上げてますよね。
本田美奈子さんの「Oneway Generation」っぽいっていうか、ね(笑)。さすがに今、あれをそのままやるわけにはいかないけど「タイムカプセル」というアルバムに収録する以上、普遍的な王道アレンジにしても面白くない。ちゃんと今が刻まれてないと、って悩んでいたみたいです。
──そしてちゃんとイマドキのバンドサウンドにキレイなボーカルが乗るアレンジを作り上げた。
この4曲があることで、アルバムがノスタルジーに浸るためだけのものではなくなった感じはします。あれから25年という時を経た今の私の姿や、これからの私の姿を示すものにもなったかなって。実はそれがアルバム全体のテーマではあるんですよ。「タイムカプセル」とは言うものの、過去ばかり振り返るものにはしたくなくて、未来も示したかった。実際、ジャケットもそうなっていて。写真の中の私が肩を半分出してるのは「これからここに何か着るからね」っていうメッセージというか……。
──なるほどっ! ジャケットの林原さんは、出演アニメのキーアイテムの数々がパッチワークされたコスチュームを着ているんだけど……(参照:林原めぐみ、ベスト盤ジャケでキャリア集大成)。
右肩から先だけヌードなのは「ここにこれから新しいアイテム、作品が装着されるよ」っていう宣言なんです。
「声優活動も音楽活動もまだまだ続いていくものですから」
──ところで25年ぶりの「PULSE」のレコーディングはいかがでした?
当時とは大違いでした。例えばミュージシャンの中にお1人、けっこうガチな「エヴァ」(「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズ)ファンがいらっしゃって……。
──おっ、今度はスタジオミュージシャンがビビる番だ(笑)。
本当にそうだったというか「お会いできて光栄です!」って何度も繰り返してくださって。その方を含めて皆さん基本的に年下だから、私自身の居場所も見つけやすかったですし。すごく時の流れを感じたし「続けてみるもんだなあ」って思いましたね(笑)。
──繰り返しになるんですけどホントに25周年に対する気負いがないですよね。いい意味でノリが軽いというか。
だから25年も続けてこれたんじゃないですかね。「エヴァ」のおかげで大ブームの喧噪みたいなものも経験してはいるんですよ。「なんでその雑誌がアニメのことを?」っていう取材を1日に何本も受けたりとか(笑)。自分の望むと望まざるとに関わらず、世間が動いているのを見せていただいてはいて。ただそれを見ているうちに「あっ、これは私はブレずにいなきゃいけない」って気付いたんです。あの喧噪に巻き込まれたらきっと私は今の形の林原めぐみでいられなくなるし、あれはいつまでも続くものじゃないしって。それこそニュートラルでいること、日常をたゆたい続けることが大事なんだろうなって。あとこれはデビュー当時からインタビューなんかでもずっと言ってることなんですけど、私、おばあさんになりたいんですよ。
──おばあさんになりたい?
アニメの世界が好きな理由の1つに少年の役もできれば、ヘンなブニュブニュした生き物の役もできるし、美人にもなれれば、ブスにもなれる。何にでもなれるからっていうのがあるんですけど、唯一おじいちゃんとおばあちゃんだけは若手や中堅にはできない……いや、できはするんです。(しわがれ声を作って)「おかえり」みたいなことは言えるんですけど、年齢を重ねた人の「おかえり」とは如実に違うんですよね。デビューしたての頃から永井一郎さんや緒方賢一さんのように、本当に素晴らしい年齢の重ね方をしている先輩方のお芝居を目の当たりにしていたので。包容力や深みなんて言葉では言い尽くせない、その年齢で到達する何かを、自分も体感したいです。
──「おばあさんになりたい」話しかり、スタジオミュージシャンが年下だった話しかり、キャリアや年齢を経ることに対しても軽やかですよね。
うん。ラジオで年齢にちなんで「MGM48(めぐみフォーティエイト)でっす!」って挨拶するのとか楽しいよ(笑)。デビュー25周年とはいっても「これもおばあさん役ができるようになるまでの道のりの1つだよな」っていう感覚です。もちろん皆さんからおめでとうって言ってもらえるのは本当にうれしいし、いいアルバムができたなとも思ってるんですけど、私の活動そのものは、まだまだ道の途中ですから。
DISC 1 収録曲
- COME TRUE…(アルバム「PULSE」より)
- Follow you, Follow me(アルバム「PULSE」より)
- Go ALONG ! GO AROUND!!(アルバム「PULSE」より)
- 夢を追いかけて(アルバム「PULSE」より)
- 星の涙ポ・ロ・ロ・ン(「宇宙英雄物語」より)
- Dear Friends(「ぽっぷるメイルパラダイス」より)
- Kaleido scope(「WILDCD」より)
- おカネがいちばん(「ルナ・ソングス2」より)
- ALCHEMY OF LOVE~愛の錬金術~(「天地無用 in LOVE」より)
- 虹色れんあい♡(「星くずパラダイス」より)
- 約束だよ(KWAK'S SONG)(「あひるのクワック」より)
- ハッピー・ハッピー(ALFRED'S WALK)(「あひるのクワック」より)
- クローバーイノセンス(「MIYUKI WORLD」より)
- ぴょこLOVE注意報(「デジキャラットにょ」より)
- Grow up~明日があるぴょ~(「デジキャラットにょ」より)
DISC 2 収録曲
- 夢のBalloon(「らんま1/2」より)
- 未確認Girl(「エリアル」より)
- 好きと言いなさい(「忍空2」より)
- 花言葉にゆれて(「絶対無敵ライジンオー」より)
- ぶらんこの歌(「七つの海のティコ」より)
- プラスα~Album Version~(「瑠璃丸伝」より)
- 騒擾楽園(パラリラパラダイス)(「魔神英雄伝ワタル3」より)
- にんじんとグリグリ(「魔道王グランゾート」より)
- シンデレラなんかになりたくない(「チンプイ」より)
- いつまでもwith you(「七つの海のティコ」より)
- あなたの風になりたい(「BAD BOYS 2」より)
- あこがれ(「ルパン三世 炎の記憶」より)
- November Rain(「らんま1/2」より)
- JUSTIS~ダンガン×ヒーローより~(「MIYUKI WORLD」より)
- HI・MI・KO(台詞入り)(「魔神英雄伝ワタル2」より)
DISC 3 収録曲
- COME TRUE…(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- Follow you, Follow me(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- Go ALONG!GO AROUND!!(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- 夢を追いかけて(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- 林原めぐみ「タイムカプセル」発売記念イベント
- 2015年7月5日(日)東京都 某所
林原めぐみ(ハヤシバラメグミ)
東京都出身の声優、アーティスト。高校卒業後、看護学校に通いながら声優養成所に入所。養成所在籍中となる1986年にアニメ「めぞん一刻」で声優デビューを果たし、以来「魔神英雄伝ワタル」の忍部ヒミコ、「らんま1/2」の早乙女乱馬、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの綾波レイ、「スレイヤーズ」シリーズのリナ=インバース、「名探偵コナン」の灰原哀、「ポケットモンスター」シリーズのムサシなど人気作の主要キャラクターを歴任する。また1989年発表の「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」のイメージソング「夜明けのShooting Star」が話題を集め、“声優アーティスト”の先駆け的存在に。1990年には個人名義で1stミニアルバム「PULSE」をリリースし、1990年代後半には「Give a reason」「Just be conscious」「don't be discouraged」などオリコン週間シングルランキングトップ10ヒットを記録した楽曲群を発表する。その後もコンスタントにリリースを重ね、これまでに38枚のシングル、13枚のオリジナルアルバム、3枚のベストアルバムを発表。そしてアーティストデビュー25周年を迎えた2015年6月、活動初期のキャラクターソングと「PULSE」収録曲をパッケージしたベスト盤「タイムカプセル」をリリースする。