音楽ナタリー Power Push - 林原めぐみ
過去と未来、私の思いと誰かの思い すべて詰め込む「タイムカプセル」
「慣れない」という才能
──あと林原さんのキャラクターソングってすごく佳曲ぞろいなんですよね。コミカルな「ハッピー・ハッピー」や「ぴょこLOVE注意報」だって実はグッドメロディだったりして。
クレジットに並んだ方々がお歴々……なんてもんじゃない、“お歴々々々”って感じの皆さんですから(笑)。大野雄二さん、池毅さん、川井憲次さん、田中公平さん……。なんか、私としては駄菓子屋さんのたこ糸の先にアメが付いてるクジ、その引っ張った糸の先は大当たりだった!って感じ。周りの方々に引き合わせていただいた作家さんというクジのヒモが、本当に全部当たりだったみたいな……。時代のなせる業なのか、ただの運なのか(笑)。
──「なぜ林原めぐみは佳曲を引き寄せられるのか」を聞きたかったんですけど、これ、偶然だったんですか?
引き寄せてはないと思うなあ。なんの酔狂か、ド新人だった当時の私を支えてくれたおじさまたちのパワーのすごさよ、っていう話だと思いますけどね。それでももし何か才能と呼べるようなものがあったとするなら“慣れる”っていうことがなかったことかもしれないですね。
──慣れないのが才能なんですか?
「ワンピース」に出ればルフィの姿に涙して、感謝して、「コナン」ならムチャをする工藤(新一)くんのことが心配になるし……。本当にいちいち心が震える(笑)。心を使いすぎて、ぐったりするときもよくあります。でも、いろんなキャラの人生や物語を新鮮な気持ちで体感できなくなったら、この仕事の辞めどきかもね?とも思いますよ。だから一生慣れない、きっと。
──そういう姿勢だから音楽に対してもフレッシュな気持ちで向き合えた?
そうですね。当時もそうだし、その後も1曲1曲に対して新鮮な気持ちで向き合えていましたし。あの頃から何度現場に立っても慣れることができない。「こういう感じだろ?」って流すようなマネがよくも悪くもできなかったことが、おじさまたちに評価されていたのかもしれないですね。
「ここから林原めぐみの音楽が始まったんだよ」
──このアルバムにはおじさまたちの曲だけでなく、オトナの女性の楽曲、辛島美登里さんプロデュースの1stミニアルバム「PULSE」が全曲収録されています。そして「PULSE」は「夜明けのShooting Star」のリリース元であり、今の所属レーベルであるスターチャイルドではなく東芝EMIの作品。なんでEMIからソロ名義の作品を出そうと?
辛島さんと一緒に「夜明けのShooting Star」という照明弾を打ち上げたら、当時から私のプロデューサーをやってくれている大月(俊倫)さんの元上司で、東芝EMIに移られた方が声をかけてくださって。で「スタチャからリリースした『夜明けのShooting Star』が評価されて、東芝さんからお声がかかったんだから、きっと喜んでくれるはず!」と思って大月さんに報告したら、まあボッコボコに怒られまして……。
──当たり前です!(笑)
ほら、私にも事務所にもハウツーがなかったから(笑)。「なんでウチじゃなくてEMIなんだよ!」「なんで辛島さんまで連れてってんだよ!」と怒られて。ただ制作現場の雰囲気がすごくよかったことは覚えてます。経験なんてほとんどない20歳そこそこの小娘だったから、スタジオで飛び交ってる単語の意味がほとんどわからない。「音を歪ませる?」「歪ませるとどうなるの!?」って感じではあったし、しかもミュージシャンの方は皆さん年上でなんか怖いし(笑)。常にビビってた気はするんですけどね。
──でも雰囲気がよかった?
辛島さんが本当によくしてくださったんです。当時の辛島さんは「サイレント・イヴ」を出す直前。普通に売れっ子のシンガーソングライターだったんですけど「夜明けの~」で出会った頃とまったく変わらない関係でいてくださいました。
──しかもさすが腕っこきというか、4曲とも本当に美メロで。で、歌っている林原さんはすごく楽しそうだし、歌がうまい。
今聴いてみるとだいぶ恥ずかしいんですけどね。でもその恥ずかしさもひっくるめてリリースする意味はあるかな、とは思ってます。デジタルでどうとでも補正できる今の時代に、このザラザラした音をお届けしてみても面白いかなって。「こんなにダメでも大丈夫だよー」「25年歌い続けられるからー」って(笑)。
──いやいやいや。本当にいいミニアルバムじゃないですか。
ただ、このアルバムが林原めぐみの正解や最高到達点だったわけではないですから。今回収録したのには「ここから林原めぐみの音楽が始まったんだよ」って伝えたかったからっていう理由もありましたね。
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DISC 1 収録曲
- COME TRUE…(アルバム「PULSE」より)
- Follow you, Follow me(アルバム「PULSE」より)
- Go ALONG ! GO AROUND!!(アルバム「PULSE」より)
- 夢を追いかけて(アルバム「PULSE」より)
- 星の涙ポ・ロ・ロ・ン(「宇宙英雄物語」より)
- Dear Friends(「ぽっぷるメイルパラダイス」より)
- Kaleido scope(「WILDCD」より)
- おカネがいちばん(「ルナ・ソングス2」より)
- ALCHEMY OF LOVE~愛の錬金術~(「天地無用 in LOVE」より)
- 虹色れんあい♡(「星くずパラダイス」より)
- 約束だよ(KWAK'S SONG)(「あひるのクワック」より)
- ハッピー・ハッピー(ALFRED'S WALK)(「あひるのクワック」より)
- クローバーイノセンス(「MIYUKI WORLD」より)
- ぴょこLOVE注意報(「デジキャラットにょ」より)
- Grow up~明日があるぴょ~(「デジキャラットにょ」より)
DISC 2 収録曲
- 夢のBalloon(「らんま1/2」より)
- 未確認Girl(「エリアル」より)
- 好きと言いなさい(「忍空2」より)
- 花言葉にゆれて(「絶対無敵ライジンオー」より)
- ぶらんこの歌(「七つの海のティコ」より)
- プラスα~Album Version~(「瑠璃丸伝」より)
- 騒擾楽園(パラリラパラダイス)(「魔神英雄伝ワタル3」より)
- にんじんとグリグリ(「魔道王グランゾート」より)
- シンデレラなんかになりたくない(「チンプイ」より)
- いつまでもwith you(「七つの海のティコ」より)
- あなたの風になりたい(「BAD BOYS 2」より)
- あこがれ(「ルパン三世 炎の記憶」より)
- November Rain(「らんま1/2」より)
- JUSTIS~ダンガン×ヒーローより~(「MIYUKI WORLD」より)
- HI・MI・KO(台詞入り)(「魔神英雄伝ワタル2」より)
DISC 3 収録曲
- COME TRUE…(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- Follow you, Follow me(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- Go ALONG!GO AROUND!!(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- 夢を追いかけて(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- 林原めぐみ「タイムカプセル」発売記念イベント
- 2015年7月5日(日)東京都 某所
林原めぐみ(ハヤシバラメグミ)
東京都出身の声優、アーティスト。高校卒業後、看護学校に通いながら声優養成所に入所。養成所在籍中となる1986年にアニメ「めぞん一刻」で声優デビューを果たし、以来「魔神英雄伝ワタル」の忍部ヒミコ、「らんま1/2」の早乙女乱馬、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの綾波レイ、「スレイヤーズ」シリーズのリナ=インバース、「名探偵コナン」の灰原哀、「ポケットモンスター」シリーズのムサシなど人気作の主要キャラクターを歴任する。また1989年発表の「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」のイメージソング「夜明けのShooting Star」が話題を集め、“声優アーティスト”の先駆け的存在に。1990年には個人名義で1stミニアルバム「PULSE」をリリースし、1990年代後半には「Give a reason」「Just be conscious」「don't be discouraged」などオリコン週間シングルランキングトップ10ヒットを記録した楽曲群を発表する。その後もコンスタントにリリースを重ね、これまでに38枚のシングル、13枚のオリジナルアルバム、3枚のベストアルバムを発表。そしてアーティストデビュー25周年を迎えた2015年6月、活動初期のキャラクターソングと「PULSE」収録曲をパッケージしたベスト盤「タイムカプセル」をリリースする。