音楽ナタリー Power Push - 早見沙織
ライブモードのミニアルバムでつなぐ 私の“これまで”と“これから”
2015年8月にアーティストデビューを飾った声優・早見沙織の、1stミニアルバム「live for LIVE」が12月21日にリリースされた。
本作は、2016年5月にリリースされた早見の1stアルバム「Live Love Laugh」に伴う自身初のツアーから生まれた企画ミニアルバムで、同ツアーのために書かれた新曲から4曲を収録。また、ミニアルバム単体の通常盤に加え、10月29日の千葉・市川市文化会館のライブ映像と、11月3日の東京・ステラボールのライブ音源をパッケージした4枚組のCD+ Blu-ray盤およびCD+DVD盤も同時発売される。
非常に充実した内容のミニアルバムだが、果たしてライブ用に書かれた楽曲を今スタジオレコーディングして世に出す意味とは? そして早見にとってのライブとは? 本人に話を聞いた。
取材・文 / 須藤輝
「ライブで歌いたい」という気持ちだけで作ったミニアルバム
──今回のミニアルバム「live for LIVE」は、4曲入りミニアルバムとして単品でも発売されますが、これにライブ映像(Blu-rayまたはDVD)とライブ音源(CD2枚組)を加えた4枚組バージョンも同時発売されますね。
「ミニアルバム」なのかなあ?っていう感じですよね(笑)。
──ミニアルバム本体よりも特典のほうが圧倒的にボリューミーっていう(笑)。
この「live for LIVE」は、タイトルにも表れている通りあくまでライブが主軸にあるというか。今年の10月と11月にツアーで計3カ所回らせていただいたんですけど、ミニアルバムに収録された4曲も全部、もともとライブ用に作った楽曲なんですよ。
──事実、4曲共ライブで歌われていて、それが特典のライブ映像およびライブ音源にも収録されていますね。
はい。もっと言えば、「live for LIVE」の収録曲は純粋に「ライブで新曲を歌いたい」っていう気持ちだけで作っていたので、当初はスタジオ音源化を想定していなかったんです。でも、曲が完成してきたところで「ここから何曲かレコーディングしようか」という話になり、「じゃあどういう形でリリースする?」っていうところから始まったので。
──そうだったんですね。ライブ映像とライブ音源には「where we are」と「星になって」という、これまでのシングルおよびアルバムでは未発表だった曲も収録されていますが……。
その2曲もツアーのために用意した曲で、スタジオ音源としてミニアルバム本編に入っていてもおかしくはなかったんです。で、そのツアー自体も、5月に出した「Live Love Laugh」っていうアルバムに付随したライブだったので、今回の「live for LIVE」を辿っていけば前作の「Live Love Laugh」に行き着くという流れを作りたかったんです。
“これまで”と“今”と“これから”をつなぐ1枚に
──「Live Love Laugh」も「live for LIVE」も、“live”というワードでもつながりますね。
そう、字面もけっこう似てるんです。「Live Love Laugh」は1stアルバムということもあり、ここがスタートという意味も込めて、アートワークも含めて白を基調としてるんですね。で、今回の「live for LIVE」は、その白に夕陽が射すようなイメージなんです。1日に例えるなら、朝方のまっさらな白から、1つライブが終わって夕方に差し掛かっているような感じ。寂しさもあるけど余韻もあるみたいな。
──作品同士の連続性を意識してらっしゃる?
はい。私は今まで作ってきたもの、今作っているもの、これから作っていくもの、その流れにすごく重きを置いていて、「live for LIVE」はその流れをつなぐ意味を持ってると思ってるんですね。
──つなぐとは?
5月に1stアルバム「Live Love Laugh」を出した時点で、その収録曲については、楽曲として完成されたものとして皆さんにお届けしてるんですけど、それをライブの場でもう一度完成させる感じというか……。ライブでは生バンドが入っているし、私の歌い方もCDとは違うし、何よりそこにお客さんがいるっていうのが一番大きくて。そのお客さんたちと一緒に、その瞬間に新しく作り上げる楽曲にしたかったというか、楽曲をアルバムに収録しているものとはまた別の完成形にしてみたかったんですよね。それプラス、ライブの場に当時はまだスタジオで録ったことがない新曲……つまり結果的に今回ミニアルバムに収録されることになった曲たちを持ち込むことによって、ライブを“これから作っていく早見沙織の音楽のスタート地点”にもしたかったんです。
──ライブを“現在”と考えると、過去に発表した「Live Love Laugh」というスタジオ音源をライブで歌うという行為には“過去→現在”という流れがあって、逆に先んじてライブで披露した楽曲を新たにスタジオレコーディングした「live for LIVE」には“現在→未来”という流れがある?
そういうことになりますね。ライブでファンの方と一緒に作った新曲たちを、これからにつなげるという意味を込めてミニアルバムという形にしたと。で、これをまた次のライブで歌うことによって、過去のライブとはまた違う完成形ができる。「live for LIVE」は、そうやって過去から続く、そしてこれからも続くであろう連続した流れの中の1コマっていう位置付けですね。
ミニアルバムの中で最後にできた曲、それが「ふりだし」
──ミニアルバムの1曲目、早見さん作詞の「ふりだし」は、ご自身の過去のディスコグラフィからすると、比較的アップテンポで抜けのいいポップチューンですよね。
曲的にも歌詞的にも、直球勝負な曲ですね。この「ふりだし」は、ライブのセットリストから逆算したというか、ライブでお客さんの気分を盛り上げてくれる楽曲が欲しいなっていう思いから作った曲です。でも、この曲をやろうって決まったのも、歌詞ができたのも、最初のアレンジができたのも、どの曲よりも遅くて。
──最後に「ふりだし」という曲ができた。なんだか象徴的ですね。
そうなんですよ。曲自体も、メロディが行ったり来たりをくるくる繰り返してる印象から「ふりだし」というタイトルを付けたので、自分にとってはとてもニュートラルな気持ちになれる曲なんですよね。あと、実はこの曲は、もともと1コーラスの長さが倍くらいあったのを半分にカットして、その分の歌詞も「えーい!」って削っちゃったんです。でも、曲調に合わせて歌詞もループするような感じで書いていたので、部分的にカットしても全体としては意味が通っちゃったというか、主軸はブレなかったんですよね。
──その歌詞をひと言で要約するなら、「前進あるのみ」ですね。
そういうことですね。もう、前だけを見て。
──で、前進の結果振り出しに戻ってしまったとしても、それをネガティブに捉えていないですよね。例えば冒頭では「失敗続きで 何度もふりだし」だったのが、最後には「また次の道へ 何度もふりだし」と、「次」が示唆されている。要は、振り出し=スタート地点が更新されています。
はい。もし仮に同じ振り出しに戻ってしまったとしても、前に進もうとした意思やそのために歩いた距離は無駄ではないはずなので。至ってポジティブです。
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- 1stミニアルバム「live for LIVE」2016年12月21日発売 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
- CD+Blu-ray盤 [CD+Blu-ray+特典CD2枚] 7344円 / 1000636464
- CD+DVD盤 [CD+DVD+特典CD2枚] 6264円 / 1000636465
- CD盤 [CD] 1944円 / 1000636466
CD収録曲(共通仕様)
- ふりだし
[作詞:早見沙織 / 作曲:ヤナガワタカオ / 編曲:渡辺拓也] - 雨の水平線
[作詞:早見沙織 / 作曲:早見沙織・矢吹香那 / 編曲:前口渉] - Secret
[作詞・作曲:川崎里実 / 編曲:大久保薫] - eve
[作詞・作曲:矢吹香那 / 編曲:前口渉]
Blu-ray / DVD収録内容
- Overture –Live Love Laugh–
- NOTE
- やさしい希望
- 水槽
- MC1
- ふりだし
- その声が地図になる
- 雨の水平線
- あるゆらぐひ
- HAYAMInst.
- レンダン
- MC2
- Secret
- ESCORT
- eve
- MC3
- 僕らのアンサー
- where we are
- Installation
- MC4
- LET'S TRY AGAIN
- ブルーアワーに祈りを
- MC5
- 星になって –ENCORE–
- MC6
- To years letter –ENCORE–
特典CD(DISC 1)収録曲
- Overture –Live Love Laugh–
- NOTE
- やさしい希望
- 水槽
- ふりだし
- その声が地図になる
- 雨の水平線
- あるゆらぐひ
- HAYAMInst.
- レンダン
特典CD(DISC 2)収録曲
- Secret
- ESCORT
- eve
- 僕らのアンサー
- where we are
- Installation
- LET'S TRY AGAIN
- ブルーアワーに祈りを
- 星になって –ENCORE–
- Installation(Acoustic) –ENCORE–
- To years letter –ENCORE–
早見沙織 MINIアルバム「live for LIVE」発売記念 アコースティックライブ
2016年12月25日(日)
東京都 ゲートシティ大崎 アトリウム
早見沙織(ハヤミサオリ)
東京都生まれの声優・ボーカリスト。2007年の声優デビュー後、アニメ「セキレイ」の結、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の鶴見知利子、「物語」シリーズの斧乃木余接、ゲーム「ラブプラス」シリーズの高嶺愛花など、毎シーズン主要キャラクターの声を数多く務め、またそれらキャラクター名義で歌う膨大なキャラクターソングにおいて、その歌唱力を高く評価される。2015年8月に自身がヒロイン役を担当するアニメ「赤髪の白雪姫」のオープニングテーマにして自作詞曲「やさしい希望」で待望のアーティストデビューを果たし、翌2016年2月には自作詞・自作曲による両A面シングル「Installation / その声が地図になる」を、5月には初のフルアルバム「Live Love Laugh」を発表。同年秋にこのアルバムを引っさげて全国3会場を回るツアーを開催する。そして12月、そのツアーのために書き下ろした楽曲を集めた1stミニアルバム「live for LIVE」をリリースした。