音楽ナタリー Power Push - 早見優×藤井隆特集
憧れの歌手をプロデュース! 藤井が考える、音楽との新たな向き合い方
藤井隆が主宰を務めるSLENDERIE RECORDの最新リリースは、早見優の約21年ぶりの新作「Delicacy of Love」。本作では藤井がプロデューサーを務めており、新曲「溶けるようにkiss me」をはじめ、アン・ルイス「恋のブギ・ウギ・トレイン」のカバー、早見の代表曲「夏色のナンシー」のリアレンジ版など新録3曲に加え、DE DE MOUSE、APOTHEKE、okadadaによるリミックス3曲が収録されている。藤井は「溶けるようにkiss me」の作曲をはじめ(作詞は早見)、収録曲の選定、リミックス担当アーティストのセレクトなども自ら担当し、「歌手・早見優」の魅力を伝えている。今回音楽ナタリーではミニアルバム制作に関して早見と藤井の対談を行ったほか、プロデューサーとしての藤井の単独インタビューを実施した。
取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 上山陽介
早見優×藤井隆 対談
お嫁に行くとき、持っていってくれたらいいですね
──新曲「溶けるようにkiss me」はどのようにして作られたんですか?
早見優 藤井さんから仮の歌詞とガイドメロディが入ったデモをいただいたんです。冨田謙さんのアレンジも8割方できていたんですけど、藤井さんは男性なのでオクターブ下で歌っていて、「ずいぶん低い歌だな」って思ったのが最初です(笑)。作詞は私に任せてくださったんですけど、すごく迷ったんですよ。21年ぶりの新曲だし、私もこの年齢だし、聴いてくださる方はどんな世代なのかな、とか。それで藤井さんといろいろお話しする中で「早見優が歌を歌う人だってことを知らない層に聴いてもらいたい」みたいなお話をされていて。
藤井隆 正しくは「早見さんが歌ってるのを知らない」じゃなくて、「早見さんといえば『夏色のナンシー』だよね」って方に「そうじゃないんだよ」って言いたかったんです。
早見 あ、そうだ。ごめんなさい。そうすると対象は20代、あるいは10代の方かなと思って。藤井さんのライブに出させていただいたときも、若いお客さんが「早見さんって歌うまいですね!」と言ってくださったし。
藤井 なんだかすみません……(笑)。
早見 いやいや、うれしかったんですよ。私も15歳と13歳の娘がいまして、彼女たちが一番楽しそうに話すのが友達とか恋愛のことなんですけど、それを聞いていたら「私もそんな時期あったな」って昔を思い出して、時代は変わっても恋愛観って意外と変わらないんだなって気が付いたんですよね。「溶けるようにkiss me」では、好きな男の子が奥手で「もっと男らしく引っ張ってくれればいいのに」って思ってる女の子の気持ちを書いてみました。
藤井 早見さんからいただいた詞、すっごく素敵だったんですよ。勝手に大人っぽいものを想像してたんですけど、ティーンの心情を表した詞で、しかもお母さんじゃなくて、女の子自身の立場から歌ってくださって。「すごいな!」って思いました。「Round and round my 頭が」って歌詞、最高ですよね。
早見 うちは家族全員バイリンガルなので、会話は日英チャンポンなんですね。その自然体な感じを歌詞にできたら面白いかなって思ったんです。例えば好きな男の子に何か言われて、「どういう意味だろう?」って頭の中がグルグルすることを「It goes round and round in my head!」と言うんですけど、それを参考に「Round and round」っていう言葉を使ってみたり。
藤井 早見さんじゃないと絶対に出てこないフレーズじゃないですか。堂島孝平さんにお会いしたときにこの詞を見せたら、堂島さんもそこに引っかかって「さすが!」って感心されてました。僕、「GET UP」の湯川れい子先生の日本語と英語の分量がすごく好きなんですけど、「溶けるようにkiss me」ってタイトルも漢字、ひらがな、英語のバランスがいいですよね。
早見 漢字とかひらがなのバランスは意識していなかったですね。「溶けるように」は娘が好きな先輩に声をかけられたとき、みんなの視線を感じて「その場で溶けた!」って話してて。そういう感じなんだ、って思って書いたんです。
藤井 お嬢様はライブを見にきてくださったこともあるんですけど、聡明でかわいらしくて、すごく素敵なんですよ。うちの娘もあんなお姉さんになってほしいなって思いました。お嫁に行くとき、「Delicacy of Love」を持っていってくれたらいいですね。
早見 そこまで考えます?(笑) そういえばこの前、FM世田谷の「アフタヌーンパラダイス」に出演して、「溶けるようにkiss me」を流していただいたんです。そしたら娘たちも聴いてくれて、放送が終わったあとに「溶けるようにkiss me」を聴いてる様子を撮った動画を送ってくれたんですけど、もうノリノリなんですよ。
藤井 うれしい! たまらないですよ。この曲にしてもリミックスにしても、お嬢さん方に「いいね」って言ってもらうのが一番の目標だったので。
「なんで早見さんのLINE知ってんの?」
──今回リミックス曲ではDE DE MOUSEさん、APOTHEKEさん、okadadaさんが参加しましたが、早見さんは聴いてみてどうでしたか?
早見 藤井さんが「こういう方たちにお願いしようと思うんですけど」って皆さんの過去の作品を聴かせてくださったんですけど、藤井さんの音楽的感性ってすごいんですよ。DE DE MOUSEさんは本当に「誘惑光線・クラッ!」って感じだし、APOTHEKEさんがリミックスしてくださった「GET UP」は私が想像していた以上にカッコよくって、一番ヘビロテで聴いてます。okadadaさんの「Caribbean Night」もトロピカル……なんだっけ?
藤井 トロピカルハウス。
早見 っていうジャンルみたいですけど(笑)、とってもカッコよく仕上げていただきました。
藤井 okadadaくんについてはひとつお伝えしたいことがあって。彼は誰よりも早く、早見さんとLINEのアカウントを交換してるんですよ。
早見 彼は藤井さんのライブでDJされてて、私もちょっと興味があったので「DJ教えてもらえますか?」って言ったら「いいですよ」って言ってくれて、それでアカウントを交換したんですよ。ただ、機材は買ったけど、どうセッティングしたらいいのかもわからなくて(笑)。何度か連絡しようと思ったけど、今のところはまだ……。
藤井 「ダダはなんで早見さんのLINE知ってんの?」ってみんなやっかんでますよ。すっごくシャイで無骨な男なんで。でも、リミックスを発注して最初に上げてくれたのが彼だったんです。早見さんへの忠誠心だと思います。絶対僕に対してじゃない(笑)。
早見 たぶん今回のリミックスで初めて「Caribbean Night」を聴いてくれたと思うんですけど、ものすごく的確にこの曲の味を把握してくれたなって思いました。
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- 早見優 ニューアルバム「Delicacy of Love」2016年8月24日発売 / 2000円 / よしもとアール・アンド・シー / YRCN-95260
- 「Delicacy of Love」
- Amazon.co.jp
収録曲
- 溶けるように kiss me
- 誘惑光線・クラッ!(DE DE MOUSE back to night mix)
- GET UP(APOTHEKE dawn on the river mix)
- Caribbean Night(okadada "love is the destiny" remix)
- 夏色のナンシー(Redefined by Seiho)
- 恋のブギ・ウギ・トレイン
- 藤井隆 DJミックスアルバム「DJ MIX "Delicacy" mixed by DJ DC BRAND'S」2016年7月13日発売 / 2500円 / よしもとアール・アンド・シー / YRCN-95259
- 「DJ MIX "Delicacy" mixed by DJ DC BRAND'S」
- Amazon.co.jp
収録曲
- アイモカワラズ
- ディスコの神様 feat. 藤井隆(Carpainter remix) / tofubeats
- YOU OWE ME(Radio Edit)
- I hold you tight
- 幸福インタビュー
- 素肌にセーター
- 未確認飛行体
- 赤と黒
- Socket
- 代官山エレジー
- I'M IN with YOU
- 究極キュート
- discoball
- make over feat.乙葉(On The TAKASHI ver.)
- SAVE ONESELF
- STAR BRIGHT LOVE
- わたしの青い空
- I just want to hold you(RAM RIDER REMIX)
- T&T Remix version / T&T(島田珠代・藤井隆)
- 1/2の孤独
- 月と砂漠と
- タメイキ
- 未来-Sex-
- drive me crazy
- 地球に抱かれて
- Sa ら Sa
- ある夜 僕は逃げだしたんだ
- OH MY JULIET!
- Quiet Dance(TAKASHI SOLO BPM124ver.)
- ナンダカンダ
早見優(ハヤミユウ)
静岡県出身。幼少期はグアムやハワイで育ち、現地で芸能事務所、サンミュージックプロダクションにスカウトされたことをきっかけに単身帰国。1982年にシングル「急いで!初恋」でアイドル歌手としてデビューし、同年開催された「第24回日本レコード大賞」で新人賞を獲得した。翌83年には「夏色のナンシー」で「NHK紅白歌合戦」に初出場。現在は歌手のみならず女優、タレントとしても活動を行っている。8月24日には藤井隆全面プロデュースのもとミニアルバム「Delicacy of Love」をSLENDERIE RECORDより発売。同作は自身21年ぶりの新作となった。
藤井隆(フジイタカシ)
1972年3月10日生まれ。1992年に吉本新喜劇オーディションを経て、お笑い芸人として吉本興業入り。2000年にシングル「ナンダカンダ」で歌手デビューし、同年「NHK紅白歌合戦」に初出場する。数々のシングルのほか、2002年発売のアルバム「ロミオ道行」、2004年発売のアルバム「オール バイ マイセルフ」などで高い評価を得ながらも、2007年8月発売のシングル「真夏の夜の夢」以降はしばらくアーティストとしての活動を休止。2013年6月にニューシングル「She is my new town / I just want to hold you」で6年ぶりにアーティスト活動を再開した。その後さまざまなアーティストとのコラボレーションも展開し、2015年6月におよそ11年ぶりとなるオリジナルアルバム「Coffee Bar Cowboy」を自身のレーベル「SLENDERIE RECORD」、同年10月には初のベストアルバム「ザ・ベスト・オブ藤井隆 AUDIO VISUAL」を発表。2016年7月には初のDJミックスCD「DJ MIX "Delicacy" mixed by DJ DC BRAND'S」をリリースした。8月24日にSLENDERIE RECORDより発売した早見優21年ぶりの新作「Delicacy of Love」ではプロデュースを担当している。