音楽ナタリー Power Push - ハルカトミユキ
「より多くの人に届けたい」2人が踏み出した新たな一歩
華やかな世界は嫌いではない
──まさに、今回の「LIFE」に収録された楽曲はこれまでハルカトミユキが感じていた壁を突破できる曲になっていると思います。ただ、今作ができる前の段階、まだ悩んでた時期に、「メジャーデビューをしないで、インディーズでずっとやっていって、自分たちの音楽を自分たちのペースでじわじわと届けていくという違う道もあったんじゃないか?」なんてことも考えたりはしませんでした?
ハルカ しました、すごくしました(笑)。メジャーレーベルからリリースの話をもらったときに、それはそれで1つの運命としてとらえてしまったんですよね、なぜか。もともと私は華やかな世界は嫌いではない。それが当事者かどうかは別にして(笑)。だから、メジャーレーベルでやることに対してマイナスの気持ちはなかったんですけど。問題は、そういう自分の気持ちと自分の表現にズレがあって。ちょうど、自分が憧れているものと、本当の自分のズレみたいなものがそのまま表れていたと思うんですよ。それは今も課題として残ってはいるんですけど、そこを突破しようとする気持ち自体、その軋轢のようなものが、今、音楽をやることの原動力になっているので。
ミユキ 私も、当時でいうところの中二病的な大学生で(笑)、その時代にちょうど邦楽からは離れていたのもあって、ハルカと違って「メジャーデビュー?」って懐疑的な気持ちも抱いていて、デビュー後もその気持ちはどこか続いてたんですけど。ただ、去年ぐらい、ハルカがダウンしてた時期に自分の本質を探っていくうちに、自分がものすごくポップスが好きだったことを思い出してきたんですね。中学生のときはORANGE RANGEのファンクラブに入っていたし。そういう自分をずっと否定してたなって。それを肯定できるようになったのが「世界」からで。「そうだ、私、NAOTOさんに憧れてたんだ」って(笑)。
ハルカ ミユキは、私に引っ張られてどんどん暗くなっていたところがあると思うんですよ。
ミユキ (笑)。
ハルカ で、その私自身も、デビューしたばかりの頃は「こういう表現がしたい」っていうのが明確にあって、そんな中でできてきた曲に引っ張られて、実際以上にもっともっと「シリアスであるべき」と思っていたかも。私としては、自分がどんなに暗い方向に行ったとしても、ミユキがミユキのままでアホみたいに弾けてくれていたら(笑)、そこでバランスがとれると思っていたんですよ。でも、2人してそっちの方向に行ってしまって。今回の作品で、そこから完全に解き放たれたような気がしているんですよね。
私たちの歌は絶対にもっと多くの人の心に響くもの
──今日はここまで「変わった」ってことについて話してきましたけど、歌の本質的な部分には、実は全然変わってないところもあると思っていて。つまり、初期の作品が音楽シーンの片隅で孤立している作品だったとしたら、今回の「LIFE」はサウンドの表面的には音楽シーンのメインストリームのポップスに近付いてはきたけれど、やっぱりその新しい場所でも圧倒的に孤立している音楽だと思うんですね。根っこにある「人と群れたくない」という精神性はまったく変わっていない。
ハルカ 孤立してますよね(笑)。
──でも、そうやって孤立している人間に向けて、孤立した人間が歌い続けている、そこがハルカトミユキの音楽の誠実なところだと思うんですよ。毎月新曲を配信リリースしたり、10月3日には日比谷野外大音楽堂でフリーライブを企画したりと、そういう戦略的なところにはスタッフも含めて一丸となって向き合っているわけですけど、それによって表現はまったくブレてはいない。
ハルカ 私たちの場合、音楽をやることで、みんなでハッピーになりたいとか、そういうことをまったく思ってないわけで。だからと言って悲しい気持ちになってほしいわけじゃないんですけど。ただ、今までやってきたことをより遠くまで届けたいという一心ですよね。ハルカトミユキの歌は、絶対にもっと多くの人の心に響くものだと信じていて。それを、よりスケールアップしていきたいと思っているだけで。サウンドの変化があるとすれば、その試行錯誤の結果ですよね。
──よくわかります。
ハルカ だから、今考えているのは、ライブでどれだけ多くの人に届けることができるか、伝えられるかってことで。音源をリリースしているだけじゃなかなか見つけてもらえないじゃないですか。今回の「LIFE」はその足がかりとなる作品となるように作ってきて、今度はライブにおける表現をどう強いものにしていくかってことを考えていて。
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ハルカトミユキ フリーライブ ‘ひとり×3000’
- 2015年10月3日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
OPEN 17:15 / START 18:00
- ミニアルバム「LIFE」 / 2015年9月30日発売 / Sony Music Associated Records
- ミニアルバム「LIFE」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / AICL-2962~3
- 通常盤 [CD] / 2160円 / AICL-2964
CD収録曲
- 肯定する
- 宇宙(そら)を泳ぐ舟
- 春の雨
- COPY
- All I want
- September
- 火の鳥
初回限定盤DVD収録内容
ハルカトミユキ ワンマンライブ 2015 '世界'
2015.06.19 at LIQUIDROOM
- 世界
- バッドエンドの続きを
- ヨーグルト・ホリック
- 未成年
- マゼンタ
- 春の雨
- 君はまだ知らない
- 流星
- COPY
- その日がきたら
- 嘘ツキ
- 振り出しに戻る
- tonight
- ニュートンの林檎
- マネキン
- プラスチック・メトロ
- 青い夜更け
- ドライアイス
- Vanilla
ハルカトミユキ
立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)による2人組バンド。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2作目のCD「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリース。同年11月にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューアルバム「シアノタイプ」を発表し、2014年には3作目「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」を発表し、2015年1月からは毎月新曲を配信で発表している。そして同年4月、初めてのミニアルバム「世界」をリリース。9月30日に新作ミニアルバム「LIFE」をリリースし、10月3日には東京・日比谷野外大音楽堂にてフリーライブを開催する。