音楽ナタリー Power Push - 花澤香菜
“UK”をテーマに探求した素敵な世界
brilliant=素敵
──「Marmalade Jam」「Opportunity」「ざらざら」の流れも見事ですけど、「ざらざら」から「雲に歌えば」のつなぎもいいですね。花澤さんの「ハッハッハッ」というブレスで始まる。
うふふ(笑)。明るい曲だけど、歌詞ではどんより感も「ざらざら」からちょっと引き継ぎつつ。
──これも今までの北川さんにはなかったニューウェイブ的なアプローチですけど、北川さんからは歌に対してどんなリクエストが?
最初の「ハッハッハッ」はいろいろ試した結果、息を吸う音のほうが合うという結論になりました(笑)。あと、最初はけっこう明るめに歌ってたんですけど、少しトーンを落としたほうがいいかなというディレクションがあったので、ちょっとアンニュイさを加えつつ、でも心の中には前向きな気持ちがあるようなイメージで。
──「FLOWER MARKET」は初共演の片寄明人さん作曲で、演奏にもGREAT3チームと會田茂一さん、フジファブリックの金澤ダイスケさんが参加した新機軸ですね。やはりブリティッシュなサイケ感がありつつ、どこかさわやかな雰囲気もあって。
片寄さんは初めてお会いしたんですけど、とってもまろやかなオーラをまとった方で。北川さんと片寄さんに囲まれたレコーディングは、なんだかまったりとしてました(笑)。
──作詞はこちらも岩里さんですね。
岩里さんはお花が大好きで、レコーディングのときには歌詞のイメージがしやすいように、ロンドンのフラワーマーケットの写真を持ってきてくださいました。
──次の「brilliant」はアルバム曲の中では唯一の、花澤さん自身による作詞ですね。
この曲は早い段階で北川さんからデモをいただいていて、「この曲で歌詞を書いてみて」って言われてたんです。デモはすでにアレンジもできあがっていたんですけど、みんなゴキゲンに演奏してるんですよね。なので歌詞も「このゴキゲンに乗るしかない!」って。私は歌詞を書いているとどんどん内に籠ってしまって、あまり明るい歌詞にはならないんですけど(笑)、1年に1度ぐらい会うお友達とごはんを食べているときに、その子との思い出やその子に対する気持ちはあの曲に合うかもなと思って、そこから広げていきました。
──タイトルを「brilliant」にしたのは?
私、言われてうれしい言葉を1つ挙げるなら「素敵」なんですね。あるとき誰かに言われてすごくうれしかったので、私も誰かのことを「素敵だな」と思ったら「素敵」って伝えるようにしているんです。ロンドンでジャケット写真の撮影をしているとき、カメラマンさんが私のテンションを上げるためにか、自分のテンションを上げたいのか(笑)、写真を撮っては「ジーザス!」とか「グレイト!」みたいなことを叫んでいて。それで現地の方に「ロンドンだと『素敵だな』と感じたときはどう言うんですか?」と聞いたら、そのニュアンスなら「brilliant」かなって教えてくれたんです。
──辞書的には「光り輝いた」「鮮やかな」といったニュアンスかと思うのですが、ここでは「素敵」なんですね。
はい。これなら歌詞のテーマにも合うし、タイトルにぴったりかなって。
3日がかりで作った“香菜粒子”
──「Seasons always change」の作・編曲を手がけた矢野博康さんも1stアルバムからの常連ですね。
矢野さんの曲って耳に残りますよね。ふと気が付くと口ずさんでいるんですよ。メロディは印象に残るし、岩里さんの歌詞も素敵だし。今までの矢野さんの曲は、どちらかと言うとかわいらしいものが多かったんですけど、今回はぐっと大人っぽくなって。だけどボーカルは素朴な感じにしてみたりして。
──けっこう硬いハウスサウンドなのに、素朴なボーカルが乗ることであまり無機質な感じにはなっていないですね。
そうですね。面白いバランスになったかなと思います。
──そしてラスト、ミト(クラムボン)さんの「Blue Water」はかなり作り込まれた印象ですけど……。
この曲だけ、レコーディング日が3日間押さえられてたんですよ。「3日間って……?」と思ったんですけど(笑)、コーラスだけでかなりの数あったんです。
──結果的に3日かかったんじゃなく、あらかじめコーラスを山ほど重ねるために3日間押さえていたと。
そうなんです。1音を伸ばしてそこにハモリを入れて、というのを何度も録ったんですけど、音程がぴったり合っているときよりも、ちょっと#したり♭してるときのほうが、いい感じに聞こえるんですよね。そこを狙うのに挑戦していたら、どんどん楽しくなってきて(笑)。
──幾重にも重なった自分の歌声を聴いて、何か新しい発見はありましたか?
あの……これ本当にいろんな聴き方をしてほしいんですけど、大きなスピーカーで聴いたときと、ヘッドフォンで聴いたとき、ちっちゃいスピーカーで聴いたときでそれぞれのよさがあって。大きいスピーカーだとミストサウナの中にいるような、ちっちゃい“香菜粒子”を全身に浴びせられるような感じがするんです(笑)。あんなに音を重ねると、ちょっと神秘的になりすぎる怖さみたいなのが出ちゃうかなと思っていたんですけど、全然そんなことなかったです。ちっちゃいスピーカーだと、濃密な霧がファッと顔にかかる美顔器みたいな感じ(笑)。ヘッドフォンだと耳の中全体が「ウワー! 花澤!」みたいな(笑)、不思議な支配感があって。
ツアーと青汁
──という、非常に濃密な15曲を収めたアルバムができあがって……前回の「ざらざら」発売時のインタビューで少し予告もされていましたけど、アルバムを携えてのツアーが決定しました。2月5日のBillboard Live TOKYOでのスペシャルライブでは、ツアーに先駆けて「Opportunity」からの新曲も披露されていましたが。
「FRIENDS FOREVER」と「brilliant」を歌ったんですけど、この2曲だけでこんなにテンションが上がるんだから、ほかの曲も歌ったらどれだけ楽しいんだろうって思います。バンドで回るツアーは「Blue Avenue」以来なので、演奏も楽しみにしていてほしいんですけど、歌に関しても前のツアーでつかんだものがたくさんあって。そのあと「かなめぐり」ツアー(参照:花澤香菜、歌と朗読の「かなめぐり」最終公演で「ラスめぐり!」コール)を回って、以前よりも自由に歌えるようになったんです。その経験を次のツアーにも生かせたらなと思っています。
──何よりもまず、自分が「Opportunity」の曲を歌いたいと。
本当にそう。だって素敵なんだもん……。
──ステージでどんな見せ方をするか、具体的に考えたりしていますか? 歌以外の演出面なども含めて。
「Blue Avenue」のツアーではタップダンスをしたので(参照:花澤香菜、大成功の武道館ライブでツアー好発進!千石撫子のあの曲も)、今回はさて何をやろうかなと(笑)。何かしらやろうとは思ってるんですよね。
──最後にまったくの余談ですが、花澤さんの中で最近流行っているもの、2017年最初のブームは?
なんだろう……青汁?
──青汁?
正月におじいちゃんおばあちゃんの家に行ったんですけど、年明けすぐに上映会イベントがあったから、正月はあまり食べすぎないように注意してたんです。おじいちゃんおばあちゃんちに行くと、いろいろ食べさせられるじゃないですか。だから事前に「私は今ダイエットをしているから、何も出さないで」って伝えてから行ったんですね。それでも1分おきに「これ食べる?」「煎餅あるよ」「ケーキあるよ」って言ってくるのを全部「大丈夫! 大丈夫!」って断ってたら「香菜、青汁があるよ」って(笑)。
──なんでもいいから振る舞いたいんですね(笑)。
うふふふ(笑)。「これなら渡せる!」みたいな感じで青汁をいっぱいもらったんです。それを毎日飲んでいたら「……青汁、意外といいな」って。味もわりと好きで。あの臭みがクセになるんですよね。
ライブ&イベント情報
花澤香菜 live 2017 "Opportunity"
- 2017年4月15日(土)
- 東京都 オリンパスホール八王子
- 2017年5月6日(土)
- 愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
- 2017年5月13日(土)
- 宮城県 電力ホール
- 2017年5月21日(日)
- 大阪府 オリックス劇場
- 2017年6月4日(日)
- 千葉県 市川市文化会館 大ホール
トーク&ミニライヴ
- 2017年2月25日(土)
- 東京都 ヴィーナスフォート 教会広場
KANA's Birthday Party
- 2017年2月25日(土)
- 東京都内
"Opportunity" リリース記念スペシャルイベント
- 2017年6月17日(土)
- 東京都内
- 4thアルバム「Opportunity」 / 2017年2月22日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray+フォトブック] 4104円 / SVWC-70251~2
- 通常盤 [CD] 3240円 / SVWC-70253
CD収録曲
- スウィンギング・ガール
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:kz]
ミト(B / クラムボン)
All Other Instruments:kz - あたらしいうた
[作詞:花澤香菜 / 作・編曲:北川勝利]
山本真央樹(Dr) / 千ヶ崎学(B / KIRINJI) / 末永華子(Piano) / 松江潤(G) / rionos(Strings Programming) / acane_madder(Cho, Programming) / 戸川卓士(Programming) - FRIENDS FOREVER
[作詞:西寺郷太 / 作曲:Mick Hucknall / 編曲:Andy Wright]
Roman Roth(Dr)Dejay Edmund(B)Dave Clayton(Key)Kenji Suzuki(G)Ian Kirkham(Sax)Kevin Robinson(Trumpet)John Johnson(Trombone)Andy Wright(Piano, Programming)Gavin Goldberg(G)acane_madder(Cho) / 北川勝利(ROUND TABLE)
Produced by Andy Wright - 星結ぶとき
[作詞:宮川弾 / 作・編曲:Spangle call Lilli line]
歌代龍勢(Dr) / 柳澤一誠(B) / 藤枝憲(G) / 笹原清明(G) / 林英和(Syn)
Other Instruments:大坪加奈 - 滞空時間
[作詞・作曲・編曲:宮川弾]
All Instruments:宮川弾 - カレイドスコープ
[作詞・作曲・編曲:沖井礼二]
原”GEN”秀樹(Dr, Tambourine) / 沖井礼二(B, G, Programming, Cho / TWEEDEES) / 湯本淳希(Trumpet / FIRE HORNS) / acane_madder(Cho) - 透明な女の子
[作詞・作曲:山崎ゆかり / 編曲・プロデュース:空気公団]
山崎ゆかり(Cho / 空気公団) / 戸川由幸(B / 空気公団) / 窪田渡(Piano, Organ, Syn / 空気公団) / オータコージ(Dr) / 奥田健介(G / NONA REEVES) - Marmalade Jam
[作詞・作曲・編曲:北川勝利]
千ヶ崎学(B / KIRINJI) / 松江潤(G)acane_madder(Cho, Programming) / 北川勝利(G, Programming / ROUND TABLE) - Opportunity
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:北川勝利]
北川勝利(G, Shaker / ROUND TABLE) / 末永華子(Piano) - ざらざら
[作詞:花澤香菜 / 作曲:秦基博 / 編曲:島田昌典]
あらきゆうこ(Dr) / 美久月千晴(B) / 島田昌典(Piano, Organ, Mellotron, Tambourine) / 秦基博(G) / 八橋義幸(G) / 室屋光一郎ストリングス(Strings) - 雲に歌えば
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:北川勝利]
北川勝利(B, G, Cho / ROUND TABLE) / acane_madder(Cho, Programming) - FLOWER MARKET
[作詞:岩里祐穂 作曲:片寄明人 編曲:片寄明人、北川勝利]
白根賢一(Dr) / 高桑圭(B) / 片寄明人(G) / 會田茂一(G) / 金澤ダイスケ(Organ, Syn) - brilliant
[作詞:花澤香菜 / 作・編曲:北川勝利]
みどりん(Dr / SOIL&"PIMP"SESSIONS) / 千ヶ崎学(B / KIRINJI) / 松江潤(G) / 北川勝利(G, Cho / ROUND TABLE) / acane_madder(Cho, Programming) - Seasons always change
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:矢野博康]
梅林太郎(G, Syn, Programming) / 矢野博康(Syn, Programming) - Blue Water
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:ミト]
All Instruments:ミト(クラムボン)
初回限定盤Blu-ray Disc収録内容
- Singing London with Kana
(ロンドン撮影の撮り下ろし映像)
初回限定盤仕様
- 三方背スリーブケース
- 撮りおろし48Pブックレット封入
- 特典Blu-ray付き
花澤香菜(ハナザワカナ)
1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には2ndアルバム「25」、2015年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」を発表。同年5月にスタートしたツアー「花澤香菜 live 2015 "Blue Avenue"」では初の東京・日本武道館ワンマンも行われた。2016年2月には山崎ゆかり(空気公団)の全面プロデュースによる9thシングル「透明な女の子」、同年6月には全曲自作詞に挑戦した10thシングル「あたらしいうた」、11月には秦基博とのコラボレーションによる11thシングル「ざらざら」と3枚のシングルをリリース。2017年2月には4thアルバム「Opportunity」を発表し、4月から全国5都市を回るコンサートツアー「花澤香菜 live 2017 "Opportunity"」を行う。