音楽ナタリー Power Push - 花澤香菜
“UK”をテーマに探求した素敵な世界
作詞家・岩里祐穂との特別な関係
──4thシーズンのシングル曲についてはそれぞれのリリース時に詳しく聞いてきましたので、今回は書き下ろし曲について聞かせてください。まずは1曲目の「スウィンギング・ガール」ですけど、聴いたあとでクレジットを確認して「kz(livetune)さんだったのか!」と驚きました。kzさんにはやっぱり四つ打ちエレクトロのイメージがあったので。
そうなんですよ。kzさんは引き出しが本当に多いんです。今回は「UK」をテーマにしたうえでkzさんに作ってほしい曲のイメージがあったので、それを伝えました。
──アルバムの幕開けにふさわしい、華やかなサウンドですね。
はい。アルバムの曲順は最終的に北川さんが決めたんですけど、作っている段階で「これが1曲目かな」と思ってました。
──作詞は2ndアルバムから数多くの楽曲に参加している岩里祐穂さんですね。岩里さんは今回、シングル曲を含む6曲で作詞を手がけていますが、アルバムのイメージを固めていくうえでどんなお話をしましたか?
アルバム全体のことをお話することはなかったんですけど、岩里さんとはちょくちょくお会いして近況をお話していたり、個人的なやりとりはしていたので、最近私が考えていたことも歌詞で表現してくださっていますね。考える余地を与えてくれる岩里さんの歌詞が私は大好きで、今回もいろんなところからテーマを持ってきてくださいました。「ざらざら」(2016年11月に発売されたシングルの表題曲で、作詞は花澤本人。参照:花澤香菜「ざらざら」インタビュー)のときに「なんか悩んでるのかな」と察してくださったんだと思うんですけど(笑)、それを明るく励ましてくれるような歌詞もあって。
──通常の歌手と作詞家の関係ではあまりないかもしれない、特別な関係性ですよね。往復書簡のような。
そうですね、うふふふ(笑)。
Simply Redと組んだ本場のUKサウンド
──シングル「あたらしいうた」を挟んでの3曲目が、Simply Redとのコラボレーションによる「FRIENDS FOREVER」です。やはり本場イギリスのアーティストと組んだ作品ということで、今作の核となる楽曲かと思うのですが。
はい。実は今回のアルバムの中で最初にできたのがこの曲なんです。デモはミックの歌声で、演奏もSimply Redなんですけど、せーので録ったような自然な演奏で、ミックも自由に歌ってるんですよ。その時点で最高で、このままリリースしたほうがいいんじゃないかなと思いました(笑)。
──耳なじみのいいポップスではあるけど、メロディが洋楽的というか、まあ海外の方が作って演奏しているので実質洋楽ですよね(笑)。
あははは(笑)。そうですね。フェイクも独特で。先日さっそくライブで歌ったんですけど、すっごく楽しいんですよ。
──Simply Redとの共演は驚きでしたけど、続く「星結ぶとき」のSpangle call Lilli lineも意外でした。これまでもロックテイストの楽曲はありましたけど、いつになくソリッドな、緊張感のある演奏で。
そうですね。「マラソン」(2ndアルバム「25」収録曲)とかともちょっと違っていて。これまで歌ったことがない雰囲気の曲ですけど、そこにおなじみの(宮川)弾さんの歌詞が乗ることによって、とても身近に感じられるというか。
──なるほど、それは確かに。「FRIENDS FOREVER」の西寺郷太(NONA REEVES)さんによる歌詞にも同じことが言えますね。「星結ぶとき」も歌の難易度は高そうだなという印象ですが、レコーディングはいかがでしたか?
レコーディングの前に何度もデモを聴き込んでいたので、そこまで苦労はしなかったです。
──宮川弾さんつながりの5曲目「滞空時間」は、宮川さんならではのキメ細かーく作り込まれたサウンドで。
1つのフレーズにいっぱい言葉が詰め込まれているような“宮川弾節”が炸裂しています(笑)。メロディラインはキャッチーで、デモを聴いた瞬間に「早く歌いたい!」と思いました。弾さんはすごく面白い方なんですよ。お話をしていると全然会話が途切れないというか。北川さんはお兄ちゃんというか、ちょっと父性さえ感じる包容力なんですけど、弾さんは……大学の先輩みたいな感じ(笑)。ちょっとからかわれて、私もからかい返すみたいな。
──宮川さんは過去すべてのアルバムで楽曲提供してますけど、花澤さんにどんなイメージを持って楽曲制作しているんでしょうね。
どうなんでしょうね。でも弾さんが書いてくださる曲は、前の曲の世界観をちょっと引き継いでいたりして、ひそかにつながっているんです。
国産UKロック&マンチェサウンド
──「カレイドスコープ」はUKロックに大きな影響を受けている沖井礼二(TWEEDEES)さんの作詞・作曲・編曲で、これもまた沖井節全開と言える仕上がりですね。
沖井さんは歌のレコーディングにも立ち会ってくださったんですけど、沖井さんからのリクエストは「もっと上から目線で!」「もっと強く」みたいな感じで(笑)。少しずつ探りながら声の表情を決めていきました。でも、そのあと実際にロンドンに行って、ロンドンの女性と触れ合ったときに「なるほど、沖井さんが求めていたのはこの雰囲気なんだな」ってわかりました。
──「透明な女の子」を挟んでの8曲目「Marmalade Jam」は北川さんの書き下ろしですが、カラフルでポップないつもの北川サウンドとはまるで異なるアプローチですね。1990年代前半のマンチェスターを思い出させるサイケなサウンドで。
今までになかった感じだし、ちょっとセクシーですよね。今までだったら異色に感じたかもしれないけど、このアルバムだからこそなじんでいるのかなあと思います。私の声でどう歌ったものかなと思いましたけど、あまり考えずに、このズンチャズンチャに乗せて自由に歌ってみようと思って挑んだら、わりとすんなり歌えました。
──次に来るのがアルバムの表題曲で、1分10秒の短い楽曲「Opportunity」です。作詞は岩里さんで、作・編曲は北川さん。
アルバム全体の楽曲がだいたいそろったところで、北川さんから「短い曲を入れたいんだよね」という提案があったんです。「Marmalade Jam」とこの次の「ざらざら」って、なかなか1つのアルバムに入る曲として結び付かないと思うんですけど、「Opportunity」が入ることによってすんなりとつながって。
──全体像が見えたあとで追加された曲が、アルバムの表題を背負う曲になったと。
そうなんです。岩里さんの歌詞がまたいいんですよね、しみじみと。
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- 4thアルバム「Opportunity」 / 2017年2月22日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray+フォトブック] 4104円 / SVWC-70251~2
- 通常盤 [CD] 3240円 / SVWC-70253
CD収録曲
- スウィンギング・ガール
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:kz]
ミト(B / クラムボン)
All Other Instruments:kz - あたらしいうた
[作詞:花澤香菜 / 作・編曲:北川勝利]
山本真央樹(Dr) / 千ヶ崎学(B / KIRINJI) / 末永華子(Piano) / 松江潤(G) / rionos(Strings Programming) / acane_madder(Cho, Programming) / 戸川卓士(Programming) - FRIENDS FOREVER
[作詞:西寺郷太 / 作曲:Mick Hucknall / 編曲:Andy Wright]
Roman Roth(Dr)Dejay Edmund(B)Dave Clayton(Key)Kenji Suzuki(G)Ian Kirkham(Sax)Kevin Robinson(Trumpet)John Johnson(Trombone)Andy Wright(Piano, Programming)Gavin Goldberg(G)acane_madder(Cho) / 北川勝利(ROUND TABLE)
Produced by Andy Wright - 星結ぶとき
[作詞:宮川弾 / 作・編曲:Spangle call Lilli line]
歌代龍勢(Dr) / 柳澤一誠(B) / 藤枝憲(G) / 笹原清明(G) / 林英和(Syn)
Other Instruments:大坪加奈 - 滞空時間
[作詞・作曲・編曲:宮川弾]
All Instruments:宮川弾 - カレイドスコープ
[作詞・作曲・編曲:沖井礼二]
原”GEN”秀樹(Dr, Tambourine) / 沖井礼二(B, G, Programming, Cho / TWEEDEES) / 湯本淳希(Trumpet / FIRE HORNS) / acane_madder(Cho) - 透明な女の子
[作詞・作曲:山崎ゆかり / 編曲・プロデュース:空気公団]
山崎ゆかり(Cho / 空気公団) / 戸川由幸(B / 空気公団) / 窪田渡(Piano, Organ, Syn / 空気公団) / オータコージ(Dr) / 奥田健介(G / NONA REEVES) - Marmalade Jam
[作詞・作曲・編曲:北川勝利]
千ヶ崎学(B / KIRINJI) / 松江潤(G)acane_madder(Cho, Programming) / 北川勝利(G, Programming / ROUND TABLE) - Opportunity
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:北川勝利]
北川勝利(G, Shaker / ROUND TABLE) / 末永華子(Piano) - ざらざら
[作詞:花澤香菜 / 作曲:秦基博 / 編曲:島田昌典]
あらきゆうこ(Dr) / 美久月千晴(B) / 島田昌典(Piano, Organ, Mellotron, Tambourine) / 秦基博(G) / 八橋義幸(G) / 室屋光一郎ストリングス(Strings) - 雲に歌えば
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:北川勝利]
北川勝利(B, G, Cho / ROUND TABLE) / acane_madder(Cho, Programming) - FLOWER MARKET
[作詞:岩里祐穂 作曲:片寄明人 編曲:片寄明人、北川勝利]
白根賢一(Dr) / 高桑圭(B) / 片寄明人(G) / 會田茂一(G) / 金澤ダイスケ(Organ, Syn) - brilliant
[作詞:花澤香菜 / 作・編曲:北川勝利]
みどりん(Dr / SOIL&"PIMP"SESSIONS) / 千ヶ崎学(B / KIRINJI) / 松江潤(G) / 北川勝利(G, Cho / ROUND TABLE) / acane_madder(Cho, Programming) - Seasons always change
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:矢野博康]
梅林太郎(G, Syn, Programming) / 矢野博康(Syn, Programming) - Blue Water
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:ミト]
All Instruments:ミト(クラムボン)
初回限定盤Blu-ray Disc収録内容
- Singing London with Kana
(ロンドン撮影の撮り下ろし映像)
初回限定盤仕様
- 三方背スリーブケース
- 撮りおろし48Pブックレット封入
- 特典Blu-ray付き
花澤香菜(ハナザワカナ)
1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には2ndアルバム「25」、2015年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」を発表。同年5月にスタートしたツアー「花澤香菜 live 2015 "Blue Avenue"」では初の東京・日本武道館ワンマンも行われた。2016年2月には山崎ゆかり(空気公団)の全面プロデュースによる9thシングル「透明な女の子」、同年6月には全曲自作詞に挑戦した10thシングル「あたらしいうた」、11月には秦基博とのコラボレーションによる11thシングル「ざらざら」と3枚のシングルをリリース。2017年2月には4thアルバム「Opportunity」を発表し、4月から全国5都市を回るコンサートツアー「花澤香菜 live 2017 "Opportunity"」を行う。