音楽ナタリー Power Push - 花澤香菜
秦基博作曲のバラードで締めくくる充実の2016年
カップリングは「ざらざら」に対する岩里祐穂からの回答?
──カップリング曲についても聞かせてください。「クラッシュシンバル」は末光篤さんの作・編曲で、バラードの「ざらざら」と打って変わってロックな楽曲ですね。そして作詞は、今年で作詞家活動35周年を迎えた岩里祐穂さん。
そうなんです。「ざらざら」の歌詞を書くときも岩里さんに相談したんですけど、最初に見せたときは「暗い!」って言われました(笑)。「ですよねー」って。岩里さんのアドバイスを受けて少し明るい方向に書き直したりもしたんですけど、結局最終的に元の歌詞に戻したんです。そんなことがあったので、「クラッシュシンバル」の歌詞は「香菜ちゃん、歌詞はこんなふうに書くんだぜ」って言われているような気持ちになりました(笑)。
──お手本を見せられたような。
「悲しい」「切ない」「寂しい」をそのまま書かずに表現する方法はいくらでもあるんだぜ、みたいな。もう1曲の「IN LOVE AND IN TROUBLE」も岩里さんが書いてくれたんですけど、2つとも「ざらざら」を踏まえて書いてくれたのかなという気がします。「クラッシュシンバル」は、「いろいろあるだろうけど、明るく行こうぜ!」って背中を押してくれるような歌詞で、それが末光さんのピアノのメロディと合わさって、とても軽やかなんです。これは歌う人も軽やかに笑顔でいなくちゃいけないなと思ったんですけど、笑顔で歌うまでにとても時間がかかりました。
──それはなぜですか?
リズムも音程の差も激しかったり、息継ぎのタイミングが少なかったりして難しい曲なんですが、末光さんは手加減なしに書いてくれたんだと思うんです。それはとてもうれしいことだし、なんとか応えたくて。すごく苦労しましたけど、最後は自分なりの正解が出せたかなと思います。
──「IN LOVE AND IN TROUBLE」は吐息やビブラートの表現が豊かだなと思いました。この曲はナカムラヒロシ(i-dep)さんの作・編曲ですが、花澤さんはどのように捉えて歌いましたか?
最初に聴いた印象は、とってもおしゃれだなあって思いました。ナカムラさんはレコーディングにも参加してくださったんです。すごく気さくな方で、私もリラックスしてレコーディングに挑むことができました。歌い方の相談も直接しながらレコーディングできたのでよかったです。歌詞に「12月の雨」とか「白い息」とあったので、やっぱり冬の感じを出したくて、吐息交じりに歌ってみたり。パートごとに歌い方を変えたりして、ナカムラさんと一緒に少しずつ作り上げていくような感じでした。
シングル3作、充実の2016年
──2016年は2月に「透明な女の子」(参照:花澤香菜「透明な女の子」インタビュー)、6月に「あたらしいうた」(参照:花澤香菜「あたらしいうた」インタビュー)、そして今作と、合計3枚のシングルを制作されました。改めて振り返って、どんな1年でしたか?
すごく充実してました。「透明な女の子」では空気公団とコラボさせてもらって。特にボーカルの山崎ゆかりさんとご一緒する時間が長かったんですけど、山崎さんが持っている世界観や人との接し方、言葉の選び方とか……どれもが素敵で。「こういう人になりたいな」「こんなふうに考えられたら素敵だな」と思うことをいっぱい吸収させてもらいました。ライブでも空気公団をバックに歌わせてもらいましたけど(参照:花澤香菜×空気公団、月見ル君想フで一夜限りのジョイント公演)、それもすごく刺激的でした。
──新しい刺激を受けたあと、おなじみ北川勝利(ROUND TABLE)さんとのタッグで「あたらしいうた」を作って。
「あたらしいうた」では空気公団から受けた刺激を、自分なりの言葉にして歌詞で表現できたと思います。そして「ざらざら」ではまた新しい出会いがあって。
──3作すべてアプローチは違えど、「変わりたい」という気持ちが表現されているのではないかと思います。なぜ変わりたいと考えるのでしょう。
それは周りにいっぱい素敵な人たちがいるからですね。そんな皆さんの思いに応えられるような人間になりたい。素晴らしいお芝居をする人も、素晴らしい曲を作る人も、素敵だなと思う人はみんな、表現に気持ちが入ってるんですよね。素晴らしい表現をする人たちが周りにいっぱいいる恵まれた状況なので、「このままじゃいけない」って常に思うんです。
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- ニューシングル「ざらざら」2016年11月30日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤[CD+DVD]1728円 / SVWC-70225~6
- 通常盤[CD]1296円 / SVWC-70227
CD収録曲
- ざらざら
[作詞:花澤香菜 / 作曲:秦基博 / 編曲:島田昌典]
<演奏メンバー>
あらきゆうこ(Dr)
美久月千晴(B)
島田昌典(Piano, Organ, Mellotron, Tambourine)
秦基博(G)
八橋義幸(G)
室屋光一郎ストリングス(Strings) - クラッシュシンバル
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:末光篤]
<演奏メンバー>
SATOKO(Dr)
ミト(B / クラムボン)
末光篤(Piano)
山本陽介(G) - IN LOVE AND IN TROUBLE
[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:ナカムラヒロシ]
All Programming & Instruments:ナカムラヒロシ(i-dep)
初回限定盤DVD収録内容
- ざらざら(Music Clip)
花澤香菜(ハナザワカナ)
1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には2ndアルバム「25」、2015年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」を発表。同年5月にスタートしたライブツアー「花澤香菜 live 2015 "Blue Avenue"」では初の東京・日本武道館ワンマンも行われた。2016年2月には山崎ゆかり(空気公団)の全面プロデュースによる9thシングル「透明な女の子」、同年6月には全曲自作詞に挑戦した10thシングル「あたらしいうた」、11月には秦基博とのコラボレーションによる11thシングル「ざらざら」と3枚のシングルをリリース。