友達からたまたま見せてもらった、角田純さんの画集「SOUND & VISION」。この絵を見て心がザワザワした。なんだかこの絵自体が“言霊”みたいに感じたんだよね。人間同士の間に言葉も文字も成り立ってない頃は、きっと角田さんの絵みたいな文様を通じて、お互いの気持ちや思いを確認し合ってたんじゃないかな。そして僕らが言語を持ったことで、見えにくくなったものがあるんじゃないかと思って。今回のアルバムジャケットでは「SHINJITERU」っていう文字の部分が浮き彫りになっていて、触感を楽しめるようになってる。「SHINJITERU」っていう言葉を字面だけで理解するんじゃなく、触れてみたりしていろんな感覚で自分の中に取り込んでもらいたいっていう思いから今回のジャケットをこういうデザインにしてもらいました。
今回のアルバムで1曲だけカセットテープで録音したものを入れたいなって思って“デンスケ”って呼ばれてるソニーのテープレコーダーを中古で買ったんです。「消磁器」っていう曲なんだけど、メタルテープで録ったら、これがめちゃめちゃ音がよくて! この重量とかサイズ感、あとはテープ独特の限られた収録時間とか、自分をその気にさせてくれる。自分の音が刻み込まれてるなっていうのを肌で感じたんだよね。で、大切なのが消磁器! これを電源につないでレコーダーの録音ヘッドに当てると、耐磁した磁力が消える。やってみたら見違えるように音がよくなって「消磁やべえ!」ってびっくりした。人間も思い込みすぎると、心に磁力が溜まっちゃうから。たまに消磁しないとね!
ギターって楽器はやっぱり好きだし、相棒みたいなものでもある。こないだ名器として知られるStradivariusっていうバイオリンのドキュメンタリー番組を観たんだけど、使ってるバイオリニストが「この楽器は自分のものとは思ってない。この先何代にも受け継いでいくものだ」って話してて。自分のギターもそうだなって思うんだよね。俺も年代モノのギターを使ってるけど、ふと思うと自分より長生きするものなんだなって。今回「消磁器」の弾き語りは、1940年代ぐらいのアコギを借りてレコーディングしたんだけど、音がとがってないって言うか、自分の歌を超えていかない。自分の声を一番目立たせてくれるところにギターがいてくれるような、なんとも言えない安心感があって。そうやって時代を経てきたものからもらう発想って絶対にあると思うし、どこかマジカルな部分を感じるんです。
ここ数年は“顔面写経”と名付けて、黒人のブルースマンやソウルシンガーの顔ばかりを点描することをずっとやってるんですけど、去年リリースした「深呼吸」のジャケットで自分の顔を描くことになって。そのときに自分の顔をマジマジと観察してみたら、肌が細かい角質で成り立ってるのがわかったり、目や鼻や口とか顔のパーツごとにいろんな造形をしてて、それらがすごく複雑に組み合わされているものなんだなって感動したんだよね。そうやって顔を見てると、顔の輪郭やシワの1本1本に意味がある。人間って点とか線でできてるんだなって気付いたんです。
- ハナレグミ「SHINJITERU」
- 2017年10月25日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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[CD]
3240円 / VICL-64847
- 収録曲
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- 線画
[作詞・作曲:永積崇] - ブルーベリーガム
[作詞:永積崇 / 作曲:堀込泰行] - 君に星が降る
[作詞:竹中直人 / 作曲:坂本龍一] - 深呼吸
[作詞・作曲:永積崇] - My California
[作詞:阿部芙蓉美 / 作曲:永積崇] - ののちゃん
[作詞・作曲:永積崇] - 消磁器
[作詞・作曲:永積崇] - 秘密のランデブー
[作詞:かせきさいだぁ / 作曲:沖祐市] - Primal Dancer
[作詞:阿部芙蓉美 / 作曲:永積崇] - 太陽の月
[作詞・作曲:永積崇] - YES YOU YES ME
[作詞:永積崇 / 作曲:阿部芙蓉美、永積崇、YOSSY]
- 線画
- NHKみんなのうた
ハナレグミ と うんだらか楽団
「うんだらか うだすぽん」 -
2017年11月15日配信
SPEEDSTAR RECORDS
- ハナレグミ ツアー「SHINJITERU」
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- 2017年11月7日(火)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2017年11月10日(金)北海道 Zepp Sapporo
- 2017年11月12日(日)宮城県 SENDAI GIGS
- 2017年11月14日(火)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年11月16日(木)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2017年11月17日(金)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年11月26日(日)大阪府 オリックス劇場
- 2017年12月6日(水)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- ハナレグミ
- 永積崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、その穏やかな歌声が好評を得る。2005年9月には東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの東京・日本武道館公演を成功させる。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。2015年8月に野田洋次郎(RADWIMPS)、YO-KING(真心ブラザーズ)、池田貴史(レキシ)、堀込泰行(ex. キリンジ)、辻村豪文(キセル)、大宮エリーら、さまざまなアーティストが参加したアルバム「What are you looking for」をリリース。2016年5月に公開された是枝裕和の監督映画「海よりもまだ深く」では、劇伴および主題歌「深呼吸」を手がけた。2017年10月にアルバム「SHINJITERU」をリリース。11月7日よりアルバムを携えた全国ツアー「ハナレグミ ツアー『SHINJITERU』」 を実施する。