音楽ナタリー Power Push - 永積 崇(ハナレグミ)×野田洋次郎(RADWIMPS)
共鳴しあう魂──2人が語る「おあいこ」制作秘話
ハナレグミが約4年ぶりとなるオリジナルアルバム「What are you looking for」をリリースした。本作は永積 崇自身による楽曲のほか、YO-KING(真心ブラザーズ)、池田貴史(レキシ)、堀込泰行(ex. キリンジ)、辻村豪文(キセル)、大宮エリーらが作詞や作曲を手がけたナンバーも収録。ハナレグミの新たな魅力を伝える1枚に仕上がった。
今回音楽ナタリーでは、アルバム収録曲「おあいこ」の作詞作曲を手がけた野田洋次郎(RADWIMPS)と永積 崇による対談を企画。制作にまつわるエピソードと、楽曲に込めた2人の思いを語ってもらった。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 須田卓馬 ライブ写真撮影 / 久保憲治
初対面から飲み屋でセッション
──2人は飲み友達だそうですね。
永積 崇 いつもベロンベロンになって崩れ落ちるまで飲んでるよね(笑)。
野田洋次郎 うん(笑)。
永積 最初に会ったのは、行きつけの飲み屋で俺がライブをやってたとき、洋次郎がふらっと入ってきて。
野田 「ハナレグミの人が歌うらしいよ」って聞いて友達と。2年半ぐらい前かな。
永積 そのときに、初めて会ってしゃべったんだよね。
──第一印象は?
永積 すごく話しやすかった。お互い気を遣わないっていうか。
野田 俺はけっこう緊張してましたよ(笑)。
永積 まあ、でもお酒飲んでたし、俺もライブしてたし。
野田 ワイワイしてたよね。
永積 そしたら洋次郎もだんだん酔っぱらってきて、ドラム叩いたりして最後セッションみたいになって。俺はすぐに心を開けるタイプじゃないから、初対面でああいう感じで、酒飲みながらしゃべれたのはよかったな。
野田 本当に楽しかったんですよ。俺はその日の崇くんのライブがすごくファンキーだったのが衝撃的で。こんなに土の匂いがする人なんだ、土着的なエネルギーを持ってるんだと思って。
──そこからはすっかり意気投合して?
永積 うん、たまに洋次郎から「飲みに行きませんか?」ってメールが来たりして。俺あんまり友達いないから、洋次郎から誘われるともう「行くぜ!」って。
野田 酔っ払ったときの崇くんの十八番があって。マイケル・ジャクソンを流すと自動的に踊り出すっていう、すさまじい時間があるんです(笑)。
永積 洋次郎はそれをいつも見守ってくれてる(笑)。
野田 俺、あの感じをハナレグミで出すべきだと思うんですよね。
永積 「次のハナレグミそれでいこう! 可能性あるよ!」って。同じことを原田郁子も言うの。すごいプロデューサーが2人いる(笑)。今回一緒にレコーディングして思ったけど、洋次郎はプロデューサーとしての感覚も鋭いんですよ。言うことがいちいち面白いし、ちゃんと全体を見てるの。
野田 ハナレグミのファンの人たちが知らない崇くんをどう伝えていくかっていうのが、郁子と俺の課題なんです(笑)。
歌うことの意味を探していた
──永積さんが、今回のアルバムでいろんな人に曲を書いてもらおうと思ったのはなぜですか?
永積 「オアシス」(2011年9月リリース)を作り終わったぐらいから、自分だけで完結することに捉われなくていいんじゃないかって思うようになったんです。俺は曲を書いたり詞を書いたりもするけど、やっぱり歌いたいんですよね。
──ソングライターというよりはシンガーとして。
永積 うん、自分の言葉だけじゃなく、もっといろんな人の言葉を借りて歌うことに重心を置いてみたくなって。それもあってカバーアルバム(2013年5月リリース「だれそかれそ」)を作ったんです。なんて言えばいいかな。知らない街に行ったとき、そこに自分が住んでいたような感覚を覚えることってあると思うんです。初めてだけど懐かしい。そういう感覚を自分のアルバムの中に入れていけたらっていうのは「オアシス」を作って思ったことですね。「オアシス」で、そこまでのハナレグミが1回全部やりきった感じがあったというか。
──なるほど。
永積 あと「オアシス」のレコーディング中に震災があったのもすごく大きくて。「自分は何をやっていくんだろう」「自分にとって歌ってどういうものなんだろう」ってことを見つめ直したんですよね。その結果、震災前に作った曲の中で、どうしても歌えない曲ができたりもして。「俺は何をわかってるつもりでこんなこと書いたんだろう」と思って怖くなった。そうやってこの数年、歌を歌うことの意味を探してたとこはあります。
──そういう葛藤を経て生まれたこのアルバムですが、野田さんはアルバムを通して聴いてどんな印象を受けましたか?
野田 すげえ好きですね。なんて言うのかな、うーん、すげえ好き(笑)。
永積 あはは(笑)。ありがとう。
野田 聴くたびに好きな曲が出てくるし、前半のちょっとフリーダムな感じからの、7~9曲目あたりの流れが特によくって。さっき崇くんが「初めての街なのに住んでたことがある感じ」って言ってましたけど、全体にその“聴いたことある感”がすごいんですよ。特に「Oi」とか、そうだよね。
永積 「Oi」は6~7年前に書いた曲なんだけど、ライブでもほとんどやったことなくて、ほぼお蔵入りみたいな感じだったの。たわいもない、ふとした瞬間のことを歌ってるんだけど、そこに思いが込められてないと、この曲ってすっと流れちゃう気がしてて。でも今はこの曲に書かれてる言葉に自分が追いついた感じがあるかなあ。
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- ハナレグミ ニューアルバム「What are you looking for」2015年8月19日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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収録曲
- Overnight trip to Chiang Mai
[作曲:永積 崇] - 祝福
[作詞・作曲:YO-KING] - 旅に出ると
[作詞:大宮エリー / 作曲:永積 崇] - フリーダムライダー
[作詞:永積 崇 / 作曲:永積 崇、池田貴史] - 無印良人
[作詞:永積 崇 / 作曲:堀込泰行] - 11Dandy
[作詞・作曲:永積 崇] - ぼくはぼくでいるのが
[作詞:永積 崇、辻村豪文 / 作曲:辻村豪文] - おあいこ
[作詞・作曲:野田洋次郎] - Oi
[作詞・作曲:永積 崇] - 金平糖
[作詞・作曲:永積 崇] - いいぜ
[作詞・作曲:永積 崇] - 360°
[作詞・作曲:Cobhams Emmanuel Asuquo、Elemide Bukola / 日本語詞:永積 崇] - 逃避行 ~よなよなおっぱじめ!! live ver.~
[作詞:大宮エリー / 作曲:永積 崇]
ハナレグミ
1974年東京生まれの永積 崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、そのおだやかな歌声が好評を得る。2005年9月には 東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、台風に伴う大雨にもかかわらず約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの東京・日本武道館公演を成功させる。2011年9月には5thアルバム「オアシス」を発表。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。2015年8月、野田洋次郎(RADWIMPS)、YO-KING(真心ブラザーズ)、池田貴史(レキシ)、堀込泰行(ex. キリンジ)、辻村豪文(キセル)、大宮エリーら、さまざまなアーティストが参加したニューアルバム「What are you looking for」をリリース。
RADWIMPS(ラッドウィンプス)
2001年に野田洋次郎(Vo, G)が友人に誘われバンド結成。バンド名の「RADWIMPS」とは「カッコいい弱虫」という意味を持つ造語。2002年8月に「YOKOHAMA HIGHSCHOOL MUSIC FESTIVAL 2002」に出場してグランプリを獲得し、2003年7月にはアルバム「RADWIMPS」をインディーズからリリースするも、野田の受験を理由に活動休止。2004年3月に現メンバーで活動再開し、2005年11月にシングル「25コ目の染色体」でメジャーデビュー。2007年8月には神奈川・横浜アリーナでのワンマンライブも開催し、大成功を収めた。2009年3月に「アルトコロニーの定理」、2011年3月に「絶体絶命」、2013年12月に「×と○と罪と」とフルアルバムを発表。東日本大震災の発生直後には特設サイトを立ち上げ、以降毎年3月11日にYouTubeを通じて被災地復興の思いを込めた楽曲を発表している。2015年6月、野田の初主演映画「トイレのピエタ」の主題歌「ピクニック」をシングルとしてリリース。