ナタリー PowerPush - HanaH

愛を分け合う新作と知られざるヒストリー

10歳から曲作り

──今回のインタビューでは、読者にHanaHというアーティストを深く知ってもらえるよう、新作のことだけでなく過去のことも訊いていきたいと思います。

インタビュー写真

確かに良い機会ですね。私、自分のヒストリーを知れるところがないんです。自分自身も時間の流れにあまり執着しない人間だから、今までどんな人と知り合って、どこでどうなって今があるのか、たまに忘れちゃうことがあって。良い機会なんで語らせてください(笑)。

──ではいきますね。HanaHさんはご両親が2人ともミュージシャンで、家の中には音楽があふれていたそうで。

そうなんです。お父さんがジャズギタリストで、お母さんがジャズシンガー。お父さんがギターを弾いてると、台所でお母さんがそれに合わせて歌いながらごはんを作って、私たち子供も食器をガチャガチャ言わせたりして(笑)。特別裕福な家庭ではないんだけど、面白い家でした。

──そういう環境だったら、自分で音楽表現を始めるのも自然な流れかもしれませんね。

そうそう。子供の弾いていい中古のギターっていうのが家にあって、10歳くらいのときに、それをいじって曲を作り始めたんですよ。比較的早いかもしれないけど、うちの姉弟みんなそうでしたね。ちなみにうちねえ、5人姉弟で女女女女男なんですよ。私は2番目。

──多いですね! じゃあ音楽で食べていきたいと思い始めたのはいつ頃?

幼稚園の頃から既に「歌手になりたいな」と思ってましたね。確かお花屋さんか、ケーキ屋さんか、歌手になりたかった。

──そしてHanaHさんは高校卒業後、本格的にシンガーの道を歩み出します。大学には進まなかったんですね。

自分の興味のないことに時間を費やすのがすごく嫌な性格だから、大学に行くのは考えられなくて。既に高校時代からお小遣い稼ぎのようにスタジオミュージシャンとして少し仕事もしていたから、「これでプロになれるんだな」と思ってたんです。だけど世の中そう甘くはなくて(笑)、結局親に諭されて就職しなきゃいけなくなったんです。そこで、どうせ働くんだったら音楽に近いところがいいなと思って、夜な夜なライブをやっているお店でウエイトレスとして働くようになったんですよ。

趣味の合う人とバッタリ出会える場所がPLUGだった

──そのようにシンガーとして活動を始めてからメジャーデビューするまでの7~8年。この間にはどんな出来事があったんですか?

19歳くらいのとき、渋谷区松濤で女の子4人でルームシェアしていた時期があったの。同時に渋谷PLUGとか、渋谷ROOMとか、kawara CAFE(※代官山LOOPなどを運営するSLDの系列カフェ)に入り浸るようになって。そういうところで弾き語りをしたり、セッションやってるところに飛び入りで歌ったりして遊んでいたら、音楽好きな友達が増えていったんです。

──特に思い出深い現場はどこですか?

PLUG!

──PLUGではどんなアーティストに出会ったんですか?

インタビュー写真

もう解散しちゃったけどurbやgrooveline、それからSOIL & "PIMP" SESSIONSになる前のSOIL & HEMP SESSIONS、そのへんのクラブジャズシーンのアーティストとはPLUGで知り合いました。元晴(SOIL & "PIMP" SESSIONS)さんやニノさん(二宮純一 / SPEACLOUD)は、みんなアメリカのジャズ、ソウル、R&Bに影響を受けてるプレイヤーだから、セッションはまるでニューヨークの空間みたいですごい刺激的でしたよ。それまで私の周りには、ディアンジェロとかエリカ・バドゥのような、アコースティックでちょっとジャジーなニュアンスを持つR&Bを歌っている人や聴いてる人があまりいなくて、そういう趣味の合う人とバッタリ出会える場所がPLUGだった。

──なるほど。

その時期は「今○○でセッションしてるから遊びに来なよ」って仲間を電話で呼び出しては、集まってよくセッションしてましたねえ。みんなまだ音楽の仕事が少なくてアルバイトとかしてて、朝までセッションしたあと3時間くらい寝たらバイト行く、みたいな生活で(笑)。今はそれぞれデビューしたり、音楽の仕事が忙しくなったりしていて、すごいうれしいな。

──その時期、楽しい仲間が増えていく反面、壁にぶつかったり落ち込んだりすることはありましたか?

思うようにいかなくて、もう歌辞めようかなって思った瞬間もありました。そんなとき救ってくれたのが、45 a.k.a. SWING-Oさん。「HanaHは才能があるから応援するよ」と言って、自分のイベントにゲストとして呼んでくれたり、ほかのライブに私をブッキングしてくれたり、バンドも全部手配してくれたりして、歌う環境を整えてくれたんですよ。私がメンタル面で弱っているとき、そんなふうに周りの人が支えてくれたから、だんだん歌うことに本当の意味でのめり込むようになっていったんです。

──さまざまなライブハウスでたくさんのアーティストと知り合い、セッションを重ねたことは、今回の「loveflower」にもちゃんとつながっていますよね。

本当にそうですね。「life is only one time feat. COMA-CHI」を一緒に作曲したROOT SOULも、「ピンクのハート」でベースを弾いてくれた小林しんじゅくんも、この時期に知り合った。私のバンドメンバーでもある渥美幸裕くん、鈴木渉くん、白根佳尚くんだったり、今はメジャーデビューしたさかいゆうくん、MARU a.k.a. Fire Lilyちゃんも。一緒にライブをしたり、ジャムセッションしたり、お酒を飲んだり、いろんなことをして遊んだ友達です。

ニューアルバム「loveflower」 / 2012年3月21日発売 / 2100円(税込) / NAYUTAWAVE RECORDS / UMCC-1053 / Amazon.co.jpへ

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CD収録曲
  1. love ~限りある時間が終わる前に~
  2. また笑って会えたら
  3. life is only one time feat. COMA-CHI
  4. ピンクのハート
  5. paradise
  6. 奇跡はあなたの中に
  7. 愛されたくて 愛したいだけ (acoustic version)
  8. Music Can Change the World (Album Version) / quasimode feat. HanaH(ボーナストラック)
HanaH(はな)

1983年生まれの女性シンガーソングライター。ジャズギタリストの父、ジャズシンガーの母の間に生まれ、幼少の頃から音楽に囲まれた環境で育つ。10歳から曲作りを始め、高校卒業後より音楽活動が本格化。さまざまなレコーディングやセッションを重ね、渋谷界隈のアンダーグラウンドシーンのアーティストたちと交流を深める。MISIAのバックコーラスや、エリカ・バドゥやBOYZ II MENの来日コンサートでデュエットするなど、その歌唱力は国内のみならず、海外アーティストからも絶大な支持を得る。2008年12月、ミニアルバム「soulflower」を発表。翌年8月にシングル「明日また、笑えるように」でメジャーデビューを果たす。その後、2010年8月に1stアルバム「i'm not alone」、2012年3月に2ndアルバム「loveflower」をリリース。ダイヤモンドのような輝きと強さを併せ持った歌声は、人々の心を魅了し続けている。