テレビアニメ「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X」が、7月2日よりMBS/TBSほかで放送されている。音楽ナタリーではオープニングテーマとして「アンダンテに恋をして!」を提供したangelaと、エンディングテーマ「give me ♡ me」を提供した蒼井翔太の対談を実施。第1期でも同じくテーマ曲を担当したangelaと蒼井は、自身が作り上げた“第1期のテーマ曲”というハードルをどのように越えて新曲を完成させたのか。お互いの新曲を聴いた感想などを交えながら、「はめふらX」のテーマ曲制作の裏側を語り合ってもらった。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 曽我美芽
ジオルドを演じるにあたってなくてはならない曲
──「はめふら」の第1期でangelaと蒼井さんはそれぞれオープニングとエンディングを担当なさいましたが、どちらもハマっていましたね。
蒼井翔太 アニメって、オープニングテーマがあって本編になだれ込むという流れがあるじゃないですか。「はめふら」第1期の「乙女のルートはひとつじゃない!」は作品のロイヤル感やスパイラル感やワクワク感といったものが全部詰められていて、かつangelaさんの色がすごく強く出ている楽曲で。だからこそ僕自身も演者として「はめふら」の世界に入り込みやすかったですね。
atsuko へええ。じゃあ、アフレコのときに「乙女のルート」を聴いてたってこと?
蒼井 はい。アフレコ用の映像データにオープニングも入っているんですよ。毎回それを観たうえで演技に入る感じだったので、ジオルドを演じるにあたってなくてはならないものでしたし、共演者の皆さんもそうだと思います。
KATSU 現場で“プロのジオルド”も聴いてたんだ。
atsuko 我々は手探りというか、原作やシナリオから感じたままに曲を作ってしまったので、それが果たして正解なのかわからないところがあって。例えば翔太くんが今言ってくれたロイヤル感にしても「舞踏会っぽく3拍子、ワルツもいいね」とか、そういう思い付きを全部乗せにしたのが「乙女のルート」だったので、それが演者の皆さんにまで受け入れられていたというのはとてもうれしいですね。そしてエンディングが「BAD END」というSっ気がすごい、攻めた曲じゃないですか。
蒼井 Sっ気ありますね。ジオルドの強引さが表れていて。僕としてはもうちょっとロイヤル感を出したほうがいいのかなと思ったんですけど、アニメの制作サイドの方から「あまり作品に縛られなくていい」と言われまして、ああいう形になりました。
atsuko やっぱりね、ジオルドを演じている翔太くんが歌うからこそ……。
KATSU プロのジオルドがね。
atsuko そう、プロの……さっきからKATSUさん「プロのジオルド」って言いたいだけでしょ(笑)。
──アマチュアのジオルドっているんですか?
蒼井 興味深い(笑)。
atsuko そんなプロのジオルドが「バッドエンドの運命でも 俺のモノになればいい」と歌ってくれたおかげで、すごく締まったなと思いました。
KATSU 僕らがオープニングで「乙女のルートはひとつじゃない!」と言っているのに、翔ちゃんはエンディングで「BAD END」と言い切るという流れがすごく好きで。特に第1期後半の、物語的にどんどん先が気になってくる展開と「BAD END」のハマり具合が震えるほど面白かったんですよね。いち視聴者として「来週も観なきゃ!」みたいに引っ張られる。エンディングがちゃんとエンディングしてたなって。
蒼井 うれしい。「BAD END」はタイトルが先に決まっていて。乙女ゲームは選択肢の選び方次第でトゥルーエンドにもバッドエンドにもなるけれども、じゃあどのエンドなら最も強く愛を表現できるのか。そう考えたとき、それこそatsuko姐さんが「バッドエンドの運命でも」とおっしゃったように、ジオルドの腹黒さも込みでバッドエンド一択だと思ったんですよ。
「第九」はすぐにバレた
──そして第2期もこの2組が続投という形になりましたが、続投の難しさというものも当然ありますよね?
atsuko ありますね。
KATSU ただ、「はめふら」の場合は監督がテーマを投げてくれるんです。今回は「ステップが踏めておしゃれな曲」と言われまして。
蒼井 へえええ。
KATSU でもね、それだけなの。抽象的でしょ?(笑) やっぱり僕らとしても第1期の「乙女のルート」と対にならなきゃいけない、あるいはそれを超えなきゃいけないとか意識せざるを得ないところがあるんです。しかもangelaは翔ちゃんみたいにプロのジオルドとして演技で貢献できるわけでもなくて、楽曲をお渡ししたらもう手出しはできないっていう。
蒼井 「アンダンテに恋をして!」はミュージックビデオも拝見して、ステップも覚えました。
atsuko なんで覚えたの(笑)。
蒼井 あのMVで「もし『はめふら』の世界が実際にあったらこういう感じかな」と思ったんですよ。atsuko姐さんとKATSU兄さんとダンサーさんたちがマネキンを囲んでフォークダンス的なステップを踏んでいるシーンも、カタリナを中心に宴が開かれているかのようで。「乙女のルート」は作品の名刺として完璧に機能していたと思っているんですけど、「アンダンテに恋をして!」はその先を想像させてくれるような楽曲で、同じように演者としても気持ちよく入っていけるように感じましたね。
──「アンダンテに恋をして!」は続編感もありますよね。例えば「乙女のルート」でベートーヴェンの交響曲第5番、通称「運命」を引用していたように、今回もベートーヴェンの交響曲第9番を……。
atsuko あら、気付いちゃいました? わからないように溶け込ませたと思ったんですけど。さもあのメロディを自分で作ったかのように(笑)。
KATSU 「乙女のルート」を作った去年がたまたまベートーヴェンの生誕250周年だったんですけど、今回も前作とのつながりを持たせつつ、みんながクスッとなるようなことがやりたくて。でも、意図としては「このメロディ聴いたことあるけど、なんだっけ?」と思わせるつもりだったのが、すぐ「第九」だとバレちゃった。
なんか、それっぽい言葉で
atsuko 私たちはデビューしてから今までいろんなアニメの曲を書いてきているんですけど、やっぱり続編になればなるほど難しくて。だいたい第1期の時点でやれることは全部やってしまうので、「続きがあるよ」と言われたときには空っぽになっているのが常なんですよ。そのうえで今回は監督から「ステップが踏めておしゃれな曲」というオーダーをいただいたんですけど、「はめふら」の世界でステップを踏むならワルツが合いそうじゃないですか。でも、その手は「乙女のルート」で使ってしまったし、1曲通して3拍子で行くのもちょっと違う。そこでKATSUさんが……翔太くんは「タイタニック」という映画はご存知?
KATSU 翔ちゃん、映画公開時は生まれてた?
蒼井 生まれてましたし、知ってますよ(笑)。
atsuko その「タイタニック」で、ジャックとローズが船内の居酒屋みたいなところで……。
KATSU 「居酒屋」言うな(笑)。
atsuko バイオリンがひゃらひゃらと演奏される中で踊るシーンがあるんですけど、「そういう感じがいいんじゃない?」とKATSUさんが言ってくれて。そこからポルカとかアイリッシュダンスみたいな音楽を取り入れながら組み立てていって……そのわりには歌詞にフランス語がちょいちょい入ってきてるんだよね。
KATSU 「なんか、それっぽいよね」って。
atsuko これも思い付きなんですけどね。「はめふら」特有のドタバタ感や、どんなにシリアスな状況になっていてもお腹が鳴ったり寝たりしちゃうカタリナの愛らしさ、そしてロイヤル感を表せる言葉を探したらフランス語しか見つからなかった(笑)。
蒼井 しかもカタカナで「セシボン」とか「ジュテーム」とか。
atsuko 歌詞を書くときに、意味がわからなすぎる言葉を使っちゃいけないというルールがなんとなく私の中にあるんですよ。昔、ある人から「読めないものは売れない」と言われたことがあって。例えば居酒屋のメニューでも漢字が読めない魚のお刺身って頼みづらいじゃないですか……あ、どうでもいいやこの話。
蒼井 いやいやいや! 大事なことだと思います。
atsuko コメントとして安っぽくない? あ、そうだ1つだけ。タイトルに使った「アンダンテ」は速度記号という、音楽のスピードを表す言葉なんですけど……でもこれはイタリア語だよね?
KATSU イタリア語だね(笑)。
atsuko だから結局「それっぽい」という理由で選んだ言葉なんですけど、速度記号にはほかにも「アダージョ」とか「モデラート」とかいろいろあって、その中で「アンダンテ」は「歩くぐらいのスピードで」という意味なんですよ。で、「はめふら」第2期のシナリオを読むと相変わらずカタリナはモテモテで、新キャラの中には彼女にグイグイ言い寄ってくる人もいるんです。それでもゆっくりと、マイペースに恋をしようという思いから「アンダンテに恋をして!」というタイトルにしました。どう? どう? 今のコメントはアーティストっぽくない?
KATSU 「はめふら」の世界はヨーロッパ風なんですけど、文字はあの世界独自のもので、アルファベットは使ってないんですよね。だからatsukoがフランス語入りの歌詞を書いてきたときにアニメの制作サイドに「『はめふら』の舞台は、フランスではないですよね?」って。
蒼井 ちゃんと確認したんですね(笑)。
KATSU そこであっさり「なんでも好きな言語を使ってください」と言っていただいたんですけど、僕もフランス語のセレブっぽい響きがいいなと思ったんです。というのも「タイタニック」のローズと同じように、「はめふら」のキャラクターもみんな王子様とかお姫様というセレブなんですよね。
atsuko そうそう。
KATSU そんなセレブな人たちが、決して上から目線でなく、庶民の娯楽に楽しみを見出すみたいなところでポルカしか考えられなくなって。そういうアレンジは今までangelaではできなかったので、かなり楽しかったですね。例えばアコーディオンとかも、一応は譜面を渡しつつ「自由に弾いてください」とお願いして、自分が想定していなかったフレーズが出てきたらそのテイクを採用しちゃうみたいな。ただ、この曲にはドラムがなくて、その中でリズム感を表現していくようなアレンジだったんですよ。だからエンジニアさんが一番大変だったと思うんだけど、「ステップが踏める」というオーダーには応えられたかなと。でも「おしゃれ」に関しては……ごめんなさい(笑)。
atsuko 「おしゃれ」はわからなかったね(笑)。
KATSU 「おしゃれ」は翔ちゃんに任せました。
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