音楽ナタリー Power Push - 浜崎貴司×奥田民生
同い年2人のマイペースな音楽談義
浜崎貴司が初のソロベストアルバム「シルシ」をリリースした。
本作は、小泉今日子、MCU(UL)、斉藤和義、YO-KING(真心ブラザーズ)、おおはた雄一といった親交のあるアーティストたちとのコラボ曲やライブ音源を収めた充実の16曲入り。彼のキャリアを存分に楽しめるバラエティに富んだ内容だ。
今回音楽ナタリーではベスト盤の発売を記念して、浜崎と収録曲「君と僕」を共作した奥田民生との対談を企画。同世代ならではの音楽談義を繰り広げてもらった。
取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 緒車寿一
だって、浜ちゃん怖いじゃん
──今回は浜崎貴司さんの初のソロベストアルバム「シルシ」リリースを記念して、収録曲「君と僕」を共作された奥田民生さんにお越しいただきました。
奥田民生 ベスト盤発売おめでとうございます!
浜崎貴司 ありがとうございます。今回のベストは、1曲目の「BAILA BAILA」と新曲「君の笑顔」以外はほぼリリースした順番に並べて。「君の笑顔」と「ゴールデンタイム」は聴いた感じの流れで入れ替えたんですけど。
奥田 って、新曲入ってたらベストじゃないじゃん(笑)。
浜崎 あくまで今の俺のベストってことで(笑)。未発表曲の「BAILA BAILA」は10年以上前に作った音源が行方不明になってたんだけど、たまたまMDが見つかったんですよ。聴いたら想像以上によかったんで、ぜひベストに入れたいって話になって。
──近年はライブで共演することの多いお2人ですが、共に1965年生まれです。バンド活動を経てソロになり、現在はソロと並行して再びバンド活動もされているなど、共通点が多いですよね。あとは、浜崎さんがPerfumeの「Wonder2」、民生さんが「レーザービーム」をライブでカバーされていたり。
奥田 その共通点か!(笑) 俺たち、あのときはPerfumeから直接踊りも習ったからね(2014年12月に大阪・大阪城ホールで行われたライブイベント「仮面チャウダー ~YAJIO CRAZY~ チャウ大ユニバーシティインターナショナルコラーゲンハイスクール」)。
浜崎 あれは楽しかった。
奥田 あのときは吉井和哉が誰よりも楽しそうだったよね。
──そもそも最初の出会いはいつだったか覚えてらっしゃいますか?
浜崎 25年くらい前ですよね。俺がユニコーンのライブを観に行って、楽屋に挨拶に行ったのがたぶん最初じゃないかな。そのあと民生くんがソロになったとき「ミュージックステーション」で一緒になったのも覚えてる。そのときは「息子」歌ってましたよ。当時はほとんど話したことなかったですけど。
奥田 だって、浜ちゃん怖いじゃん。
浜崎 別に怖くないよ(笑)。顔だけだよ。
奥田 あの頃は俺、人見知りが激しかったから。やっぱり斉藤和義みたいなのがいると変わりますよね。彼の場合バンドじゃないし、積極的だから交友関係が広いじゃない? いろんなミュージシャンと仲よくなれたのは奴のおかげもあるかもしれない。自分と歳が近いっていうのももちろんありますけど。でもあいつは解散できない男だから、かわいそうだよね。
浜崎 (笑)。まあ、当時はバンドやってると個人で付き合うチャンスも少なかったもんね。
奥田 ソロになっても、メンバー固定でやってると、結局付き合いもそこばっかりになるし。それが40代後半になると、やることがなくなってきて「そっちどうしてんの?」って周りが気になるようになる。
浜崎 「俺のところ手伝ってよ」的な話も出てくるし(笑)。民生くんとは40代入ってから忌野清志郎さんのトリビュートライブなどで一緒にセッションすることも多くなって、2012年12月に俺がやってる弾き語りライブ「GACHI」に誘ったんですよ。民生くんの弾き語りは昔から「すげえすげえ」って周りが言ってたし、すごい人とやったほうが自分もエネルギー出るし。その日は、マッチ(近藤真彦)の「スニーカーぶる~す」とか歌って。そのときはすでに「君と僕」もできてて、レコーディングの打ち合わせしてたかな。
奥田 ああ、そうだったね。
民生とのセッションはリラックスして
浜崎 「君と僕」は最初、2人でギター弾きながら同時に歌も録るスタイルだったんですけど、どうもやりづらいから何かリズム入れようよって話になって。そしたら民生くんが「ゴミ箱叩いたらいいんじゃね?」って、スタジオにあるゴミ箱を持ってきたんです。それを2人で抱えて「俺スネア担当ね」「じゃ、俺キックだわ」みたいな感じでリズムパターン組んで。ゴミ箱に巻いてあるビニール袋のジャリジャリって音がドラムのスナッピーにちょっと似てて「いい音出たねー」なんて言いながら。
──クレジットにパーカッション担当でお2人の名前が入っていますが、それが……。
浜崎 ゴミ箱です(笑)。あとで俺が簡単なベース弾いて入れたんですけど、基本は1日で録って。その日、地球三兄弟のジャケ写撮りか何かでグラビアアイドルの子が撮影に来るから「その子を観に行くんだけど、一緒に来ない?」って言われて。それで俺が行ったらアホだろと思って遠慮しましたけど(笑)。
奥田 あったあった。あれは桜井(秀俊)とその子の撮影なのに、KING(YO-KING)も俺も現場に行ってたからね。用もないのに(笑)。
浜崎 民生くんとセッションするときはリラックスして臨むことが多いんですよ。こないだも北陸で「出前GACHI」(2015年12月3日に石川・金沢EIGHT HALL、12月4日に福井・響のホールで行われた公演)をやったんですけど、「北陸にいい店あるから行かない?」って言ったら、「いいねえ」って感じでOKもらって。あっちでいい酒飲んだよね?
奥田 うん。よかった。冬の北陸は最高です。
浜崎 1日目にいっぱい歌いすぎちゃって2日目は声出ないかもって言ってたら、民生くんが本番中に舞台袖に1回引っ込んでウイスキーのソーダ割りを持ってくるわけですよ。「これ飲んで、肩の力抜きなよ」って。それ飲んだら調子出ちゃって出ちゃって。終わったあとも打ち上げでカラオケ屋行って、さらに倍ぐらいの量を歌うっていうこともあったな(笑)。
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収録曲
- BAILA BAILA
- サンクチュアリ(SEIなるふたり)
- 呼吸のしるし
- MUSASINO
- オンナLIFE
- 時はただ今だけを乗せて
- ダンス☆ナンバー
- 恋サクラビト(featuring 小泉今日子)
- トワイライト(NEW VERSION)
- サーフライダー / MCU feat.浜崎貴司
- オリオン通り / 斉藤和義&浜崎貴司
- 君と僕 / 浜崎貴司×奥田民生
- ウィスキー / 浜崎貴司×おおはた雄一
- 君の笑顔 / 浜崎貴司×YO-KING
- ゴールデンタイム
- 幸せであるように(GACHI 高野山開創1200年 LIVE ver.)
浜崎貴司(ハマザキタカシ)
1965年生まれ、栃木県出身。1988年にファンクバンドFLYING KIDSを結成し、個性的な歌声とポップなサウンドで人気を集める。1998年のバンド解散後はソロに転向し、同年にシングル「ココロの底」をリリース。2004年にはMCUとユニット・マツリルカを結成する。ソロとして活動を続ける一方、2007年夏にFLYING KIDSを再結成し、「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2007 in EZO」に出演する。現在はソロとFLYING KIDSの活動を並行して展開中。2016年2月にソロとしては初めてのベストアルバム「シルシ」を発表した。
奥田民生(オクダタミオ)
1965年生まれ、広島県出身。1987年にユニコーンのボーカリストとしてデビューし、1993年のバンド解散までに「すばらしい日々」「大迷惑」など多数の楽曲を発表した。解散後はソロアーティストとして活動を開始。1994年にシングル「愛のために」でソロデビューを果たし、以降はマイペースに作品を発表し続けている。また、井上陽水奥田民生、O.P.KING、THE BAND HAS NO NAME、地球三兄弟、サンフジンズに参加したり、PUFFYのプロデュースを担当したりと多角的に活動。2009年にユニコーンが復活して以降は、ソロと並行してバンド活動も行っている。