「アロー」と「さよならガール」はつながっている
──H△Gのメンバーがさまざまな思いでメジャーデビューを果たしたのと同じように、収録曲の歌詞で描かれている卒業の捉え方もさまざまですよね。「アロー」の主人公はどちらかと言うと、卒業することに不安を感じていて、「さよならガール」では卒業を経て前向きに進んでいく主人公が描かれています。
Yuta 実は「アロー」と「さよならガール」の2曲はつながっているんですよ。「アロー」の主人公は男の子で、曲中に登場する女の子が「さよならガール」の主人公。逆に「さよならガール」に登場する男の子は「アロー」の主人公なんです。おっしゃる通り、「アロー」の主人公は卒業を前に立ちすくんでしまっていて、「さよならガール」の主人公は前を向いて歩いていく人間が描かれています。
Chiho 実は時間軸も一緒で、同じ卒業式の日を違う視点で描いているんです。
──なるほど。面白いですね。
Chiho 「アロー」の主人公は、昔の私に似てますね(笑)。今の場所から動きたくないって気持ちを持って卒業式を迎える人って少なくないと思っていて。「アロー」というタイトルには“道しるべ”って意味も込められているんです。卒業を迎える不安を汲み取りながらも、この曲が少し先を照らすような道しるべになったらいいなって思っています。
インディーズだったら生まれてこなかった曲
──昨今のH△Gのイメージに「星」という要素が入ってきた印象があります。アルバムには「銀河鉄道の夜を越えて」という曲が収録されていますし、アーティスト写真も星空のもとで撮影されたものです。それと昨年行われた「声」の発売記念ライブでの演出もプラネタリウムでした(参照:H△G、ワンマンで蝶々Pと“一緒に歩いてきた曲”演奏)。
Chiho 「歌詞に星って言葉が多いね」って言われたことがあって、H△Gのイメージの中に「星」「星空」というイメージが食い込んできているなっていうのは私も感じていました。
Yuta 僕らが最初に発表した曲「星見る頃を過ぎても」のイメージが強いのかもしれませんね。年末に地元のライブハウスでライブ納めをしたときに、出演バンドさんたちにH△Gのカバーをお願いしたんですけど、ほとんどのバンドが「星見る頃を過ぎても」を演奏してくれたんです。「あ、僕らの代表曲ってこの曲なんだ」って、改めて気付かされました。
Chiho そういえば「声~VOCALOID Cover Album~」のジャケットも星空のイラストでした。
──ファンクラブの名前も「星町」で、アルバムには「星町フィルム」という曲も収録されています。この「星町」は間接的に岡崎のことを指しているんですか?
Yuta 厳密には「星町」っていう空間は岡崎市をモデルとしてイメージしたもので、「星町フィルム」も「蛍案内図」も岡崎市のことを書いた曲です。「蛍案内図」に関しては、ありがたいことに「岡崎市のテーマソングを書いてほしい」という依頼をいただいて書いた曲なんです。メジャーに進出するまでは依頼されて楽曲を書くことがなかったから、インディーズのままだったらきっと生まれてこなかった楽曲だと思います。
Chiho 「星町フィルム」は岡崎の四季を歌った曲。“卒業”をテーマにアルバムを作ることで、いろんな出会いと別れの曲が生まれた中で、「星町フィルム」では変わらない岡崎の町並みを曲にしたんです。桜の名所や夏の風物詩になっている花火大会は、きっとこれから先もなくならない。変わっていくものと変わらないもの、どちらもアルバムに入れたかったんです。
──初回限定盤Bに付属するCDのDISC 2には、春夏秋冬をテーマにした曲が4曲収録されています。アルバムの最後の曲で四季を歌って、DISC 2で四季を1曲ずつ歌うという構成もよくできていると思いました。
Chiho DISC 2には過去に発表した曲のリアレンジバージョンを収録しているんですけど、振り返ってみるとH△Gは季節を歌った曲が多くて。H△Gにとって日本の四季って大事な要素なんだなって気付かされました。
Yuta 5、6年前に作った曲を改めて聴くと新鮮に感じる部分もあって。昔を思い出しながら、今のH△Gならではのリアレンジに仕上がったと思います。
Chiho ライブでは歌っていた曲でも、改めてオリジナルバージョンを聴いてみると自然と歌い方が変わっているところがいくつかあったんです。普段は気付かないような自分の中の変化を振り返ることができました。
Yuta けっこう斬新なアレンジを施している曲もありますけど、曲の大事な部分は変えていないつもりです。だからファンの方々には、きっと新しいバージョンも好きになってもらえると思います。
H△Gの新しい扉
──各作家さんからの提供曲についても聞かせてください。「アオイハルカゼ」を提供した宮田“レフティ”リョウさんは、H△Gのシングルの制作でも携わっていましたよね?
Yuta はい。僕らのメジャーデビューシングル「夏の在りか」も、2ndシングル「イタズラなKissとラブソング。」でもアレンジでお世話になりました。今回はすごくキャッチ―な曲を書いていただいて、なんて言うかH△Gとベクトルはちょっと違うけど、レフティさんの描く青春を強く感じて。
Chiho 出てくる言葉1つひとつにさわやかさを感じるんですよ。「夏の在りか」から一緒に曲作りをさせてもらってる中で、H△Gのことをうまく汲み取って楽曲を書いていただいて、すごくありがたいな、と思いながら楽しんで歌えました。
Yuta 歌詞もわかりやすいしメロディもキャッチ―で、一度聴いたら頭から離れられなくなるような曲になったと思います。
──6曲目「ゆめわずらいのバードマン」は、MiliのYamato Kasaiさんの提供曲です。Chihoさんの歌声とピアノの音をメインにして、今までのH△Gにはなかったサウンドなのが印象的でした。
Yuta H△Gは「クリエイター集団」と謳っていますけど、実際にはバンドサウンドに偏っているとは感じていて。でも今回Kasaiさんはバンドという枠を思いっきり無視した曲を書いてくれたんです。僕ら自身が「H△Gはバンドじゃなくてクリエイター集団なんだ」って気付かされた感じがしました。
Chiho H△Gとの付き合いが濃いKasaiさんが書いてくれた曲なので、きっと私たちのことをよくわかったうえでこの曲を書いてくださったんだと思うんです。今回はKasaiさんにボーカルのアドバイスもしてもらったんですけど、これまでやったことがなかったウイスパーボイスっぽい歌い方を提案していただいて。H△Gにとっても私にとっても、新しい扉を開いてもらった感覚があります。
Yuta 以前、Coming Next Artistsのインタビューで「H△Gには“Chihoちゃんマジック”がある」って話をしたと思うんです(参照:「Coming Next Artists」第3回 H△G)。
──はい。どんな曲でもChihoさんが歌うとH△Gっぽくなるとおっしゃっていました。
Yuta もしこの“Chihoちゃんマジック”がなかったら、今回のKasaiさんの曲は本当にH△Gの曲として成立するのか、すごく不安だったと思うんです。でも今回のKasaiさんの曲もChihoちゃんが歌えばきっとH△Gの曲になるって確信がありました。まあ最初に曲を聴いたときはビックリしましたけどね。ギターの音が入っていなかったし(笑)。
スタッフ メンバーには伝えていなかったけど、実はKasaiさんが「ライブでは実演メンバーの方々で考えて演奏できるように、あえて音を抜いておきますね」って言ってたよ。
Yuta え!? そうなんですか?
Chiho 私はTwitterで「ライブでできるようにしといたから、がんばってね」って言われました。そういう意味だったんですね。
──H△Gの中でレコーディングを担当するレコーディングチームではなくて、ライブを担当する実演メンバーに向けたメッセージなんですね。
Yuta H△Gのことをよく知っているKasaiさんならではの気遣いですね。ライブ、緊張するなあ。
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H△Gだけで作っていたら気付けなかったこと
- H△G「青色フィルム」
- 2018年2月14日発売
徳間ジャパンコミュニケーションズ -
初回限定盤A [CD+DVD]
3780円 / TKCA-74626 -
初回限定盤B [CD2枚組]
3780円 / TKCA-74627 -
通常盤 [CD]
3024円 / TKCA-74628
- CD収録曲
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- アロー
- さよならガール
- ミルク
- アオイハルカゼ
- 蛍案内図
- ゆめわずらいのバードマン
- 夏の在りか
- イタズラなKiss と ラブソング。
- 銀河鉄道の夜を越えて
- ピリオドノック
- 独白
- 星町フィルム
- 初回限定盤A DISC 2(DVD)収録内容
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- アロー Music Video
- イタズラなKiss と ラブソング。Music Video
- 夏の在りか Music Video
- 星のパンフレット Music Video
- Bonus Track. アロー Music Video -Making-
- 初回限定盤B DISC 2(CD)収録曲
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- 桜の唄 -New Version-
- あの夏、僕らは。 -New Version-
- 秋風ノスタルジック -New Version-
- 冬の唄 -New Version-
- H△G「春色フィルム」
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- 2018年4月7日(土)東京都 morph-tokyo
- 2018年4月14日(土)大阪府 ヒルズパン工場
- 2018年4月28日(土)愛知県 今池GROW
- H△G(ハグ)
- ボーカリストのChihoを中心に多数のコンポーザーやクリエイターからなるグループ。2012年に動画共有サイトで発表したオリジナル曲「星見る頃を過ぎても」は60万回再生を記録している。また「心拍数♯0822」といったVOCALOID曲のカバー動画などでも話題を集める。Miliとのコラボアルバムとして「H△G × Mili」「H△G × Mili vol.2」の2作品を発表しているほか、2016年12月にはORESAMAとのコラボアルバム「H△G × ORESAMA」をリリース。2017年5月にVocaloid曲のカバーアルバム「声 ~VOCALOID Cover Album~」を発表した。同年11月に映画「イタズラなKiss THE MOVIE3 ~プロポーズ編~」の主題歌を収録したシングル「イタズラなKiss と ラブソング。」をリリース。2018年2月にはメジャー1stアルバム「青色フィルム」を発表する。