「ネオ風街」や「シティフォーク」というイメージを壊したい
──先ほど“アルバムとしての統一感”について話が出ましたけど、全体的なまとまりはありつつも、音楽性は今までと比べてかなり拡張されてますよね。「ユメのはじまり。」のような、これまでのグソクムズらしさが詰まったフォーキーな曲もあれば、ストレートなロックチューンやサイケデリックなムードの曲もあって。かつて掲げていた「ネオ風街」や「シティフォーク」というコンセプトからは完全にはみ出している印象です。そのあたりは意識していたのか、自由にやった結果こうなったのか、どちらでしょうか。
加藤 めちゃめちゃ意識したよね。アルバムについてチームで話し合ったときに「シティフォークのアルバムを作る」という話が出たけど、俺が「“シティフォーク”の定義はなんですか」ってスタッフに突っかかったんですよ。「フォークはニューヨークでやってる音楽なんだからもとからシティだろ。全部アコギで作ればいいのかよ」って(笑)。
堀部 もともと「ネオ風街」も「シティフォーク」も、自分たちの曲を聴いてもらうためのフックとして言っていたのに、だんだんそのコンセプトだけが一人歩きし始めたんですよね。なんとなくのノリで言い出したものが実態を帯び始めてしまったというか。であれば1回このタイミングでそのイメージを壊したいよねって。「『ネオ風街』も『シティフォーク』も、もういいんじゃない?」というのがメンバー4人の共通の見解だったので。
中島 スタッフの方たちが「『このアルバムはシティフォークです』って銘打つためにはこういう曲があったほうがいい」というリストを用意してくれたんですけど、それをそのままやるとただの再現バンドになっちゃうじゃないですか。それは避けたいので、各々で曲を作ってきて、その結果できあがったアルバムがシティフォークっぽくなければ、別の名前を付ければいいんじゃないかなって。結果まだ名前は付いてないけど(笑)。
──やっぱり「シティフォークっぽいアルバムを作る」という話もあがっていたんですね。「グソクムズがメジャーデビューする、その一発目はどんな作品になってるんだろう」と思ったときに、少なからずそれを期待している自分もいて。それで再生したらいきなり「シグナル」のラウドなギターが流れてきたからびっくりしたんですよ。
一同 (笑)。
たなか マジかこいつらと(笑)。
加藤 でも最初は「陽気な休日」っていう未発表曲のイントロが一瞬流れるんだよね。
中島 1曲目の「シグナル」から驚かせたい気持ちがあって、「陽気な休日」のあと唐突にドラムマシーンも入れてるしね。
加藤 で、さらにギターリフが入ってくる(笑)。
──ラストの「ハロー!君といる」もサビのメロディだけを聴くとグソクムズらしさを感じるけど、コーラスではなく分厚いギターの音が乗っているあたりに、このアルバムの特色が表れているなと思いました。全体的に“ギターのアルバム”ですよね。
加藤 まあアレンジは8割方自分がやったんで、そうだと思いますよ。俺6割、堀部さん2割かな。
堀部 僕は呼ばれて弾いただけだから。
加藤 でも、堀部さんはすごいよ。いきなり「弾いて」って言われて何も言わずに弾くからね。
堀部 「1回聴かせて」とだけ言ってね(笑)。
たなか 今回のアルバム、堀部さんのギターがたくさん入ってるんですよ。だいたいの曲で堀部さんが弾いてるんじゃないかな。
堀部 そうだね。ギターは4人とも弾けはするんですけど、今回はアルバムの制作と並行してライブもいっぱいあったから、えいぞをが歌に集中したいということで。その結果僕がたくさん弾くことになりました。
加藤 最初から堀部さんに任せてたもんね。「『シグナル』無理だわ」って(笑)。
たなか 「シグナル」のギターを練習する時間があるなら歌に集中したいなと思って。
堀部 結果的にそうしてよかったと思うよ。
もやもやしてる若者に届ける“ハッピー”
──そもそも「ハロー!グッドモーニング!」というタイトルはどのように決めたんですか?
たなか 正直意味とかは全然ないです(笑)。中身自体がすごくいいアルバムになったから、もうタイトルはなんでもいいのかなと思って。
──特に深い意味はないんですね。「ハロー!グッドモーニング!」というタイトルを掲げながら、夜についての描写のほうが多いというのが少し気になったのですが……。
たなか 気になりますよね(笑)。
──でも、そのアンビバレントな感じが、もしかしたらグソクムズっぽさの1つのなのかなと思ったんですよね。以前たなかさんが、グソクムズらしさを「ポップだけど、そっちに流されすぎないってとこ」と定義付けたうえで「負けもせず勝ちもせずもやもやしてる若者の違和感を歌いたい」と語っていて。それと近い部分があるというか。
たなか なるほど。意識してそうなったわけではないけど、根本にあるそういう姿勢が表れてるのかもしれないです。ただ、僕個人で言うと、2年前に会社を辞めたりして、もやもやを感じることは以前より少なくなってきていて。その影響もあって、自分の書く歌詞はだんだんハッピーになっていると思ってます。「若者のもやもやを歌いたい」という気持ちより、「ハッピーな曲がもやもやしてる若者に届いてほしい」という思いのほうが、今は強いかもしれない。どうせ曲を作るなら、やっぱりハッピーなほうがいいのかなって。
──たなかさんの中ではそういった変化があったんですね。今お話しされたような「こういう曲を届けたい」という思いは、メンバー間で共有されてるんですか?
堀部 それはあんまりしてないよね。
中島 そうだね。個人個人が「こういう世界観で書けたらいいな」と思ってるものはあるはずだけど、「こういうことについて歌っていこう」という話は、バンド全体では特にしてないです。
たなか もともと似通ってるところはあるだろうけど。
中島 お互いに影響を受けてる部分もあるだろうしね。
たなか 確かに。ほかの人が作ったデモを繰り返し聴いているうちに、その人の言葉とか感覚が無意識に刷り込まれてる、というのはあるんじゃないかなと思います。
とにかくいい曲を作れれば
──5月には東京と大阪でワンマンライブが開催されます。以前はライブが苦手だったとのことですが、今はライブとの向き合い方も変わりましたか?
たなか 今は楽しいですね。お客さんとコミュニケーションを取ったり、人前で演奏したりするのはめちゃくちゃ好きです。
──東京公演の渋谷CLUB QUATTROはキャリア最大規模の会場なので、また違った楽しさがありそうですよね。これからどんどん大きい会場でライブをしたいという意欲もありますか?
たなか そこまで強い意識はないけど、人がいっぱいいるのを見るのは楽しいし、そういう意味ではやりたいかも。大きいハコのほうが大きい音を出せるだろうし。
中島 ステージが広いと力いっぱいドラムを叩けるのでうれしいですね。
──ライブに限らず「この先こういうバンドになっていきたい」というビジョンはあるんでしょうか。
堀部 現実的なことを言うと「もう少し生活に余裕が出るくらいお金がもらえると」というのはあるんですけど(笑)、「そのためにこういうステージに立って、こういうタイアップを獲って」みたいなことを考えるより、その場その場でとにかくいい曲を作れればと思ってます。
中島 僕は人に喜んでもらうのが好きなので、お客さんから反応をもらえるのがすごくうれしいんですよね。だから、その数を増やすためにも、バンドをどんどん大きくしていきたいとは思います。ただ、その過程でみんなが思う“グソクムズっぽさ”は失わないようにしたくて。グソクムズらしさを保ちつつ、規模を大きくしていけたらいいなと。
たなか 僕もいろんな人をいっぱい喜ばせたいですね。そこらへんの学生の5人に1人が知ってるぐらいの知名度になれたらうれしい。音楽を好きな人からも、そうじゃない人からも評価されるような存在でありたいです。
加藤 僕は長く続けられればそれでいいです。病気をせず健康で仲よくやれればそれで十分。
──今日インタビューさせていただいて、4人の良好な関係や空気のよさを感じたんですけど、ケンカすることもあるんですか?
たなか そんなにないですよ。ぴりつくときはありますけど。
中島 ケンカって感じではないよね。あ、でも「グッドモーニング」から「コネクション」に切り替わるタイミングをどこにするかで加藤とたなかが揉めてたか。
たなか マスタリングの最後の最後で揉めたやつね。
中島 俺は「早く終わらないかな」と思ってただけだけど(笑)。
加藤 まああのあともみんなで仲よくごはんを食べたからね。
たなか そうだね。揉めることもあるけど、基本的には4人とも仲良しです(笑)。