「火星のコード進行でお願いします」って言われても……

──トオルさんはセイジさんとは長年の付き合いですけど、セイジさんがタイトルを出してきたら、すぐにそのイメージはつかめるものなんですか？

トオル　うーん……どうなんでしょうねえ。まあ自分なりにつかんで叩いてるつもりでも、雰囲気が違うと「それは違うよ」って言われることも多いですよ。

──でも最初の頃に比べれば……。

トオル　いやああんまり。だって「火星のコード進行でお願いします」と言われてもねえ（笑）。

──今回のアルバムだと「幽霊のコード進行ってなんだよ！」っていう（笑）。

トオル　そうそう。だから自分の感覚とはちょっとずれてるときもあるんですけどね。

──U.Gさんはどうですか？

U.G　オレはだいぶわかるようになってきました（笑）。

──おお！

U.G　音というか気持ちですよね。だから曲によって違うんですけど、よくわかんないこと言われても、たぶんセイジさんはこういうことを言いたいんだなというのがわかってきた。

セイジ　くっくっくっ（笑）。

U.G　間違って捉えることもありますけど、たぶんこんな感じだなっていうのはわかってきました。

──タイトルに込められたイメージと、メンバーが出す音を一致させる作業がポイントですね。

セイジ　そうです。特にドラムは土台になるものなので、ドラムのイメージを決めるのに時間がかかるときはありますね。

トオル　「ガソリン子守歌」では、ゆらゆらした感じのリズムを出したかったんですけど、ちょっと難しかったですね。最終的にはうまくいきましたけど。

セイジ　あれはけっこうこれまで作ってきた曲とは違ってたかもしれない。

ロマンチックですね、オレは

──「サファイヤCITY」はギターウルフ史上初めてマイナーコードを使った曲だそうですね。

セイジ　そうです。ようやくオレがマイナーコードを覚えた（笑）。今まで使う気にはならなかったんですよね。だってギターのフレットの指をずらさなきゃいけないから（笑）。

──マイナーコードの曲が好きじゃない、ということではなく？

セイジ　まあ使い方がわからなかったんでしょう。でも去年の夏、（西城）秀樹の「傷だらけのローラ」をオノチン（JET BOYS）と2人でカバーしたことがあって。あれって同じコードでマイナーとメジャーを使い分けてるんですよ。おもしれーなと思って。それがきっかけで、この曲もマイナーコードになりましたね。頭から使ってみようと思ったんじゃなくて、感覚としてフッと使ってみたら合っていた。まあそもそも曲の舞台が山陰ってこともありますけどね。

──つまりセイジさんの出身地の島根県松江市ですね。山陰はマイナーコードのイメージなんですか？

セイジ　残念ながらそうですね（笑）。

──私の母方の実家が島根県浜田市なのでときどき行くんですけど、なんとなくわかります（笑）。その街が「サファイヤCITY」というのは？

セイジ　松江にある宍道湖という湖は、地元の人間ならもちろん誰でも知ってるんですけど、山の陰にあるから、日本中の誰も知らない秘密の湖なんですよ。中学高校から続くオレの思い出が宍道湖と結び付いていて、そういう気持ちが曲になってる。宍道湖を見ながら、気持ちだけが焦ってうなりをあげているという。国道9号線をバイクで走るんですけど、そこから見た松江の街ってものすごくきれいで。そういう気持ちを例えることができないかと思って言葉を探していたら、「サファイヤCITY」という言葉が浮かんで。サファイヤ色に例えることができました。

──なるほど。

トオル　さっきの曲のイメージの捉え方の続きなんですけど、この曲って途中からギターの爆音がドバーンとものすごいじゃないですか。あれって3本ぐらいギター重ねてるんだったっけ？

セイジ　2本だね。

トオル　それがステレオになってドーンときてる。でも実はもう1個のテイクがあって、それはど真ん中から爆音がくるんですよ。聴いた感じ、そっちのほうがいいと思ったんです。真ん中から黒い塊みたいなものがガーッと来る感じがセイジさんらしくていいなと自分は思ったんですけど、それは違うと。バイクの免許取ったばかりの高校生だったセイジさんは、もっときれいな、宍道湖に映ったキラキラした光景（みたいなもの）だからって。黒い塊がドーンとくるのは、東京に来て以降のオレのイメージだろうと。

──なるほど。ブログでもそうですけど、過去のことを語るときのセイジさんの口調って、すごくロマンチックなところがありますね。

セイジ　……そうですね、ロマンチックですね、オレは。あははは（笑）。

──過去の思い出はすごくきれいなものとして存在している。

セイジ　そうですね、もちろん。

──昔のことを思い出すことは最近多くなりました？

セイジ　そうですね、ブログを書くようになってから。

──例えば、今日何をしたとか、昨日のライブはどうだったとか、そういうことを書いてもいいわけですよね。

セイジ　オレは自分の日記みたいなものを人に見せることはないですね。そういう趣味はない。普通の日記みたいなものじゃなく、もしひとつの書き物として成立してるんだったら、出そうかと思って。ドラマがそこに出せれば、と思って書いてますね。なかなかうまく出せないんだけど。

──歌詞でご自分のことを歌うにしても、直接的に言葉に表すんじゃなく、ワンクッションおいて、物語という形で作品にするということですね。

セイジ　うん、そうですね。

──今回はそれが成功していますね。エンタテインメントとして成立している。

セイジ　ああ、そうですか。よかったです！