ナタリー PowerPush - ギターウルフ
日本人よ野獣のように震えろ!
ギターウルフ史上最強のアルバムと言って過言ではないだろう。2年4カ月ぶりの新作は、その名も「野獣バイブレーター」! タイトルが示す通りビリビリと震えるようなロックンロールのエクスタシーが詰まりまくった奇跡のようなアルバムだ。なんたって今回は曲タイトルと歌詞がすごい。常々「いいタイトルが浮かんでくれば勝ったも同然」と豪語するセイジだが、「メソポタミアロンリー」「幽霊ユー」「バッティングセンター」「マグマ信長」「ゲロナイト」と、およそロックの曲タイトルとは思えないぶっ飛んだ言語感覚はすさまじい。そのうえ歌詞はそれに輪をかけて、宇宙の果てまでぶっ飛びそうなイマジネーションと奇想天外な物語が展開されており、無闇やたらとインパクト抜群の言葉があふれかえっている。
曲調としてはダンスっぽいリズムの曲があり、初のマイナーコードナンバーがあり、挙げ句の果てはほら貝やシンセまで鳴っている。ウルフにしては新機軸だ。だがそこにはウルフ流ロックンロールスピリットが髪の先から爪の先まで染み渡っているのである。凶悪な爆音なのに聴きやすく、意外にポップなメロディが際立つ録音も素晴らしい。絶好調のセイジ(Vo, G)、トオル(Dr)、U.G(B)に聞いた。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 福本和洋(ライブ写真を除く)
俺たちも野獣のようにブルブル震えろ!
──すごいアルバムが完成しましたね。
セイジ ありがとうございます!
──手応えはいかがですか?
セイジ ばっちりです!
トオル もう、最高傑作ですね!
U.G ばっちりですね!
──期待通りのお答えありがとうございます(笑)。前作から2年4カ月が経っているので、ちょっと間が開いた感じがありますが。
セイジ うーん、今回はひさしぶりに長期ツアーがいっぱい入ったからね。ヨーロッパが2回、アメリカ、オーストラリア、日本……。
──その前にセイジさんのオーバーホールでの活動休止がありましたから、その反動でいきなりトップスピードに入った感じですね。
セイジ そうですね。いきなり絶好調でしたよ。俺たちのアクションもより一層激しくなって。
──そんな中、アルバムの構想も練られていたと思うんですが。
セイジ 始まりはタイトル曲でオープニングの「野獣バイブレーター」ですね。それが今回のテーマというか、言いたいこと。これは去年の3月とか4月とかに作ったのかな。ツアーでイタリアに行ってるときに。いきなりバーン!と来たんですよね。
──閃いた。
セイジ いきなり。なんかね、イタリアの人って夕焼けの時間に、日が落ちるのを楽しそうに見てるんですよね。目とかキラキラして。誰もうつむいてないし、ケータイもいじってないし。その風景がすごい印象的で、今の日本にはない感じ。それを見たからってわけでもないけど、バーンと閃いたんですよ。俺たちも野獣のようにブルブル震えろ!って。
──夕焼けを見ているイタリア人を見てたら、「野獣バイブレーター」ってタイトルがいきなり頭に浮かんだってことですか?
セイジ そうそう。その2つにどういう関連があるのかわからないけど、「日本の奴らも、もっと野獣のようにブルブルなろうぜ!」って。
──チマチマしてないで野獣のように震えろと。
セイジ そう。パーン!と浮かんだんですよ。
聴き手に音を消されるぐらいの覚悟
──いつもタイトルが真っ先に浮かんできて、いいタイトルさえ思い付けば勝ったも同然、と昔からおっしゃってますよね。
セイジ うん。そうそう。
──そこから曲にどうやって仕上げていくんですか。例えばこの「野獣バイブレーター」の場合は?
セイジ これは勢い一発でできましたね。タイトルが浮かんで、すぐに勢いで曲を完成させて、その瞬間にアルバムのイメージが浮かんできた。
──これが一番古い曲なんですか?
セイジ いや一番古いのは「幽霊ユー」ですね。
──ライブでずっとやってきた曲ですね。
セイジ そうですね。「幽霊ユー」「メソポタミアロンリー」「ガソリン子守歌」あたりはライブでやってますね。
──でも「野獣バイブレーター」が今作の核であり、同時にギターウルフというバンドを象徴する曲である、と。
セイジ そうです!
──トオルさんは「野獣バイブレーター」をセイジさんから聴かされたとき、どんな印象を持たれました?
トオル その前にできた「幽霊ユー」も「ガソリン子守歌」も好きなんですけど、自分はこういう激しいカオスな曲が好きなもんで。よっしゃキターッ!って。カッチョイーと(笑)。
──これがギターウルフだと。
トオル そうそう。そんな感じですねえ。
──U.Gさんはどうです?
U.G トオルさんの言うように、激しい、気合いだけでできるような曲だなと思いましたね。演奏するときはそういう、勢いだけでガーッと考えずにできるような曲がいい。
セイジ 録音したときもミックスしたときも、とにかく流れた瞬間、聴き手に音を消されるぐらいの覚悟でいこうと(笑)。
──うるせえー!って?
セイジ むしろ消してくれ!ぐらいの勢いで(笑)。
──でも激しい音ではあるけど、意外と聴きやすい音になってますよね。耳障りじゃなく、むしろ気持ちがいい。
セイジ それは中村宗一郎さん(※本作のエンジニア)のマジックじゃないですか。
──こっちがギターウルフの爆音に慣れたせいもあるかもしれませんけど(笑)。
トオル きっとそれですよ(笑)。
──歌詞もめちゃくちゃ簡潔で、本当に必要なことだけ言っている感じ。
セイジ うん。歌詞はもっともっと簡潔にしたいですね。簡潔にしてるつもりだけど、もうちょっとね。
- ニューアルバム「野獣バイブレーター」 / 2013年3月6日発売 / 3000円 / Ki/oon Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3000円 / KSCL-2203~4
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3000円 / KSCL-2203~4
- 通常盤 [CD] / 2700円 / KSCL-2205
CD収録曲
- 野獣バイブレーター
- メソポタミアロンリー
- ガソリン子守歌
- 幽霊ユー
- ロボットマリア
- バッティングセンター
- サファイヤCITY
- マグマ信長
- ゲロナイト
- 地球 VS エイリアン
- 女マシンガン
初回限定盤DVD収録内容
GUITAR WOLF LIVE BOOTLEG ARCHIVE 2012
- 野獣バイブレーター
- オールナイトでぶっ飛ばせ!!
- ケンカロック
- ガソリン子守歌
- ワイルド ゼロ
- 火星ツイスト
MUSIC CLIP
- ジェット サティスファクション
- フーチークーチースペースマン
ギターウルフ
1987年結成のスリーピースロックバンド。革ジャン、革パン、サングラスがトレードマークで、3コードを基本としたシンプルなロックンロールを鳴らす。ヨーロッパやアメリカでの評価が非常に高く、早くから海外でのライブ活動を行っていた。2005年にベースのビリーが心不全により急逝。同年9月に楽器未経験者のU.G(B)がメンバーとして加入した。2007年にはセイジ(Vo, G)の股関節損傷を理由にライブ活動を一時休止。2010年からライブ活動を再び本格化させた。2013年3月には前作「宇宙戦艦ラブ」から約2年4カ月ぶりとなるニューアルバム「野獣バイブレーター」をリリース。