ナタリー PowerPush - ギターウルフ
セイジ改造手術ついに完了! 新作を携え宇宙戦艦が地球に帰還
ギターの後ろに「イチロー」ってペンで書いておいたんだ
──そしてアルバムのラストを飾るのは「ハカタ大作戦」。どうして博多なんですか?
セイジ 博多はね……、俺のこと好きなお姉ちゃんがいっぱいいるんだよね(笑)。
トオル わはははは(笑)。いましたね~、ストーカーみたいなの(笑)。
セイジ 俺、長崎生まれだし博多には親戚がいっぱいいるんだよ。だからちっちゃい頃から博多の街には思い出がある。
──なるほど。
セイジ 去年の日本ツアーでさ、博多のライブハウスのチケットが全然売れなかったんだよ。それを聞きつけた博多のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちが、一生懸命チラシを作って配ってくれてさ。そしたら客がそこそこ来てくれて。その感激もあったからな。だから今回のツアーは博多に最も力入れるよ(笑)。
──ギターウルフはこれまでも“ご当地ソング”をいろいろ作ってますよね。どの街にもそういったエピソードがあるんですか?
セイジ もちろん。思い入れがないとできないからね。
──例えば「島根スリム」は? あれ、すごいタイトルですよね。
セイジ 島根出身だから。曲名はまぁ、ブルースマンにメンフィス・スリムっているじゃない。あの地名の部分を入れ替えた「なんとかスリム」って言葉を考えてて。
──あー、そうことだったんですね! ではU.Gさんが歌う「池袋タイガー」は?
セイジ 昔さ、池袋の近辺に住んで、あの辺でしょっちゅう遊んでたんだよ。東京に出てきたばかりだったから、まさしくあの曲みたいな気分だったね。その感じが、加入してすぐのU.Gの雰囲気にマッチしたっていう。
──「ギオンミッドナイト」は京都の祇園ですよね?
セイジ そう。祇園の舞妓に恋した……ってわけじゃないんだけど(笑)、アレは祇園に住んでるお姉ちゃんがベースラインを作ってくれたんだよ。
──えーっ!
セイジ 島根の田舎で遊びのバンドやってるんだけど、そこのベースプレイヤーが京都の子でね。もともと京都っていう街自体も好きだし「ギオンミッドナイト」って名付けたんだ。最近はこの曲、ほとんど京都でしかやんないんだけど、そのときのボルテージがめちゃくちゃ高くて。
──わかる気がします。「長崎ジェット」を長崎でやるとか。
セイジ そうだね。異常な興奮状態になるんだよ。
トオル シアトルでライブするときはイチローのマネしたりね。
セイジ そう! シアトルでアンコールがあったら、必ずギターをバットみたいに構えることにしてんだよ(笑)。
──あー、それはウケるでしょうね(笑)。
セイジ せっかくシアトルに行ったんだから何がなんでもやらなきゃいけないんだよ。なのに昔、ライブ終わったら日本人の兄ちゃんがなんかアホみたいに俺のこと写真撮っててさ。そいつに「バカヤロウ!」って怒ったの。腹が立ったまんまアンコール出たらさ、俺、イチローのマネすること忘れてたの。ものすごいショックだったよ……。
──あははは!(笑)
セイジ だから次のアメリカツアーのときには、絶対忘れちゃいけないと思って、ギターの後ろに「イチロー」ってペンで書いておいたんだ。
トオル わははは! 書いてた書いてた(笑)。
セイジ アメリカでライブやるときはゲストリストにとりあえずいろいろ名前を書いとくんだけどさ。例えばハリウッドだったら「メグ・ライアン」とか。で、シアトルではもちろん「イチロー」って書くんだよ。ローマ字で。そしたら対バンの外人が「イチロー・スズキ!?」ってえらいビックリしてて。笑ったよ(笑)。
──日本人がそれやったらそりゃ本気にしますよ(笑)。例えば歌ってみたいとか、曲のテーマにしてみたい街ってありますか?
セイジ ある。ニューヨークとか、メンフィスとか。特にメンフィスは、1stアルバムを作ってた頃から考えてるけどまだ出てこない。
──ああ、それだけ自分の中でハードルが高くなってるんですね。
セイジ いや、何かタイミングがあれば来るんだよ。宇宙からの指令が。「宇宙戦艦」と「ラブ」がくっついたように、「UFO」と「ロマンティック」がくっついたように。
──曲名はいつも、何か2つの単語をくっつけて考えるんですか?
セイジ うん、そうだね。「ジェットジェネレーション」ができたときはすごい大変だったよ。もともと「火星ジェネレーション」って曲名を考えてたんだけど、イマイチだなって(笑)。ずーっと考えてたら、ある瞬間に「ジェット」と「ジェネレーション」がくっついたのよ。
──でも結果として、それが代表曲のひとつになりましたね。
セイジ いや結果としてというか、その2つがくっついた時点でもう「勝った!」って思った。
思い出せないことがあったら、親に電話して聞く
セイジ このインタビューってインターネットに載るんだろ? それでどうやって稼げるの? 例えば雑誌だったらさ、それを本屋で買う奴がいるから金がもらえるってのはわかるけど……。
──まあ広告収入とかいろいろありますが、正直あまり稼げてはいないですよ(笑)。そういえばセイジさんもネットでブログやってますよね。あれを読んですごく文才がある人だなと思いました。ちょっと前の「ニトロビール」ってエントリーとか、ビールをすごく美味しそうに表現してて(笑)。
トオル あーあー、あのビールは美味そうだった(笑)。
セイジ そのときに考えてることを、なるべくひとつひとつ形にしようと思ってて。だから自分の覚えてることをできるだけ正確に、嘘がないように書こうと思ってるし、わかんないところは書かないようにしてる。もしどうしても思い出せなかったら親に電話して「あのときどうだったんだっけ?」って聞くし。
──えっ!? 親に!? ブログ更新のためにそこまでするんですか!
セイジ もちろん! あそこに書かれてることが嘘だったら意味がないし、それ面白くないんじゃない?
──例えばあれをまとめて書籍化するとか、そういったことに興味はないですか?
トオル それ欲しいな(笑)。
セイジ うーん、でも自分の記憶を自分の中にとっておきたいだけだからな。スタッフから「日記書け!」って責められることによって、今まで全然忘れてた昔のことを「ああ! そうだ!」って思い出しながら書いてくんだよ。だから大変だけど、アレを1個書くと記憶が形になるから、すごくうれしいんだよね。……更新が1カ月にいっぺんくらいならいいんだけどな(笑)。
CD収録曲
- フーチークーチースペースマン
- ドーベルマンナイト
- 宇宙戦艦ラブ
- ファイヤーエイティーン
- ボルテージセパハン
- ナミダバイオレンス
- コンクリートパンク
- ブラックホールママ
- ドラキュラ メリカ
- ハカタ大作戦
初回盤DVD収録内容
- 狼惑星
- ジェット サティスファクション
- ミサイルミー
- エジプトロック
- デビルクチビル
- UFOロマンティクス
- 惑星ハート
ギターウルフ
1987年結成の3ピースロックバンド。革ジャン、革パン、サングラスがトレードマークで、3コードを基本としたシンプルなロックンロールを鳴らす。ヨーロッパやアメリカでの評価が非常に高く、早くから海外でのライブ活動を行っていた。2005年にベースのビリーが心不全により急逝。同年9月に楽器未経験者のU.Gがメンバーとして加入した。