ナタリー PowerPush - グループ魂

「脇役の卒業ソング」を機に新曲続々リリース宣言

「思い出作っとくか」で歌わされた

──“いい感じの曲”をグループ魂の曲にしていくにあたり、まず考えたのはどんなことでした?

暴動 フロントの3人ですね。小園の作ったカッコいい曲を、どういうふうにグループ魂に落とせばいいのか、この曲をやるときフロントの3人がどうすればいいのか、最初はまったく想像できなかった。

──フロントの3人とは、破壊さん(Vo / 阿部サダヲ)、バイト君(大道具 / 村杉蝉之介)、港カヲルさんですね。想像できなかったのはライブ中の3人ってことですか?

暴動 ライブ中もそうだし、リハ中もそう。もう……ポカーンだろうなあ、と。難しいですよね、こっち(=遅刻、小園)の人たちから、あっち(=破壊、バイト君、港カヲル)の人たちへ、渡していくっていうのが。しかも遅刻や小園はコントとかは興味ないじゃない?

石鹸 ないねー(笑)。

暴動 まるでグループ魂の中にバンドが2つあるみたいな(笑)。音楽だけやっていきたいチーム、本当は音楽なんかやりたくないかもしれないチーム(笑)。その橋渡しをどうしようかなあっていうのを考えますね、今回に限らず。

──間奏にセリフを詰め込んだのは、フロント3人に寄せた手法?

暴動 そうですね。でも、あれ思いついたの、レコーディング当日ですから。この人たち(と港を見る)来ちゃったから(笑)。

写真左から石鹸(Dr / 三宅弘城)、港カヲル(46歳 / 皆川猿時)、暴動(G / 宮藤官九郎)。

──レコーディングに? 3人が?

暴動 そうです。それで、カヲルさんとバイト君にコーラスやらせたんですけど、もう録音しているそばから「これ絶対に使わないぞ」ってわかるクオリティで。

 ひどかったあ、あれはひどかった。

暴動 自分でもわかったでしょ?

 うん。ひどかった……。

暴動 だって喉がブルブルいってんだもん!

 そう。もうバイト君とか、無線が混線してるみたいな音出して。ピーピーピー!

暴動 音程がどうとかより、ピーピーピーピーいってて。「何、この音」みたいな。ほんとびっくりしたよ。録ってる段階で「ああ、これ絶対使わないわ」って思ったんだけど、せっかく来てもらって、ねえ?

 なんかこの人、失礼なんですよね、ホントに。最初っからコーラスは使えないってわかってるんですよ。でも歌わせて。「思い出作っとくか」だって(笑)。

石鹸 でもバイト君が入ると“グループ魂感”が増すんだよね。

暴動 そう、さすがグループ魂の人だなって思うよね。

石鹸 ふはははは(笑)。リーダーでしょ?

暴動 破壊が歌っても、あまりグループ魂だって思わないんだけど、そこにバイト君の声が加わったときに「ああ、グループ魂だ」って思う。せっかくレコーディングに来てもらったのになあと思って、急遽「じゃあここにセリフ入れようか」って、その場で入れてもらったんですね。

決められたレールの上を歩いている人のほうがかわいそう

──歌詞で卒業をテーマにしたのは初めてですか? 歌詞だけに限らず、脚本とかでもあまりないのでは?

暴動 そうですね、学園ものをあまりやってないですから。だから卒業ネタもそんなにやった覚えがないですね。なんか学校をテーマにした歌がいろいろありますけど、だいたいがその物語の主人公の歌じゃないですか。脇役の歌ってないなと思って。例えば、窓ガラスを壊して回るのはどう考えても主人公。でも、脇役がいっぱいいるわけで。卒業における脇役。思い出がない、そういう歌だったら書けるんじゃないかなと思って、それで通信制って設定にしたんですよね。通信制の人は、同級生の顔も知らないって話をたまたま聞いて、そういう人も卒業式があって、卒業するんだよなあって。世の中にそういう人がどれくらいいるかはともかく、書いてみた。あとはやっぱり……尾崎豊の「卒業」から、卒業しなきゃいけないっていうので、タイトルを。

──誰が卒業するんですか?

暴動 みんなが(笑)。日本人が。

写真左から石鹸(Dr / 三宅弘城)、港カヲル(46歳 / 皆川猿時)。

──ああ、すごく大きな意味で。

 そんなでっかい話だったの?(笑)

暴動 いつまでも「卒業」気分じゃないだろ、と。夜の校舎窓ガラス壊して回る人はほんの一部で、みんな本当はなんとなく卒業していくわけじゃないですか。そういう歌になりましたね。

石鹸 悲しい歌じゃないですか? 悲しいでしょ。

──最初の歌詞から悲しいと思いました。石鹸さんは歌詞の中で、どこで一番泣きそうになります?

石鹸 「夜の校舎 忍び込んで バカ騒ぎ バカ笑い 俺ひとり」が、もう……かわいそうで。あと「とりあえず風俗」っていうのも。

暴動 自分にご褒美だから(笑)。節目には「とりあえず風俗」。

石鹸 この、俗っぽいところもいいですよね。

暴動 なんかこう……決められたレールの上を走ることができなかった音楽がロックだったのはもう昔のことで。今は決められたレールの上を歩いている人のほうが、かわいそうだと思うところも多いというか。はみ出せない悲しみのほうが主流だし、ロックだと思っていて。はみ出すことのほうが意外と簡単なんじゃないかなって思うと「ああ、3年間1回もはみ出さなかった」ってことのほうがドラマなんだって思ったんですよね。

配信限定シングル「「卒業」からの卒業」 / 2013年2月20日発売 / 250円 / Ki/oon Music
配信限定シングル「「卒業」からの卒業」
収録曲
  1. 「卒業」からの卒業

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新曲ができました!グループ魂の、今月はワンマン3回でカンベンしてくださいツアー
  • 2013年5月7日(火)東京都 Zepp Tokyo
  • 2013年5月22日(水)大阪府 Zepp Namba
  • 2013年5月30日(木)宮城県 電力ホール

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グループ魂(ぐるーぷたましい)

グループ魂

1995年に破壊(Vo / 阿部サダヲ)、暴動(G / 宮藤官九郎)、バイト君(大道具 / 村杉蝉之介)の3人で結成。その後、小園(B / 小園竜一)、港カヲル(46歳 / 皆川猿時)、石鹸(Dr / 三宅弘城)、遅刻(G / 富澤タク)が加入して現在のメンバー編成となった7人組パンクコントバンド。パワフルで直球なロックサウンドと過剰までの笑いにこだわったコントを多数織り込んだスタイルで、絶大な支持を集めている。結成当初はコント中心のステージだったが、オリジナル楽曲を徐々に増やしロックシーンにもその名をアピールした。2002年12月にアルバム「Run魂Run」でメジャーデビューを果たし、2005年10月にはシングル「君にジュースを買ってあげる♥」が大ヒット。同年12月にはこの曲でNHK「紅白歌合戦」へ出場した。2011年には結成15周年を記念した全国ツアーを行い、ツアーファイナルとして初の日本武道館ワンマンライブを敢行。2013年2月に配信限定シングル「「卒業」からの卒業」をリリースした。